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私が見たアメリカのホテル

アメリカの一流ホテルで日本人マネージャーとして10年間勤務した著者が、日々の仕事の中でふと目にしたシーンから、日米の文化的な違い、考え方の背景にあるものなどをつづります。 著者紹介はこちら>>

第56回

ニューヨークのホテルのキングとクイーン

ホテルイメージ

The St. Regis New York

「相変わらずキングはセントリージェスで、アベレージルームレート(平均客室料金)は○○ドル」と、よく総支配人が全体ミーティングで発表していた。まだ、ニューヨークが住宅バブルに入る前のことで、セントリージェスもプラザも共に100%ホテルとして利用されていたときの話だ。

セントリージェスは1904年にオープンした。プラザは1800年代末に建てられたが、1907年に建て代えを行っている。ともに、アメリカが未曾有の大景気に沸いた時代を背景に、贅を尽くして建てられた建築物。柱や外壁に施された彫刻などを見ると、いかにお金がかけられているかが分かる。当時は飛行機もなく、旅行客の数は限られていた時代。この2つのホテルは、主に大富豪が長期滞在に利用するアパートとして建てられたものだった。家族が暮らすためのものなので、スイートが多く、メイドが利用するための狭い部屋もあった。実際、私が。プラザで働いていたときでも、800室のうち200室はメイドが利用した6畳ひと間程度の広さの客室だった。

セントリージェスは一時期閉館をして大改装を行っていた。そのときにメイドの部屋を取り除いていたから、全ての部屋を高い値段で売ることができた。さらに、各フロアーに24時間体制でバトラーを待機させ、ブザーを押せばすぐに彼らが来るサービスを用意していた。それが他のホテルでは出せない高い料金設定を可能にしていたのだ。プラザでも、バトラーを5人ほど用意してVIPを担当させたが、全ての部屋にバトラーサービスを付けることはできなかった。800室もあれば、逆に集客の足を引っ張ることになってしまうからだ。セントリージェスは、全室にバトラーサービスを付けるに、ほどよい大きさのホテルだったのだ。こうした差により、プラザはセントリージェスよりも高い客室単価を出すことができず、クイーンとしてとどまることになっていた。

2003年頃から始まった住宅バブル期に、多くの高級ホテルはコンドミニアム(分譲マンション)に改装されて姿を消した。プラザはかろうじて、ホテルとしての客室を230室程度残すことができた。同時期に、セントリージェスもまた多くの客室がコンドミニアム化された。新しく建てられるアメリカの高級ホテルの多くは、最初から半分をコンドミニアムにしているところが多い。そうすることで、建設にかかる経費の多くを返却してしまうことができるからだ。また、昔からコンドミニアムを共存させている高級ホテルもある。カーライルがその代表例だ。映画俳優やイギリスの王室なども、そのコンドミニアムの保有者で、年に数回程度泊まりに来ている。今や、ニューヨークのホテルの流れは、コンドミニアムと共存していることが、高級ホテルの証と言える時代になったのだ。

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奥谷啓介氏

著者:奥谷 啓介

1960年東京都生まれ。ウエステインスタンフォード&プラザシンガポール、ハイアットリージェンシーサイパン等勤務の後、1994年よりニューヨークのプラザホテルに就職。2005年プラザホテルの閉館に伴い退職。現在はニューヨークにてホテルコンサルタントを、また2023年6月からは長年の夢であった小説家としてデビュー。ホテルマンの経験を活かし多方面で活躍中。

・奥谷 啓介オフィシャルサイト

<著者紹介>

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超一流の働き方

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なぜ「お客様は神様です」では一流と呼ばれないのか

・はえくんの冒険(原作:アントニオ猪木、著:ケニー奥谷、絵:八雲)

ブラジルの中央、マッドグロッソにある牧場に生まれた「はえくん」の物語。原作のアントニオ猪木氏が自身の体験をもとに長年あたためてきた企画が、奥谷氏の手により絵本になりました。大人が読んでも楽しめる愛と友情の物語です。

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「プラザ」元マネージャー直伝、一流ホテルで恥をかかない滞在術。この一冊があなたのアメリカ滞在を変える!レジャーはもちろん、ビジネスにも役立つ情報の集積。国際人の責任として、海外に行く前にその国の常識を学ぼう。

海外旅行が変わる ホテルの常識

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アメリカのホテルはなぜこんなに不愉快なのか!?「日本人利用客」VS「アメリカ人従業員」。果てしないトラブルの非は、どちらにある?敏腕マネージャーがフロント・デスクの内側からみた「日米比較文化論」。

世界最高のホテル プラザでの10年間

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