私が見たアメリカのホテル

アメリカの一流ホテルで日本人マネージャーとして10年間勤務した著者が、日々の仕事の中でふと目にしたシーンから、日米の文化的な違い、考え方の背景にあるものなどをつづります。 著者紹介はこちら>>

第184回

宿泊ゲストのためのホテル空間

ホテルイメージ

20年前、私が働いていたニューヨークのホテルでは、ホテルでおカネを使う人以外は入れないように圧力をかけていた。やり方はいたく原始的で、ドアマンが「この人は用もなくホテルに入ろうとしている」と感じれば、睨みつける。全体ミーティングの場で、総支配人がドアマンにそうした行動をとるように指示を出していた。当時は、服装を見て、ある程度そうしたことが分かったが、現在は、ジーンズでも800ドルを超えるようなものもあり、服装で見極めることは難しくなった。

代わりに、「宿泊ゲスト以外は入れません」という縦札を起き、その脇にセキュリティ―が立っているホテルが増えた。例えば、プラザホテルでは、チェックインカウンターとバー&レストランが備わったスペースがあり、そこには宿泊ゲスト以外は入れないという縦札が立っている。泊まってはいないが、そのバー&レストランを使いたいという人もいるだろう。だが、ロビー中央にあるパームコートというレストランしか使えない。ニューヨークで大人気のブテイックホテルのひとつ、グリニッジホテルも違わず、宿泊ゲストしか館内に入れない。館内にイタリアンレストランがあるが、宿泊していない人は外から入るエントランスを利用するのみになる。

このように、宿泊ゲストだけの空間にすることで、ゲストは真夜中でも、ルームサービスをロビーラウンジで食べることができる。深夜にバーが開いていなくても、冷蔵庫から飲み物を取り出し、チェックリストに部屋番号と飲んだ物を書いておいておけばよいなどというサービスも可能になる。宿泊ゲストにとって、快適性と利便性が広がり、泊まっている人のみが使えるという優越感はリピーターを育てる大きな力となる。

アメリカのホテルは昔から、ホテルでおカネを使わない人を館内に入れないように仕向けてきた。用のない人が入れば、治安が悪くなり、宿泊している人にとっていいことは何もない。だが、建物の構造上、それを極めることができなかった。これからは、アメリカの小規模高級ホテルでは、ゲスト以外はロビーに入れないという造りが益々増えてくるだろう。それにより得られるメリットはとても大きなものなのだから。

2023.3.31公開

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奥谷啓介氏

著者:奥谷 啓介

1960年東京都生まれ。ウエステインスタンフォード&プラザシンガポール、ハイアットリージェンシーサイパン等勤務の後、1994年よりニューヨークのプラザホテルに就職。2005年プラザホテルの閉館に伴い退職。現在はニューヨークにてホテルコンサルタントを、また2023年6月からは長年の夢であった小説家としてデビュー。ホテルマンの経験を活かし多方面で活躍中。

・奥谷 啓介オフィシャルサイト

<著者紹介>

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