アメリカン・エキスプレス
私が見たアメリカのホテル

アメリカの一流ホテルで日本人マネージャーとして10年間勤務した著者が、日々の仕事の中でふと目にしたシーンから、日米の文化的な違い、考え方の背景にあるものなどをつづります。 著者紹介はこちら>>

第46回

変動制料金

ホテルイメージ

Loews Miami Beach Hotel

ニューヨークのホテルで変動制の客室料金が導入されるようになったのは1997年ころのこと。それまでは、1年を5つくらいのシーズンに分けて、それぞれ違った料金をだしていた。変動制の料金が導入されるようになり、シーズン別の料金は消え、また、企業との契約料金であるコーポレートレートも消えて行った。

それから数年、日本からホテルマンが研修に来るたびに、私は、“なぜアメリカのホテルが変動制料金を導入するようになったのか”を話す依頼を受けるようになった。今では、日本のホテルのサイトを見ても、変動制の料金がでている。アメリカのホテルのそれとは多少違うところもあるが、日本のビジネススタイルに併せた工夫が見られる。

ニューヨークのオフシーズンとして、8月、1月、2月の3か月が挙げられる。「1月と2月は寒いから来たがらないのが分かるが、なぜ8月ですか?」とよく聞かれる。答えは、8月はバケーションシーズンで、ビジネスがあまり動かなくなるから。ニューヨークのような大都市はビジネスで来る人でホテルが8割程度埋まる。8月にいくら世界中からバケーション客が来ても、ビジネス客の代わりになるほどのボリュームは見込めない。

今年も8月の1週は、どのホテルもかなりすいていて、プラザは3泊したら最後の日は無料というスペシャルパッケージを出していた。ビジネスで来る人の平均滞在は2.3泊程度だが、バケーションで泊まる人は3泊以上する。最後の1泊をフリ―にすることで、バケーションに来るゲストを引き寄せることができる。さらにバケーションで来るのはファミリーが多いから、朝食の利益が普段よりも膨らむ。そんな計算のもとに出された料金だった。日本から来たゲストには、円高もあわさり、1泊3万円程度で泊まることが可能となった。ニューヨークの1等地にある50平米以上の部屋が、その程度で泊まれるのはとても得な滞在だったと言える。

また、細かく見れば、アメリカの連休を狙うと、同じようにホテル料金が落ちているときに泊まれる可能性が高くなる。連休はビジネス客が動かなくなるからだ。20年くらい前は、ウイークエンドレートと称して、金、土の料金が半額になっていることも多かった。それと同じことが、変動制料金をとおして行われているのだ。今年後半の狙い目は、9月3,4,5の連休、10月8,9,10の連休、そして、12月24,25,26の連休の3回となる。

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私が見たアメリカのホテル バックナンバー
奥谷啓介氏

著者:奥谷 啓介

1960年東京都生まれ。ウエステインスタンフォード&プラザシンガポール、ハイアットリージェンシーサイパン等勤務の後、1994年よりニューヨークのプラザホテルに就職。2005年プラザホテルの閉館に伴い退職。現在はニューヨークにてホテルコンサルタントを、また2023年6月からは長年の夢であった小説家としてデビュー。ホテルマンの経験を活かし多方面で活躍中。

・奥谷 啓介オフィシャルサイト

<著者紹介>

・超一流の働き方

ビートルズ・ケネディ大統領・サウジの大富豪……全世界のVIPらに愛され、マネージャーとして超一流の世界で学んだ世界標準の「サービス」「心の持ち方」「自分の活かし方」「生き方」を公開!

超一流の働き方

・なぜ「お客様は神様です」では一流と呼ばれないのか

「アメリカのホテルで1万円儲かることが、日本のホテルでは3,780円しか儲からない」といわれるほど世界最低レベルの生産性。働けど働けど儲からないワーキングスタイルに苦しめられるのはもうやめよう。

なぜ「お客様は神様です」では一流と呼ばれないのか

・はえくんの冒険(原作:アントニオ猪木、著:ケニー奥谷、絵:八雲)

ブラジルの中央、マッドグロッソにある牧場に生まれた「はえくん」の物語。原作のアントニオ猪木氏が自身の体験をもとに長年あたためてきた企画が、奥谷氏の手により絵本になりました。大人が読んでも楽しめる愛と友情の物語です。

はえくんの冒険

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サービスを向上させるにはスタッフを幸せにすることが一番の近道。アメリカの超一流ホテルでの経験から綴る業界改革論。

サービス発展途上国日本 - 「お客様は神様です」の勘違いが、日本を駄目にする

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「プラザ」元マネージャー直伝、一流ホテルで恥をかかない滞在術。この一冊があなたのアメリカ滞在を変える!レジャーはもちろん、ビジネスにも役立つ情報の集積。国際人の責任として、海外に行く前にその国の常識を学ぼう。

海外旅行が変わる ホテルの常識

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アメリカのホテルはなぜこんなに不愉快なのか!?「日本人利用客」VS「アメリカ人従業員」。果てしないトラブルの非は、どちらにある?敏腕マネージャーがフロント・デスクの内側からみた「日米比較文化論」。

世界最高のホテル プラザでの10年間

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