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私が見たアメリカのホテル

アメリカの一流ホテルで日本人マネージャーとして10年間勤務した著者が、日々の仕事の中でふと目にしたシーンから、日米の文化的な違い、考え方の背景にあるものなどをつづります。 著者紹介はこちら>>

第121回

インターネットが崩したクリスマス商戦神話

ホテルイメージ

概して、ニューヨークのホテルの7割はビジネスマンで埋まる。サマーバケーションシーズンなど、ビジネスがスローになる時期はホテルは空くことになる。だが、3週間だけ例外と言える期間がある。それはサンクスギビング後から始まる“クリスマス商戦”期間。地方に暮らす大勢の人々が綺麗に飾られたニューヨークを楽しみながら、セールになっている商品に群がる。車でマンハッタンに乗り入れる人々もいて、極度の交通渋滞が発生する。大手デパートの年間売り上げの7割以上が、この3週間に売れるとも言われている。

サンクスギビング、クリスマス、ニューイヤーズデーと、5週間に3日も祝日があるので、心はホリデー気分。ビジネスマンが活発に動く時期ではない。だが、この3週間だけは観光客でホテルが溢れかえる。昨年も、夏に300ドルで予約できた大型ホテルが、12月1週は900ドルもした。この状態は、私がニューヨークに来た1994年以来、ずっと変わることなく続いていた。

多くのホテルはこの現象だけは変わらないと自信があったに違いない。だが、今年、その状態が初めて崩れた。20年以上ホテル業界で働く者は知っている。いかにインターネットの発達がホテルの在り方を、人々の動きを、そして市場全体を変えたかを。アマゾンドットコムはニューヨークで大人気のオーガニックフードチェーン“ホールフーズ”を約1兆5千億円で買収し、わざわざ店まで出向かなくても、インターネットで買えるようにした。

もちろん綺麗に飾られたニューヨークの街を見ることは憧れだ。だが、もう一つの目的である買い物に関しては、ほぼなんでもネットで買うことができる。1泊900ドルもするホテルに泊まりながら、買いに行くほどのことではないと考える人もたくさんいるだろう。

インターネットが世に出てから約20有余年。ついに“不動”と思われたクリスマス商戦期間中のホテル景気に水をさすときがきてしまった。大慌てで、ネット上、500ドルなどと書かれていた料金に赤線を引き、199ドルと書き直すホテルもある。この予想外の大きな穴をどう埋めるか?それが年明けのホテルの大きな課題となるだろう。

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私が見たアメリカのホテル バックナンバー
奥谷啓介氏

著者:奥谷 啓介

1960年東京都生まれ。ウエステインスタンフォード&プラザシンガポール、ハイアットリージェンシーサイパン等勤務の後、1994年よりニューヨークのプラザホテルに就職。2005年プラザホテルの閉館に伴い退職。現在はニューヨークにてホテルコンサルタントを、また2023年6月からは長年の夢であった小説家としてデビュー。ホテルマンの経験を活かし多方面で活躍中。

・奥谷 啓介オフィシャルサイト

<著者紹介>

・超一流の働き方

ビートルズ・ケネディ大統領・サウジの大富豪……全世界のVIPらに愛され、マネージャーとして超一流の世界で学んだ世界標準の「サービス」「心の持ち方」「自分の活かし方」「生き方」を公開!

超一流の働き方

・なぜ「お客様は神様です」では一流と呼ばれないのか

「アメリカのホテルで1万円儲かることが、日本のホテルでは3,780円しか儲からない」といわれるほど世界最低レベルの生産性。働けど働けど儲からないワーキングスタイルに苦しめられるのはもうやめよう。

なぜ「お客様は神様です」では一流と呼ばれないのか

・はえくんの冒険(原作:アントニオ猪木、著:ケニー奥谷、絵:八雲)

ブラジルの中央、マッドグロッソにある牧場に生まれた「はえくん」の物語。原作のアントニオ猪木氏が自身の体験をもとに長年あたためてきた企画が、奥谷氏の手により絵本になりました。大人が読んでも楽しめる愛と友情の物語です。

はえくんの冒険

・サービス発展途上国日本 - 「お客様は神様です」の勘違いが、日本を駄目にする

サービスを向上させるにはスタッフを幸せにすることが一番の近道。アメリカの超一流ホテルでの経験から綴る業界改革論。

サービス発展途上国日本 - 「お客様は神様です」の勘違いが、日本を駄目にする

・海外旅行が変わる ホテルの常識

「プラザ」元マネージャー直伝、一流ホテルで恥をかかない滞在術。この一冊があなたのアメリカ滞在を変える!レジャーはもちろん、ビジネスにも役立つ情報の集積。国際人の責任として、海外に行く前にその国の常識を学ぼう。

海外旅行が変わる ホテルの常識

・世界最高のホテル プラザでの10年間

アメリカのホテルはなぜこんなに不愉快なのか!?「日本人利用客」VS「アメリカ人従業員」。果てしないトラブルの非は、どちらにある?敏腕マネージャーがフロント・デスクの内側からみた「日米比較文化論」。

世界最高のホテル プラザでの10年間

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