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サービスの距離と温度
さまざまな事始めの春、みなさまはいかがお過ごしでしょうか。わたくし2年ぶりに風邪を引き、冴えない毎日を過ごしていたら、いつの間にか桜が咲いて散っておりました。なんとも間抜けなマダムヨーコでございます。今回の風邪は喉と鼻がやられるやっかいなタイプ。なかなかすっきり回復しないのもいやですわねえ。スコーンと抜けたハワイの青空が恋しいざます!
近場といえばソウル、でしょ?
そんな低空飛行のわたくしですが、旅の予定を立てるとなればセキも鼻水もなんのその。マダムシスターから恒例の「連休は忙しくて休めないから、その後にどこかに行きたいよう!」リクエストを受け、今年もあれこれ考え中。といっても長くて4日間しか休暇が取れない多忙なマイシスター。行き先はおのずと国内か近場のアジアに限られてしまいます。「久々にソウルはいかが?」とたずねると、「う~ん、でも~」と何だか煮え切りません。「大丈夫。キムチやコチュジャン味じゃない食べ物もたくさんあるから!」と先手を打ったのですが、理由はそれだけではない様子。
アツすぎる韓国のサービスに困惑
「実は、あのアグレッシブなサービスが苦手なのよ~」。ああ……それ、よくわかっちゃうなあ……。特に小さなお店やコスメ系。あれこれゆっくり見たいだけなのに、入店直後からスタッフがマンツーマンでロックオン! 何か手に取ろうものなら、背後からすかさず怒濤のセールストークが炸裂。本当はもっと見たいのに、そのアツすぎるご接待に耐えきれず「また来ます~」と撤退することしばしば。「うん、そうそう!」と膝を打つ方も多いのではないかしらん。
最近では適当に放置しておいてくれるお店も増えてきましたが、それでも「とにかく積極的に世話を焼く」のは韓国サービスの基本形。焼き肉も冷麺もはさみでバッチンバッチン切ってくれるし、時にはサンチュで肉を巻いて口まで運んでくれることすら! 相手が寂しく物足りない思いをしないよう、思いつくことを全部してあげようと身を乗り出す、それが韓国のお・も・て・な・し。思い切って身を委ねてしまえば、その優しさと温かさに胸打たれることもあるのですが、他人とはある程度の距離を保とうとする日本人のこと、なかなか上手に甘えられません。「近すぎる」サービスは、どうにも苦手なのでございます。
日本式サービスは世界基準ではありません
その一方で、「いやいや、欧米ブティックの『売って差し上げますわよ』的な雰囲気のほうが苦手だわ~」という方もいらっしゃるかもしれません。せっかく買うと言っているのに、あまりにクールで素っ気ないその態度。思わず気持ちが萎縮して「高飛車!」「見下されてる?」と勘違い&深読みまでしてしまいがち。やっぱり心から楽しめないのでございます。高級ホテルでもそうですわね。丁寧だけど何だか慇懃無礼。きちんとしているのに大切に扱われている感じが薄い……。これもまた日本人の慣れているサービスと、ヨーロッパのサービスの違いが引き起こすモヤモヤかもしれません。
対する日本はというと、黙っていてもかゆいところに手が届き、常にお客様を最優先に考えるエンドレス丁寧サービス。もちろん快適ですし安心ですが、時々「そこまでかしずかなくても……」と思う時があります。これがアブナイんですのよね。自分は何もしなくてもやってもらって当たり前、なのにできないのは責任問題→即クレーム。訴えられた方はますます萎縮し、マニュアル第一主義になり、さらに形式的で柔軟性のない対応に……という悪循環。そんな「お客様至上主義」意識のまま海外に出た日には、そりゃあ困惑したり憤慨したりも当然なのでございます。
サービスする側とされる側は対等です
アツすぎる韓国のサービスもクールな欧米のサービスも、温度は違えど基本は同じ。それはサービスを提供する側とゲストは対等だということでございます。自分がしてあげたいことをどんどんプレゼンしてくるのが韓国サービス。その点、欧米はあくまでも「待ち」の姿勢です。なにせ思考もライフスタイルも多種多様な人々が集まる国では、空気を読むなんてできませんものね。挨拶はもちろん、してほしいこと、したいこと、困っていること、助けて欲しいこと、ゼ~ンブ言葉にして伝えなければ、わかってもらえないんですのよ~(切実!)。
「だって外国語は苦手だし」とか、「黙っていてもサービス業だからやってくれるのが当たり前でしょ」なんて思っていては、あなたはいつまでたっても「何を考えているかわからないゲスト」のまま。何かしてあげたくても、嬉しいのか嬉しくないのか判別不明。それどころか目が合っても挨拶すらしてくれないような存在には、尽くしようも尽くしがいもないではありませんか。まずは自分からアプローチして胸襟を開かなければ、相手も自分を受け入れてくれないのでございます。
「いいゲスト」は自分からなるもの
とはいうものの、ナチュラルでユーモアのある会話はそう簡単にできるものではありません。ですからファーストステップは笑顔と挨拶から。にっこり「ハーイ」「サンキュー」と言われて、イヤな気分になる人はいませんものね。たとえ相手がどんな立場の人であれ、無言・無表情で対するのは絶対にダメダメと、お心得あそばせ! そう、たくさんお金を使うから「いいゲスト」なのではありません。「この人に喜んでもらいたい」と思われてこそ、本当の「いいゲスト」なのでございます。そして自分から「いいゲスト」になろうと努力した時から、いろいろな国のサービスがきっと心から楽しめるようになるはずです。さあ、みなさま、ご一緒に笑顔からはじめましょう。それでは、また来月。Ciao!
ミスターファンのくう様から「ホテルの朝食の時に、他国の女性がどういう恰好で来ているかは私もとても気になっています」「来日中の外国人女性の朝食ファッションをチェックしてレポしてくださると嬉しいです!」とのご要望をいただきました。わたしも機会があると国内外資系ホテルを利用しますが、海外からのゲストは年齢が上がるほど、スマートでエレガントな装いでお出でになりますわね。みなさんとても堂々と振る舞い、ゆっくりお食事を楽しんでいる姿が印象的です。くう様も、きっとそんなマダムのお一人ではないかと推察いたします。これからも旅のお役に立つコラムをお届けできるよう励みますので、ミスターコラム同様、どうぞ辛口サロンもごひいきに!
旅ファッションに関しては、常連姉と二人様からもご意見が。「服装も大事ですけど、それ以上に大事なのは『姿勢』だと思います。すてきな服を着ていても猫背&膝を開けて座っていては台無しですし、ワインを注いでもらうようなレストランで背もたれに寄りかかったままだったり、膝が伸びていなかったり靴をひきずるような歩き方を見ると『きれいな服(靴)なのにもったいない!』と思ってしまいます」。そうです、そうなんです! 先のくう様も、実は姿勢に関して同様のご指摘がありましたのよ。客室ではお好きにくつろいで構わないのですが、第三者がいる場所ではしっかり気取りましょうね、みなさま!
クルーズの女王シェリー様(ふふ)は、北海道の旅で滞在ホテルへのリクエストを敢行。すると「話のわかるスタッフ」が真摯に対応してくれたのだそうです。「いつもマダムヨーコのコラムを読んでいるのが役に立ちました。優雅に振る舞い、しっかり主張すべきところは主張すると良いものが舞い込んで来ます」。まあ~、人ごとながらわたくしもウレシイ。旅も人生も、前向きに真剣に立ち向かっていかれるシェリー様。いつもお便りを拝見して胸躍る思いをしています。これからも共に「ライフ・イズ・ビューティフル」で進んでいきましょう!
「I’m sorry to have kept you waiting.」
「お待たせしました」という意味のフレーズ。タクシーを呼んでもらって待たせた時、レストランやスパの予約に遅れてしまった時などに、ぜひこのひと言を添えましょう。でも、あまりに大幅な遅刻は厳禁ですよ!
天上天下誰もが平等
人種、性別、仕事、役割が異なっても目の前にいる人との間に上下はありません。人を敬う気持ちは必ず自分に返ってきます。