アメリカン・エキスプレス
私が見たアメリカのホテル

アメリカの一流ホテルで日本人マネージャーとして10年間勤務した著者が、日々の仕事の中でふと目にしたシーンから、日米の文化的な違い、考え方の背景にあるものなどをつづります。 著者紹介はこちら>>

第9回

大雑把なアメリカのホテル運営

ホテルイメージ

Orlando World Center Marriott

「利用してないミニバーの請求がついていた。こんな一流ホテルで、どうしてこんなことが起こるんだ?!」

多くの日本人からそうした怒りの声を聞いた。そのたびに、「そんなこと、小さなことじゃないか」と言いたくなった。ホテルだって、ミニバーの請求額に間違いがないとは思っていない。チェックアウトの前日に利用したものは、ゲストの自己申告で金額を決めるのだ。ゲストが記憶違いをすることだってあるだろう。その差額が次のゲストに回されることもある。だが、とにかくゲストの申告を100%尊重し、「使っていない」と言われれば、すぐに消去するというのがホテル側の姿勢なのだ。

ベッドの手配もそうだ。予約したときにエキストラベッドをリクエストしたからと言って、自動的には部屋に入らないことが多い。たいがいは、チェックインの際に、記録のなかにあるリクエストを見て、フロント・スタッフがハウスキーパーに電話で依頼するようになっている。しかし、見おとすことが多い。また、入らなければ、ゲストから電話がくるだろうという気持ちもあるから、夕刻でなければ、アクションをとらないこともある。それに対し、日本の旅行会社から夜中にホテルに電話が入ることがある。夜中ではベッドを運ぶスタッフがいないかもしれない。ときにはかかった国際電話代を弁償してくれと言われて、ホテルは閉口する。

アメリカのホテル運営には大雑把なことが多くある。日本の常識をもってすれば、「いい加減なやりかた」として非難されることだが、こちらでは日常茶飯事だ。こうしたことに憤るのは意味なきことだし、過剰に目くじらをたてられると、ホテル側は辟易するというのが実情だ。

森を前にしたとき、日本人は木を見て森を見ない。アメリカ人は森を見て木を見ない。言い換えれば、日本人は完璧を求めるがあまり、目先のことにとらわれすぎて前に進めない。アメリカ人は細かいことは気にせず、ゴールに向かって突き進む。この国民性の違いがホテル運営に大きな差をもたらしている。
日本でならば、細かいことに心行くまで苦情をあげれば良い。だが、アメリカに来たら、アメリカの仕来たりに従わなくてはならない。煙たい目で見られないように、アメリカに来る前に、そのしきたりが何なのかを知ることが今の日本人に求められていることなのだ。

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奥谷啓介氏

著者:奥谷 啓介

1960年東京都生まれ。ウエステインスタンフォード&プラザシンガポール、ハイアットリージェンシーサイパン等勤務の後、1994年よりニューヨークのプラザホテルに就職。2005年プラザホテルの閉館に伴い退職。現在はニューヨークにてホテルコンサルタントを、また2023年6月からは長年の夢であった小説家としてデビュー。ホテルマンの経験を活かし多方面で活躍中。

・奥谷 啓介オフィシャルサイト

<著者紹介>

・超一流の働き方

ビートルズ・ケネディ大統領・サウジの大富豪……全世界のVIPらに愛され、マネージャーとして超一流の世界で学んだ世界標準の「サービス」「心の持ち方」「自分の活かし方」「生き方」を公開!

超一流の働き方

・なぜ「お客様は神様です」では一流と呼ばれないのか

「アメリカのホテルで1万円儲かることが、日本のホテルでは3,780円しか儲からない」といわれるほど世界最低レベルの生産性。働けど働けど儲からないワーキングスタイルに苦しめられるのはもうやめよう。

なぜ「お客様は神様です」では一流と呼ばれないのか

・はえくんの冒険(原作:アントニオ猪木、著:ケニー奥谷、絵:八雲)

ブラジルの中央、マッドグロッソにある牧場に生まれた「はえくん」の物語。原作のアントニオ猪木氏が自身の体験をもとに長年あたためてきた企画が、奥谷氏の手により絵本になりました。大人が読んでも楽しめる愛と友情の物語です。

はえくんの冒険

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サービスを向上させるにはスタッフを幸せにすることが一番の近道。アメリカの超一流ホテルでの経験から綴る業界改革論。

サービス発展途上国日本 - 「お客様は神様です」の勘違いが、日本を駄目にする

・海外旅行が変わる ホテルの常識

「プラザ」元マネージャー直伝、一流ホテルで恥をかかない滞在術。この一冊があなたのアメリカ滞在を変える!レジャーはもちろん、ビジネスにも役立つ情報の集積。国際人の責任として、海外に行く前にその国の常識を学ぼう。

海外旅行が変わる ホテルの常識

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アメリカのホテルはなぜこんなに不愉快なのか!?「日本人利用客」VS「アメリカ人従業員」。果てしないトラブルの非は、どちらにある?敏腕マネージャーがフロント・デスクの内側からみた「日米比較文化論」。

世界最高のホテル プラザでの10年間

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