私が見たアメリカのホテル

アメリカの一流ホテルで日本人マネージャーとして10年間勤務した著者が、日々の仕事の中でふと目にしたシーンから、日米の文化的な違い、考え方の背景にあるものなどをつづります。 著者紹介はこちら>>

第89回

アメリカ旅行の注意点

ホテルイメージ

The Michelangelo Hotel

ゴールデンウイークが近づいてきた。アメリカに行かれる方の再確認用に、めぼしい注意事項を挙げてみたい。行き先をニューヨークと仮定して、空港に着いたところから始めることにする。

イミグレーションを通過するまでは、携帯電話の使用と写真撮影は禁止されている。違反をして没収されないように気をつけよう。トラブルは、イミグレーションオフィサー(パスポートにスタンプを押す人)の「どこに泊まるのだ?」という質問から始まることが多い。一番無難に終わる答えは「〇〇ホテルです」。「友人の家」と答えるときは、「どんな関係だ?」と続くことがあるので、答えを用意しておこう。

ロビーに到着したら、タクシーに利用できる紙幣があることを確認する。20ドル以上の額の札は使えない。50ドル札や100ドル札しかないときは、売店で物を買ってくずす。「マンハッタンに行くなら、お送りいたします」と、親切に声をかけられても、一切付き合わないこと。タクシー乗り場にいき、デイスパッチャー(タクシーを呼んでくれる人)がいるところから乗る。深夜に到着して、デイスパッチャーがいないときでも、必ずタクシー乗り場から乗ろう。

ホテルに到着して、ドアマンがドアを開けてくれたら、チップを渡す。金額は1ドルか2ドル程度。荷物が複数あるときは2ドルは払おう。1ドル札がないときは、10ドル札でも20ドル札でもかまわないので、「〇〇ドルのおつりをください」と言って渡す。ドアマンから受け取る荷物の半券は、チェックインをしてくれたフロントスタッフに渡す。ベルマンは、そのスタッフから半券と部屋番号を受け取り、どの荷物をどの部屋に運ぶかを確認して動く。(ホテルによっては、半券はなく、ベルマンが荷物を持って部屋まで一緒に行く)一方、巨大なツーリスト用ホテルなら、自分で荷物を運んでしまうほうがよい。ドアマンに預けてきたら、どれだけかかるかわからない。1ドル札があまりないときは、チェックイン時に両替をしてもらう。1ドル札は常にたくさん持っておくことが必要だ。

部屋に入ったら、トイレが流れること。エアコンが動くこと。電球が切れていないこと。テレビがつくこと。電話がつながっていること。セーフティボックスが開いていることなどを調べる。ベルマンがきたら、荷物を受け取る際にチップを渡す。大きさに関係なく、荷物1個につき2ドルから3ドルが相場。部屋に不備があるときは、ベルマンに告げる。不備がすぐに直らない場合には、早めにあきらめて部屋の交換をしてもらおう。

コンシェルジェは、観光の情報を得たり、レストラン予約をしてもらったりするのに利用する。その際には、2ドル程度のチップを払う。ミュージカルチケットの購入依頼などもしてくれるホテルもあるが、かなり割高になることは覚悟しなければならない。レストランを予約したときには、ドレスコードを確認する。カジュアルならば気にしなくていいが、ビジネスカジュアル(Tシャツ、サンダルは不可、ジーンズも避けるべき)やビジネスアタイヤ(ジャケット、スラックス、革靴要)と言われたら、その服装をしていかないと、入れてもらえない。

レストランでテーブルに着いたら、ナプキンを広げて、メニューを見る。注文するものが決まったらメニューをテーブルに置く。眺めたままでいると、オーダーを取りに来ないかもしれないので要注意。オーダーを取りにきたら、そのスタッフの顔と名前を覚える。用があるときは、常にそのスタッフを呼び、他のスタッフには声をかけない。

チェックアウト時には、少なくても30分以上前にベルマンに電話をして「〇〇時に荷物を取りに来て欲しい」と依頼する。荷物を取りにきたベルマンと一緒にロビーに下りないときは、そこでチップを払う。チェックアウトを済ませたら、ベルキャプテンのところに行き荷物の確認をする。まだチップを払っていないときは、ドアマンの前まで荷物を運んでくれた時に払う。ドアマンへのチップは、荷物をトランクに入れたことを確認した後に渡す。この時、くれぐれも荷物の積み忘れが起こらないように確認すること。

チップを払う回数が多いが、アメリカに暮らしているとチップを払わずにすむ日はない。ただ、日本のホテルの部屋代にかかる10%のサービスチャージと比べれば、支払う合計額は多くはない。

最後に、通常、歯ブラシはホテルのアメニティーセットにはないので、忘れないようにもって行こう。

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奥谷啓介氏

著者:奥谷 啓介

1960年東京都生まれ。ウエステインスタンフォード&プラザシンガポール、ハイアットリージェンシーサイパン等勤務の後、1994年よりニューヨークのプラザホテルに就職。2005年プラザホテルの閉館に伴い退職。現在はニューヨークにてホテルコンサルタントを、また2023年6月からは長年の夢であった小説家としてデビュー。ホテルマンの経験を活かし多方面で活躍中。

・奥谷 啓介オフィシャルサイト

<著者紹介>

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