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私が見たアメリカのホテル

アメリカの一流ホテルで日本人マネージャーとして10年間勤務した著者が、日々の仕事の中でふと目にしたシーンから、日米の文化的な違い、考え方の背景にあるものなどをつづります。 著者紹介はこちら>>

第162回

パーソナルタッチのサービスは衰えず

ホテルイメージ

チップの%は上がり続けている。近頃、ニューヨークにあるレストランでは、支払い時に渡されるチェック(勘定書き)にサジェスティッドアマウントとして、18%、21%、25%と、三段階で額が表示されているのが普通になった。15%が標準と言われたのは、とうの昔のことになってしまった。

チップドワーカー(チップを主な収入源とする労働者)が、チップの額を増やしたいという勢いには歯止めがかからない。正しい論理に沿って動く職場であれば、その分、サービス向上に努めなければならないと考える。それは、サービスマンが行うパーソナルタッチのサービスを強化することにつながる。たとえば、カップに入っているコーヒーが減っていれば、ゲストから「リフィールをお願い」と言われる前に、コーヒーをつぎ足す。食事をサーブしてから、「なにか問題はございませんか?」と聞きに戻るのを、10分も経過してからではなく、3分後と10分後に2回行う。より多くの優良顧客のチェックインを個室で行い、部屋までエスコートを行う。気の利いたサービスを実践すれば、当然、スタッフがゲストに接する機会は多くなる。「コロナ禍を経験し、これからは非接触のサービスが求められるようになる」などと言われているのは、アメリカでは無に等しいことになる。ゲストに接しなくては、チップを増やすことができない世界では、非接触のサービスなど邪魔以外なにものでもないからだ。

アメリカの公立小学校では、「〇〇のワクチン接種を行っていない生徒は入校できない」というワクチン接種の義務が定められている。同様に、コロナの感染対応もワクチンに依存していく以上、以前と全く同じ日常をとり戻す動きが始まる。既に「2回目のワクチン接種を終えて2週間が経過した人は、どのタイプのコロナにも90%以上の抗体効果を持つ」などという数字が公表され、ワクチンによる保護が完了した人々には、マスク着用とソーシャルディスタンシングを取らなければならないという義務が免除された。

コロナ収束後、人々がアメリカの高級ホテルで目にするものは、非接触を配慮したサービスなどではなく、コロナ禍以前と同様のパーソナルタッチのサービス。最初のうちは、CDC(アメリカ疾病対策センター)が用意した「ワクチン接種済カード」を服の見えるところに張ったり、「全てのスタッフはワクチン接種済」などと書かれたプラカードを立てたりするかもしれない。だが、すぐにそれもなくなり、「あの騒動はどこに行ってしまったのだろう」とさえ思うあり様を見ることになるだろう。

2021.5.19公開

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奥谷啓介氏

著者:奥谷 啓介

1960年東京都生まれ。ウエステインスタンフォード&プラザシンガポール、ハイアットリージェンシーサイパン等勤務の後、1994年よりニューヨークのプラザホテルに就職。2005年プラザホテルの閉館に伴い退職。現在はニューヨークにてホテルコンサルタントを、また2023年6月からは長年の夢であった小説家としてデビュー。ホテルマンの経験を活かし多方面で活躍中。

・奥谷 啓介オフィシャルサイト

<著者紹介>

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