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アメリカの国立公園でシックスセンスを取り戻す
「アマルフィ海岸に惹かれ、習慣的にメールを削除する手をふと止めて、じっくり拝読しました」とのメールを大阪の三田さんからいただきました。有名観光地巡りでは楽しめず「魅力を感じるところに行くからこそ、心が弾むんですよね」という言葉、まさにその通りです。「ここに行きたい!」と思い、楽しみながらアプローチを工夫する。そう、旅をする全ての苦労と快感をモノにしてこそ忘れられない旅になるのです。今回取り上げるのも、そんな極上の魅力がたっぷりつまったデスティネーションです。
大自然へのアプローチは思いきり「俗」な世界から
想像もできないような光景を見たい、そんな思いからはじまった私のアメリカ国立公園巡りの旅。豪快なアドベンチャー気分にひたろうと、ユタ州とアリゾナ州にある国立公園にポイントを絞りました。出発点はラスベガスで決まり。なぜかって?この人工的な俗世界をたっぷり堪能した後で偉大なる大自然の中へ向かうという、そのギャップがなんとも心を踊らせるではありませんか。今回のお供はSUV車。セダンじゃ「気分」が出ませんものね。またしても美女ナビゲーターの登場はお預け・・というのがちと寂しいですが。
ここで私はひとつ失敗をおかしてしまいました。「大自然=何もない」との刷り込みゆえか、水や日用品などをこれでもかと買い込んでしまったのです。ところが行く先行く先の国立公園内にあるジェネラルストアには、充分すぎるほどの物資がちゃんと売られている。しかも都市部より安い!これもアメリカの国立公園法の一端なのでしょう。完璧に自然を保護しつつ訪れる人にも不自由をさせない、か。ふむ。こんな時、アメリカという国を「さすがだナ」と思ってしまいます。そしてバックシートの大荷物、まさしくただの「お荷物」と成り果てたのでした。
ザイオン、ブライスはまだまだ想定内!?
ラスベガスから走ること1時間強、国立公園のひしめくユタ州に入ります。まずはザイオン、そしてブライスキャニオンです。青空を背景にそびえ立つ岩また岩。しかし、ここはまだまだ幕下クラス。すんなり「すごい」と思えてしまうのは、この光景が逆に私の(そして日本人の)想像力の範囲内におさまっているからなのかもしれません。
続いて向かうは、キャピトルリーフ、モアプ。ひたすら車を走らせ、目もくらむような景色に出合っていくうちに、次第に頭の中が空っぽになっていきます。テレビCMでもお馴染みのアーチーズ、モニュメントバレー、カイエンタ、ペイジ、レイクパウエル・・・そしてグランドキャニオンへと。これはなんなんだ!?カメラに収まらないスケール、五感が震える感動。自分はどこにいるのだ!?激しいカルチャーショックを受けているのに、言葉が出てきません。ただボーッと。ボーッと立ち尽くすのみの私。
酸素100%の世界で自然と同化する
グランドキャニオンでは、満天の星空と対話しながら日の出を待ち、太陽が昇りきるまで過ごした時間は実に6時間。自分がヒトという動物に戻ってしまったかのよう。どんどん五感が研ぎ澄まされていくのがわかります。匂い立つ空気、光の演出、目に入る全てのものが私を釘付けにします。イエローストーンでは朝靄の向こうに群れているバッファローの、美しいじゅうたんのような鳥たちの自然の営み、凛とした静寂に空気が振動しながら耳に届くその息遣い、はばたき。圧倒的な自然の姿と対峙することで、身体が原始の力を呼び覚ましたのかもしれません。どんな言葉でも表現できないこの感覚。まさに酸素100%の世界がここにあるのです。脳内から、そして体内の奥深くからわき上がってくるようなリフレッシュ(refresh)、リバイタライズ(revitalize)、リジュヴィネイト(rejuvinate)に満ちた別世界が・・・。
アメリカの国立公園で「自然に還る」という類いまれな喜びを体験したいのなら、どうぞゆっくり時間をかけた旅をしてください。急ぎ足の日程では、そのスケールの大きさを消化できないまま、景観を「見た」だけで終わってしまいます。またアメリカの国立公園は安全で整備も行き届いていますし、大都市を基点としどこからでも行きやすいのが特徴。家族連れで、そしてワイルドな旅なんてしたことがないわ、という女性をたぶらかしても絶対に行く価値があるはずですよ。
ロサンゼルス/「サービス」の真髄ここにあり
その日、私がビバリーヒルズのリージェント ビバリー ウィルシャー(当時の名称。現在は「ビバリー ウィルシャー ビバリーヒルズ ア フォーシーズンズ ホテル」に名前が変わっています)に到着したのはかなり早めの時間。「あいにくとまだお部屋のご用意が整っておりませんので」というフロントスタッフに案内されて、しばしラウンジで待つことになりました。「何かスナックでもお持ちしましょうか?」とたずねられ、少々小腹が空いていると伝えたところ、それ以上の質問をせずにニッコリ笑って下がったウエイトレスが運んできたものは、フィンガーサイズのサンドウイッチ。見たとたん「まさに私が欲しかったのはこれだ!」と感動するくらいの、パーフェクトなチョイス!驚きでした。もちろん味も形もパーフェクト!
しかしもっとすごいと思わされたのは、私がゆっくりサンドウイッチを味わい、新聞を読み終える頃を見計らうように「お部屋の用意ができました」。もしこれが他のホテルだったら、部屋の用意ができた段階で私が食べている途中でも声をかけ、少しでも早く部屋に案内するのが「行き届いたサービス」と考えるのではないでしょうか?「スナックはお部屋に運びます」と言って。それが間違っているわけではありません。が、ゲストが今、何を求めているかをさりげなく観察し、最もよいタイミングを的確に判断するというのは、なかなかできることではありません。アメリカのサービスはとかくビジネスライクになりがちですが、プロフェッショナルでありながらきちんと血の通ったサービスを提供してくれるリージェント ビバリー ウィルシャー。映画「プリティ・ウーマン」の舞台となったことで一躍有名になりましたが、その名声に驕ることなく、ゲストを存分にくつろがせてくれる素晴らしい高級ホテルであります。
ホテルでベストルームを選ぶには
ホテルに泊まるのなら、少しでも気持ちのいい部屋に泊まりたいものです。ビュー(景観)は、中でも大きなポイントとなりますが、どこがベストポジションかというのは、実際に行ってみなければわからないもの。オーシャンビューであっても、テラスの外を人が行き来しているところは落ち着かないし、あまりに高層階すぎて海の迫力が感じられなかったり。オーシャンビュー、高層階一辺倒では損してますよ。シティビューやガーデンビューのほうが、はるかに美しい眺めが楽しめるケースも少なくありません。
満足できる部屋に滞在したいのなら、少し早めにチェックインをして「空いている部屋があったら見せてもらえませんか?」とリクエストしてみましょう。同じカテゴリーでも位置によって印象は異なりますし、差額を払ってでも泊まりたいと思うような素敵な部屋が見つかるかもしれません。与えられた部屋で満足してはいけないのです。ただしごねるのはご法度。あくまでも可能な範囲でスマートに交渉すること。ホテル側には通だと思われつつ、お気に入りのグッドルームを確保する。そんな部屋選び交渉ができれば、チェックイン快感度アップです。