アメリカン・エキスプレス
私が見たアメリカのホテル

アメリカの一流ホテルで日本人マネージャーとして10年間勤務した著者が、日々の仕事の中でふと目にしたシーンから、日米の文化的な違い、考え方の背景にあるものなどをつづります。 著者紹介はこちら>>

第140回

セレブご用達ホテル

ホテルイメージ

5スターホテルで最も大切なことはリピーターを育てること。これ以上、大切なことはないと言ってもいい。リピーターがホテルの半分を埋めていれば、あと半分を埋めるための営業でよく、経費も浮くし、仕事も楽になる。さらに、リピーターは直接予約を入れてくる人が多いので、利益も高くなる。

だが、日々、ホテルの数は増えていく。たまには、違うホテルに泊まってみたくなるのも人情。そして、泊まってみたら、新鮮だったり、居心地がよかったりと、次からそのホテルへに泊まりたくなってしまった。と、リピーターは徐々に減って行く。ホテル数が急増しているのだから、新しいゲストが来るよりも、失うリピーターの数のほうが多くなり、多くのホテルは難しい状態へと向かって行く。

だが、わずかに、“このホテル以外には考えられない”と固執するゲストで埋まるホテルが世の中にはある。ニューヨークを見るなら、最近建てられたものの代表は“グリニッジホテル”。泊まっている人しか入れないロビー空間。忍者屋敷のような空間に造られたプール。世界の逸品をまとった装飾で、全ての部屋が趣を異にする有様など、1度このホテルに泊まったら、“これより上のホテルがあるとは考えにくい”となる。だから、宿泊ゲストの8割がリピーターという驚異の数字を誇っている。

昔からあるホテルと言えば、アッパーイーストサイドの最高級住宅街の中に立つ、“カーライル”に勝るホテルは無いだろう。宿泊している人々は気品に満ちた人ばかり。どんなセレブが隣にいたとしても、声をあげたり、じろじろ見たりする人などいない。ここでは、秘密が守られ、人目を気にすることなくふるまえるから、圧倒的多数の著名人に利用されるようになってきた。ケネデイー大統領が、ホテルの中に部屋をもっていたことから、“第二の執務室”と呼ばれたことは有名。他にも、数えきれないほどのムービースターたちのエピソードが残っている。

昨年、それが映画化され、話題になった。それはそれはたくさんの著名人たちが、このホテルのことを語っている。来月から、日本でも「カーライル ニューヨークが恋したホテル」というタイトルで公開予定という。「ニューヨークのホテルの裏には、こんな話もあったのか!」と騒がれることになるかもしれない。

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私が見たアメリカのホテル バックナンバー
奥谷啓介氏

著者:奥谷 啓介

1960年東京都生まれ。ウエステインスタンフォード&プラザシンガポール、ハイアットリージェンシーサイパン等勤務の後、1994年よりニューヨークのプラザホテルに就職。2005年プラザホテルの閉館に伴い退職。現在はニューヨークにてホテルコンサルタントを、また2023年6月からは長年の夢であった小説家としてデビュー。ホテルマンの経験を活かし多方面で活躍中。

・奥谷 啓介オフィシャルサイト

<著者紹介>

・超一流の働き方

ビートルズ・ケネディ大統領・サウジの大富豪……全世界のVIPらに愛され、マネージャーとして超一流の世界で学んだ世界標準の「サービス」「心の持ち方」「自分の活かし方」「生き方」を公開!

超一流の働き方

・なぜ「お客様は神様です」では一流と呼ばれないのか

「アメリカのホテルで1万円儲かることが、日本のホテルでは3,780円しか儲からない」といわれるほど世界最低レベルの生産性。働けど働けど儲からないワーキングスタイルに苦しめられるのはもうやめよう。

なぜ「お客様は神様です」では一流と呼ばれないのか

・はえくんの冒険(原作:アントニオ猪木、著:ケニー奥谷、絵:八雲)

ブラジルの中央、マッドグロッソにある牧場に生まれた「はえくん」の物語。原作のアントニオ猪木氏が自身の体験をもとに長年あたためてきた企画が、奥谷氏の手により絵本になりました。大人が読んでも楽しめる愛と友情の物語です。

はえくんの冒険

・サービス発展途上国日本 - 「お客様は神様です」の勘違いが、日本を駄目にする

サービスを向上させるにはスタッフを幸せにすることが一番の近道。アメリカの超一流ホテルでの経験から綴る業界改革論。

サービス発展途上国日本 - 「お客様は神様です」の勘違いが、日本を駄目にする

・海外旅行が変わる ホテルの常識

「プラザ」元マネージャー直伝、一流ホテルで恥をかかない滞在術。この一冊があなたのアメリカ滞在を変える!レジャーはもちろん、ビジネスにも役立つ情報の集積。国際人の責任として、海外に行く前にその国の常識を学ぼう。

海外旅行が変わる ホテルの常識

・世界最高のホテル プラザでの10年間

アメリカのホテルはなぜこんなに不愉快なのか!?「日本人利用客」VS「アメリカ人従業員」。果てしないトラブルの非は、どちらにある?敏腕マネージャーがフロント・デスクの内側からみた「日米比較文化論」。

世界最高のホテル プラザでの10年間

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