ホテルチェーンが始まった切っ掛けと偶然

ものごとが始まるときには、切っ掛けと偶然がつきもの。ホテルチェーンにも、その始まりにはそれぞれの切っ掛けや偶然があった。

ウエスティンホテルが生まれた切っ掛けは世界大恐慌。アメリカ中のホテルが倒産していく中、絶望している二人のホテルオーナーが、偶然、レストランで出会った。二人は人件費を節約するために、自分たちのホテルの運営を統合させることで合意。そこから、困窮している他のホテルの運営を引き受ける代わりに、総売り上げから1％のマネージメントフィーを取るビジネスモデルを捻出。それがアメリカ初のホテルマネージメントカンパニーの始まりだった。あの時、偶然、二人が出会わなければ、ウエスティンホテルはなかったであろう。

ハイアットホテルの切っ掛けは航空技術の発達。巨大コングロマリットのオーナーであるプリッツカーはロスアンゼルス空港に向かう途中、待ち時間をもてあましていた。そのとき、偶然、見つけたエアポート近くにあるホテル。中に入ると、そこにいた多くの利用者に目を疑った。今後、航空技術の発達にともない、さらに多くの人々が国内を飛行機で飛び回る時代が来る。空港の近くにホテルを持てば、大きなビジネスになるに違いない。そう考え、即刻、そのホテルを売買。そこからハイアットホテルが始まった。あの時、あのホテルを見つけていなければ、ハイアットホテルはなかったであろう。

マリオットホテルの切っ掛けはマイカーブーム。1960年代は、アメリカが車の増加とハイウエイの拡大に沸いた時代。ハイウエイ沿いにモーテルを建てれば、大きな需要が見込めるだろうと考えた。だが、偶然にも、ホリデイインもそれに着手。マリオットは遅れをとり、高級ホテルにも手を伸ばさざるを得ないことに。あのとき、順調に進んでいたら、単なるモーテルだけのフランチャイズホテルチェーンで終わっていたかもしれない。

最後にヒルトンホテル。創始者のコンラッド・ヒルトンはオイルマネーに沸くテキサスで銀行を営めば、大きく儲けられると踏んだ。銀行買収の交渉を行うため、シスコの小さなホテルに宿泊。そこで、部屋を1日に3回転させていることに驚き、スペースを売るビジネスのポテンシャルに着目。偶然にも、買おうとしていた銀行の値段が吊り上げられて購入できず、代わりにそのホテルを購入することに。あのとき、銀行の値段が吊り上げられなければ、ヒルトンホテルは存在していなかったであろう。 どれも時代の変化の中にチャンスを見い出したことによる成功例。だが、そこには偶然の後押しも存在していた。

2024.02.29公開