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私が見たアメリカのホテル

アメリカの一流ホテルで日本人マネージャーとして10年間勤務した著者が、日々の仕事の中でふと目にしたシーンから、日米の文化的な違い、考え方の背景にあるものなどをつづります。 著者紹介はこちら>>

第118回

マーケティングオリエンテッドサービス

ホテルイメージ

アメリカのレストランで食事をしていると、食べている最中に、「問題ございませんか?」と、必ず担当ウエイター(ウエイトレス)が聞きに来る。食べ始めて5分で聞いてくれれば、「楽しんでいます」とか、「マスタードが欲しいのでもってきていただけますか?」などと、必要なものを依頼することができる。だが、20分も経て来られたら、「いまさら聞きにきても遅い!もう半分以上食べ終わっているよ」と言いたくなる。どんなに施設が素晴らしかろうとも、「このホテルのサービスは悪い」という評価が下されてしまうことになる。

ウエイター&ウエイトレスが忙しいのは分かる。忙しくしているときは、時間を忘れるものだ。食べている人にとっての20分が、彼らにしたら5分に感じられるかもしれない。だから、タイミングが命のサービスに関しては、決まりやシステムをつくることで確実に実行されるものにする必要がある。この場合の決まりは、“料理を出したときに時計を見ること。そして、5分したらテーブルに戻り、満足のいく状態になっていることを確認すること”となる。

こうしたサービスは一般的なスタッフ教育では生まれない。ウエイターは自主的に物事を決めてサービス改善にあたるほどの責任感を持ってはいないからだ。上の立場にいる者が、どのようにしたらそれを実行できるかを考え、具体的なシステムをつくらなければならない。現在のネット社会では、人々の評価が最もビジネスに影響を与えるから、優れたサービスを提供することこそ最も大切な営業活動となる。

細かな情報が人々に届かない一昔前、ホテルを選ぶときに、人々は旅行の専門家(トラベルエージェント)の意見に耳を傾けた。だから、ホテルの営業は旅行の専門家との間に強い絆を作ることに傾けられた。だが、ネットの情報を元に個人がホテルを選ぶ時代となった今、営業はネットを利用したものへと力が注がれる。高い評価を得るサービスを抜きに販促は考えられない。

マーケティング部から昇進した優れたGMは、人が何度も体験したいと望むサービスに力を入れてリピーターを増やす。同時に、ネットで話題となるサービスを導入し、新しい顧客を集める。そこでのサービスは集客を第一目的とした”マーケティングオリエンテッドサービス”となる。マーケティングのトップはサービスを変える立場にはいない。サービスのトップはマーケティングに疎い。マーケティングを熟知した人物をGMに置く大きな利点がここにある。

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私が見たアメリカのホテル バックナンバー
奥谷啓介氏

著者:奥谷 啓介

1960年東京都生まれ。ウエステインスタンフォード&プラザシンガポール、ハイアットリージェンシーサイパン等勤務の後、1994年よりニューヨークのプラザホテルに就職。2005年プラザホテルの閉館に伴い退職。現在はニューヨークにてホテルコンサルタントを、また2023年6月からは長年の夢であった小説家としてデビュー。ホテルマンの経験を活かし多方面で活躍中。

・奥谷 啓介オフィシャルサイト

<著者紹介>

・超一流の働き方

ビートルズ・ケネディ大統領・サウジの大富豪……全世界のVIPらに愛され、マネージャーとして超一流の世界で学んだ世界標準の「サービス」「心の持ち方」「自分の活かし方」「生き方」を公開!

超一流の働き方

・なぜ「お客様は神様です」では一流と呼ばれないのか

「アメリカのホテルで1万円儲かることが、日本のホテルでは3,780円しか儲からない」といわれるほど世界最低レベルの生産性。働けど働けど儲からないワーキングスタイルに苦しめられるのはもうやめよう。

なぜ「お客様は神様です」では一流と呼ばれないのか

・はえくんの冒険(原作:アントニオ猪木、著:ケニー奥谷、絵:八雲)

ブラジルの中央、マッドグロッソにある牧場に生まれた「はえくん」の物語。原作のアントニオ猪木氏が自身の体験をもとに長年あたためてきた企画が、奥谷氏の手により絵本になりました。大人が読んでも楽しめる愛と友情の物語です。

はえくんの冒険

・サービス発展途上国日本 - 「お客様は神様です」の勘違いが、日本を駄目にする

サービスを向上させるにはスタッフを幸せにすることが一番の近道。アメリカの超一流ホテルでの経験から綴る業界改革論。

サービス発展途上国日本 - 「お客様は神様です」の勘違いが、日本を駄目にする

・海外旅行が変わる ホテルの常識

「プラザ」元マネージャー直伝、一流ホテルで恥をかかない滞在術。この一冊があなたのアメリカ滞在を変える!レジャーはもちろん、ビジネスにも役立つ情報の集積。国際人の責任として、海外に行く前にその国の常識を学ぼう。

海外旅行が変わる ホテルの常識

・世界最高のホテル プラザでの10年間

アメリカのホテルはなぜこんなに不愉快なのか!?「日本人利用客」VS「アメリカ人従業員」。果てしないトラブルの非は、どちらにある?敏腕マネージャーがフロント・デスクの内側からみた「日米比較文化論」。

世界最高のホテル プラザでの10年間

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