私が見たアメリカのホテル

アメリカの一流ホテルで日本人マネージャーとして10年間勤務した著者が、日々の仕事の中でふと目にしたシーンから、日米の文化的な違い、考え方の背景にあるものなどをつづります。 著者紹介はこちら>>

第81回

アメリカのホテルで守るべきマナー

ホテルイメージ

Hotel Plaza Athenee New York

海外旅行の季節がやってきた。アメリカのホテルで守るべきマナーを教えて欲しいという問い合わせが多くなったので、ここに、その代表的なものを挙げておきたい。

タクシーがホテルに着くところから順を追っていくと、最初に迎えてくれるのがドアマン。ドアマンはタクシーから荷物を下ろし、ベルマンがくるまで見張っていてくれる。そのサービスに支払うチップが必要。ホテルの格式によって差があるが、大小にかかわらず、おおよそ荷物1個について1ドル50セントから2ドル。荷物が1個の場合には2ドルを、2個の場合には3ドルを払うといいだろう。次にベルマンが荷物を入り口から部屋まで運んでくれる。そのサービスには、荷物1個につき2ドルから3ドル。荷物1個の場合には3ドルを、2個の場合には4ドル程度が相場となる。チェックアウトのときも、同じく、彼らにはそれぞれ別にチップを払うことが必要だ。

チップを払わなくても、彼らが言葉にして文句を言うことはない。だが、心の中では怒っている。彼らはほぼチップで生計を立てているので、「俺たちはボランティアで働く気はない」という気持ちになる。ウエイター&ウエイトレスも同じ境遇にあるので、レストランでは、請求額の18%~22%を支払うことを忘れないようにしなければならない。

一方、部屋を掃除するハウスキーパーにとっては、チップは追加収入扱いとなる。それだけ額の高い給与がでているということ。だから、必ずしも必要ではないが、チップがおいてある部屋と、そうでない部屋があれば、置いてない部屋の掃除が散漫になったとしても不思議ではない。それを防ぐために、1部屋につき2ドル程度を置くことをお勧めする。

よく聞く“ドレスコード”とは、レストランなどで決められている服装規制のこと。近頃、アメリカではだいぶゆるくなってきているが、場所により違いがあることを覚えておくべき。リゾートホテルの“カジュアル”であれば、短パンやショーツでもかまわないが、都市にあるホテルならば、長ズボンやスカートにしておくほうが安全。安全というのは、店に入るのを断られることがないということ。その上の“ビジネスカジュアル”になれば、スニーカーや襟なしシャツは不可と考えたほうが安全だ。さらに上の“ビジネス”や“インフォーマル”になれば、ジャケットが必要とされる。デイナークルーズなどでドレスコードにひっかかると、乗せてもらえず、また支払った額も戻ってこなくなるので特に注意が必要だ。

最後に、日本特有の危険な習慣を挙げておきたい。日本ではマスクをして外出をするのは自然なことだが、アメリカではするべきではない。風邪をひいている人が人前にでることはマナー違反だからだ。マスクをしているということは、風邪をひいているとみなされ、周囲から煙たがられる。レストランによっては、入場お断りのところもある。

また、この延長として、咳やくしゃみの仕方にも気を使う必要がある。ただ両手で口を押さえる程度では、周囲から露骨にいやな顔をされることになる。完璧につばきの発散を封じこめなければならない。ジャケットを着ている場合には、顔をジャケットで覆ってしまう。ハンカチがあれば、しっかりと口にあてがう。ジャケットもハンカチもない場合には、腕を口に回し、ひじの内側でしっかりと口を覆う。

細かいマナーはまだまだあるので、できることなら、ガイドブックなどで調べてから発って欲しい。

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奥谷啓介氏

著者:奥谷 啓介

1960年東京都生まれ。ウエステインスタンフォード&プラザシンガポール、ハイアットリージェンシーサイパン等勤務の後、1994年よりニューヨークのプラザホテルに就職。2005年プラザホテルの閉館に伴い退職。現在はニューヨークにてホテルコンサルタントを、また2023年6月からは長年の夢であった小説家としてデビュー。ホテルマンの経験を活かし多方面で活躍中。

・奥谷 啓介オフィシャルサイト

<著者紹介>

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