私が見たアメリカのホテル

アメリカの一流ホテルで日本人マネージャーとして10年間勤務した著者が、日々の仕事の中でふと目にしたシーンから、日米の文化的な違い、考え方の背景にあるものなどをつづります。 著者紹介はこちら>>

第133回

セントラルパークを一望するホテル

ホテルイメージ

マンハッタンは新しい街と古い街に分かれる。1800年初頭の時点では、最南端からグリニッジビレッジまでしか街は開拓されていなかった。1811年になり、未開拓のマンハッタン北部を格子状にする都市計画書が作成され、ハウストンストリートをゼロとし、北に向かって数字が増えていくストリートが造られ始める。セントラルパークの設置が決められたのは1853年のこと。1859年にオープンしたその公園は、数年後、美しく生えそろった木々で人々を魅了し、「この綺麗な公園を見ながら暮らしたい」という願いを育んだ。その希望に応えた最初のマンション「ダコタハウス」が1884年に完成し、それに続き高級住宅街が建築されて行った。

マンハッタンの魅力の大きな要素は、このセントラルパークにあると言っても過言ではないだろう。長さ4キロ、幅800メートルの巨大なジャングルは、上から眺める人々の目をくぎ付けにする。春から夏にかけてはまばゆい緑。秋は紅葉。冬は真っ白な雪景色と、マンハッタンのムードメーカーとしての役割を担う。1907年にオープンしたプラザホテルが人々の憧れの的となった理由の一つも、セントラルパークの脇というロケーションにあった。

現在、セントラルパークを一望できるスペースを保有するホテルを挙げると、マンダリンオリエンタルホテルがある。ロビーに行けば素晴らしい眺めが待っている。ガラス張りのラウンジがセントラルパークを見下ろす場所に設置され、待ち合わせ場所として、ここほど優雅な場所はないだろう。ただ、席に限りがあるので、混みあう時間帯に行くと、待たされることになる。次に、挙げられるのがパーカーホテル。宿泊客なら誰でも屋上にあるセントラルパークを見下ろすプールに入室することができる。

それ以外には、セントラルパークビューの部屋を保有するホテルとなる。54ストリートにあるレジデンスインは北米一の高層ホテル。そこにあるセントラルパークビュールームほど、この公園を果てまで見渡せる部屋ははない。エセックスハウス、トランプインターナショナルホテルアンドタワー、フォーシーズン、ピエールなどにも、セントラルパークを、ビルとビルの間からでなく、しっかりと一望できる部屋が存在している。

マンハッタンは、過去50年にわたり、“この島のどこにそんなスペースがあったのか”と、驚かれるほどのスピードでホテルを増やしている。それはまだこれからも続いて行く。だが、セントラルパークの眺めを提供してくれるホテルだけは増えることがない、とても貴重な存在だ。

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奥谷啓介氏

著者:奥谷 啓介

1960年東京都生まれ。ウエステインスタンフォード&プラザシンガポール、ハイアットリージェンシーサイパン等勤務の後、1994年よりニューヨークのプラザホテルに就職。2005年プラザホテルの閉館に伴い退職。現在はニューヨークにてホテルコンサルタントを、また2023年6月からは長年の夢であった小説家としてデビュー。ホテルマンの経験を活かし多方面で活躍中。

・奥谷 啓介オフィシャルサイト

<著者紹介>

・超一流の働き方

ビートルズ・ケネディ大統領・サウジの大富豪……全世界のVIPらに愛され、マネージャーとして超一流の世界で学んだ世界標準の「サービス」「心の持ち方」「自分の活かし方」「生き方」を公開!

超一流の働き方

・なぜ「お客様は神様です」では一流と呼ばれないのか

「アメリカのホテルで1万円儲かることが、日本のホテルでは3,780円しか儲からない」といわれるほど世界最低レベルの生産性。働けど働けど儲からないワーキングスタイルに苦しめられるのはもうやめよう。

なぜ「お客様は神様です」では一流と呼ばれないのか

・はえくんの冒険(原作:アントニオ猪木、著:ケニー奥谷、絵:八雲)

ブラジルの中央、マッドグロッソにある牧場に生まれた「はえくん」の物語。原作のアントニオ猪木氏が自身の体験をもとに長年あたためてきた企画が、奥谷氏の手により絵本になりました。大人が読んでも楽しめる愛と友情の物語です。

はえくんの冒険

・サービス発展途上国日本 - 「お客様は神様です」の勘違いが、日本を駄目にする

サービスを向上させるにはスタッフを幸せにすることが一番の近道。アメリカの超一流ホテルでの経験から綴る業界改革論。

サービス発展途上国日本 - 「お客様は神様です」の勘違いが、日本を駄目にする

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「プラザ」元マネージャー直伝、一流ホテルで恥をかかない滞在術。この一冊があなたのアメリカ滞在を変える!レジャーはもちろん、ビジネスにも役立つ情報の集積。国際人の責任として、海外に行く前にその国の常識を学ぼう。

海外旅行が変わる ホテルの常識

・世界最高のホテル プラザでの10年間

アメリカのホテルはなぜこんなに不愉快なのか!?「日本人利用客」VS「アメリカ人従業員」。果てしないトラブルの非は、どちらにある?敏腕マネージャーがフロント・デスクの内側からみた「日米比較文化論」。

世界最高のホテル プラザでの10年間

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