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私が見たアメリカのホテル

アメリカの一流ホテルで日本人マネージャーとして10年間勤務した著者が、日々の仕事の中でふと目にしたシーンから、日米の文化的な違い、考え方の背景にあるものなどをつづります。 著者紹介はこちら>>

第115回

ネット社会が変えたホテルの営業スタイル

ホテルイメージ

先日、JFK空港の売店に行ったら、レジ脇に置かれている雑誌の数がとても少なくなっていた。
「前はもっとたくさん雑誌がありましたよね」
「近頃は、雑誌を買って飛行機に乗る人が減ったから売れないのよ」
雑誌を買うお金があれば、機内でWi-Fiを購入できる。スマートフォンがあれば、雑誌よりもたくさんの記事を読むことができるから、雑誌が売れなくなるのは当然のことだろう。これは空港の売店だけの現象ではなく、街のスーパーのレジ脇に置いてある雑誌も同じ傾向にあった。

いまさら言うことでもないが、世の中は“ネット社会”。人々はおおよその情報を容易に得ることができる。以前は、ホテルの情報が簡単に得られないから、情報をもっている旅行会社をエキスパートとして雇い予約を依頼した。だが、現在、ネットを使える多数の人は、自分で情報を集めてホテルを選ぶようになった。

パッケージ商品を作ったり、団体の手配を受けたりする場合を除いて、ホテルが旅行会社と共に仕事をする機会は激減した。旅行会社に営業をかけるホテルのセールスマンの数も減り、代わりにネットを使って一般の人々の心をつかむ営業に重点が置かれている。

ただ、ホテルの情報だけを提供しようとすれば、そのホテルを知ろうとする人にしか読まれない。ホテルの情報を知ろうとする人は、既に心が傾いている人。大切なのは、まだ白紙状態にある人々の心を掴み、“あの場所に旅行するときは、このホテルに泊まってみたい”と思わせること。そのために、どのホテルもガイドブックさながら、人々の関心を引く事柄を探しだしては紹介し、その中で自社のホテルの宣伝を書き添えている。

このスタイルの営業には技術が必要とされる。人々の関心を引く事項を探しだすこと。それを紹介する文章を書くこと。その中で、ホテルを売りこむこと。もちろん、その記事をどのような形態で出せば、最も多くの人に読んでもらえるかというマーケティングも必要になる。これらの技術を備えた人材はホテル業界内で見つけることは至難。そこで、トラベルライター、出版社、PR会社などを絡めて行う業務へと移行している。ホテルの営業活動も外注が多くなり、営業部は縮小される傾向へと向かうことになった。

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奥谷啓介氏

著者:奥谷 啓介

1960年東京都生まれ。ウエステインスタンフォード&プラザシンガポール、ハイアットリージェンシーサイパン等勤務の後、1994年よりニューヨークのプラザホテルに就職。2005年プラザホテルの閉館に伴い退職。現在はニューヨークにてホテルコンサルタントを、また2023年6月からは長年の夢であった小説家としてデビュー。ホテルマンの経験を活かし多方面で活躍中。

・奥谷 啓介オフィシャルサイト

<著者紹介>

・超一流の働き方

ビートルズ・ケネディ大統領・サウジの大富豪……全世界のVIPらに愛され、マネージャーとして超一流の世界で学んだ世界標準の「サービス」「心の持ち方」「自分の活かし方」「生き方」を公開!

超一流の働き方

・なぜ「お客様は神様です」では一流と呼ばれないのか

「アメリカのホテルで1万円儲かることが、日本のホテルでは3,780円しか儲からない」といわれるほど世界最低レベルの生産性。働けど働けど儲からないワーキングスタイルに苦しめられるのはもうやめよう。

なぜ「お客様は神様です」では一流と呼ばれないのか

・はえくんの冒険(原作:アントニオ猪木、著:ケニー奥谷、絵:八雲)

ブラジルの中央、マッドグロッソにある牧場に生まれた「はえくん」の物語。原作のアントニオ猪木氏が自身の体験をもとに長年あたためてきた企画が、奥谷氏の手により絵本になりました。大人が読んでも楽しめる愛と友情の物語です。

はえくんの冒険

・サービス発展途上国日本 - 「お客様は神様です」の勘違いが、日本を駄目にする

サービスを向上させるにはスタッフを幸せにすることが一番の近道。アメリカの超一流ホテルでの経験から綴る業界改革論。

サービス発展途上国日本 - 「お客様は神様です」の勘違いが、日本を駄目にする

・海外旅行が変わる ホテルの常識

「プラザ」元マネージャー直伝、一流ホテルで恥をかかない滞在術。この一冊があなたのアメリカ滞在を変える!レジャーはもちろん、ビジネスにも役立つ情報の集積。国際人の責任として、海外に行く前にその国の常識を学ぼう。

海外旅行が変わる ホテルの常識

・世界最高のホテル プラザでの10年間

アメリカのホテルはなぜこんなに不愉快なのか!?「日本人利用客」VS「アメリカ人従業員」。果てしないトラブルの非は、どちらにある?敏腕マネージャーがフロント・デスクの内側からみた「日米比較文化論」。

世界最高のホテル プラザでの10年間

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