私が見たアメリカのホテル

アメリカの一流ホテルで日本人マネージャーとして10年間勤務した著者が、日々の仕事の中でふと目にしたシーンから、日米の文化的な違い、考え方の背景にあるものなどをつづります。 著者紹介はこちら>>

第11回

セクハラ意識の薄い日本のホテル

ホテルイメージ

W New York Times Square

日本は懲りない人々の集団か?アメリカで、なんど超一流日本企業がセクハラ訴訟で巨額の損失をしてきたことか。それにもかかわらず、日本人は本気でセクハラが何たるかを学ぼうとしていないように私には思える。

セクハラ訴訟はアメリカ社会だけの問題と思っているから、日本での行ないは正さなくていいと思っているのだろうか。だが、そんな心がけだから、うっかりその習慣をアメリカで出してしまい、“しまった”となるのではないか。そのときはもう遅い。企業の社会的名誉はいたく傷つき、同時に数十億円の損害賠償金をとられることになる。

セクハラは女性社員にいやらしいことを言ったり行ったりしなければいいというものではない。肝心なのは、女性社員から「自分が女性であるということを無視している。」と思われないようにすることだ。たとえばエレベーターに乗るとき、女性社員がいたら、「どうぞお先に」というジェスチャーをして先に通すだろうか?これをしないと、彼女らは「女性を無視している。」と怒りを溜めることになる。多くの社員が同じ怒りを溜めたら、集団訴訟に走るかもしれない。

文化的に、日本ではここまでしなくても訴えられたりはしない。だが、文化の違いにできないこともある。たとえばトイレの掃除。日本では、多くの男性トイレの掃除を女性スタッフが担当している。インターナショナルホテルチェーンですら、女性スタッフが「失礼します。」と言って入ってくる。私は思わず、「失礼しました。」と言ってトイレから出てしまう。こんな配属は信じがたきことだ。

アメリカならば、「女性ということを無視した配属」ということで訴えられるだろう。実際、私はアメリカの男性トイレに女性スタッフが掃除に入ってくるのを経験したことがない。男性トイレの掃除は男性スタッフが担当するのがアメリカのルールだ。

日本はいつまでセクハラ意識の改革を怠りつづけるつもりなのか。これは日本の文化として通し続けられるものではない。遅れとして見られることだ。せめて、ホテルたるもの、こうした行ないを正して、アメリカ人ゲストに驚かれない体制を作って欲しいとつくづく思う。

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奥谷啓介氏

著者:奥谷 啓介

1960年東京都生まれ。ウエステインスタンフォード&プラザシンガポール、ハイアットリージェンシーサイパン等勤務の後、1994年よりニューヨークのプラザホテルに就職。2005年プラザホテルの閉館に伴い退職。現在はニューヨークにてホテルコンサルタントを、また2023年6月からは長年の夢であった小説家としてデビュー。ホテルマンの経験を活かし多方面で活躍中。

・奥谷 啓介オフィシャルサイト

<著者紹介>

・超一流の働き方

ビートルズ・ケネディ大統領・サウジの大富豪……全世界のVIPらに愛され、マネージャーとして超一流の世界で学んだ世界標準の「サービス」「心の持ち方」「自分の活かし方」「生き方」を公開!

超一流の働き方

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なぜ「お客様は神様です」では一流と呼ばれないのか

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サービスを向上させるにはスタッフを幸せにすることが一番の近道。アメリカの超一流ホテルでの経験から綴る業界改革論。

サービス発展途上国日本 - 「お客様は神様です」の勘違いが、日本を駄目にする

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「プラザ」元マネージャー直伝、一流ホテルで恥をかかない滞在術。この一冊があなたのアメリカ滞在を変える!レジャーはもちろん、ビジネスにも役立つ情報の集積。国際人の責任として、海外に行く前にその国の常識を学ぼう。

海外旅行が変わる ホテルの常識

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世界最高のホテル プラザでの10年間

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