私が見たアメリカのホテル

アメリカの一流ホテルで日本人マネージャーとして10年間勤務した著者が、日々の仕事の中でふと目にしたシーンから、日米の文化的な違い、考え方の背景にあるものなどをつづります。 著者紹介はこちら>>

第157回

アメリカのホテルで身を守るために

ホテルイメージ

コロナの影響で、アメリカの治安は悪化している。ワクチン接種が始まるので、夏頃から、ニューヨークにも観光が戻りだすという予想が立っているが、しばらくの間は、治安には特に注意しなければならない。そこでアメリカのホテルの治安維持について述べてみたい。

治安を守るためにホテルが行っていることの代表例は、監視カメラを至るところに取り付けていること。ゲスト用のエレベーターと廊下だけでなく、スタッフ用のエレベーターとスタッフが利用する廊下にも取り付けている。盗難、強盗、暴力事件などが起きたときは、カメラでとらえた映像を使って犯人を割り出す。また、悪事を防ぐ抑止力として、敢えて人々に見えるように取り付けられているカメラもある。

次に、部屋の鍵に部屋番号が書かれていないこと。鍵を無くした場合でも、それを拾った人に、部屋に侵入されることを防ぐ。ハウスキーパー、ミニバースタッフ、セキュリティスタッフなどが部屋に入ったときは、彼らの鍵が何時何分に利用されたという記録が全て残る。これにより、スタッフによる悪事を暴く。また、抑止力ともなる。

さらに、ホテルスタッフは決してゲストの名前と部屋番号を他人に告げてはならないという規則に基づいて行動していること。テレフォンオペレーターに「〇〇さんの部屋番号を教えて欲しい」と言っても、教えてはもらえない。また、こうしたシステムで、記録に残るものを外部に見せることはない。見せるとしたら、事件を調査する警察機構。あるいは、裁判になったときの証拠として見せるのみになる。だから、部屋で盗難に遭ったとき、ホテルスタッフから、「鍵の閉会記録から、あなたの留守中に部屋に入った者はいません」と言われ、「それなら、その証拠を見せて欲しい」と言っても、見せてはもらえない。

だが、どれだけ防犯に力を注いでも、事件は起こる。最も危険なのは、ドアを開けたときに背後から押されて、暴漢に部屋に侵入されてしまうこと。これを防ぐためには、各自、ドアを開ける前に、周囲に人がいないことを確認すること。また、部屋から出るときに、ドアスコープで不審者がいないことを確認すること。そして、ドアを開けている時間を極力短くすること。これらを習慣つけることが大切だ。

余談になるが、昨今、アメリカでは、SNSを通して「これが不正の証拠」などと、防犯カメラがとらえた映像が頻繁にでてくる。出てこられるのは、その映像が検証を終えて一般公開許可を受けたニュースで放映されたものということ。それ以外は、偽り映像ということになる。

2020.12.17公開

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奥谷啓介氏

著者:奥谷 啓介

1960年東京都生まれ。ウエステインスタンフォード&プラザシンガポール、ハイアットリージェンシーサイパン等勤務の後、1994年よりニューヨークのプラザホテルに就職。2005年プラザホテルの閉館に伴い退職。現在はニューヨークにてホテルコンサルタントを、また2023年6月からは長年の夢であった小説家としてデビュー。ホテルマンの経験を活かし多方面で活躍中。

・奥谷 啓介オフィシャルサイト

<著者紹介>

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