アメリカン・エキスプレス

モダン様式

20世紀前半、「脱・装飾」「機能主義」の流れの中で生まれた、全く新しい様式。

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— 歴史を変えた5人の建築家たち —

この様式に至るまで、建築様式の歴史上、何度も「大いなる変化」があったことを述べてまいりました。そしてここ(20世紀の前半)へ来て、またさらに建築の世界では「コペルニクス的転回」にも擬せられるほどの革命的な変化が発生しています。

この時期、建築界大変化の歴史を彩ったのはほとんど同世代の下記5人の建築家たちでした。世界史の教科書などで目にした名前もあるのではないでしょうか。


(1) アドルフ・ロース Adolf Loos (1870-1933)
(2) オーギュスト・ペレ Auguste Perret (1874-1954)
(3) ワルター・グロピウス Walter Gropius (1883-1969)
(4) ミース・ファン・デル・ローエ Mies Van Der Rohe (1886-1969)
(5) ル・コルビュジェ Le Corbusier (1887-1965)

この章では、この5人の建築家の活躍に焦点を当てながら、この時代の建築が生まれてきた背景をご説明したいと思います。

— 様式が生まれる歴史的背景 —
〜「装飾」から「機能」へ〜

ウィーン/「様式の一切無いのが新しい様式である」(アドルフ・ロース)

ウイーンの王宮前(シュテファン寺院側の正面)に「ロースハウス」という現在は銀行として使われているビルがあります。1〜2階の正面にはムクの蛇紋岩を削り出したようなドリス式(→ギリシャ様式の項参照)の列柱が並んでいるので、気がつきにくいのですが、実はこれ、出来あがった1912年には、ウイーンの街が大騒ぎになった建物であったのです。

今日の私たちの感覚からすると「え、どこがへンなの?」というところだと思いますが、3階から6階の壁面、ただ無地の壁に穴が空いてそこに窓が設けられている状態。これは当時としては“とんでもないこと”であったのです。

ここまで、建築の様式を時系列にしたがって見てこられたあなたなら既におわかりでしょう。それまで、様式の歴史とは、言うなれば装飾方式の歴史であったのです。ウイーンの街は、あの建築家志望であった青年時代のアドルフ・ヒトラーが恋い焦がれたように、各時代の様式建築の宝の山のような街、“屋根の無い博物館”状態でありました(今でもそうです)。

「ロースハウス」は、そんな街の文脈の中に突然現れた、装飾の衣をまとわないストリーカーのような建築であったのです。

この事件の「犯人」(完全に確信犯ですが)が(1) のアドルフ・ロースでした。
古今東西の色々な様式を試し模索を重ねた末に、結局、「機能に無関係な装飾は悪である」と思い至り、「様式(装飾的な要素)の一切無いのが新しい様式である」という“禁じ手”的「裏わざ」にたどり着いたのです。

ロースハウス

完成時には衝撃的だったロースハウス

フランス/鉄筋コンクリートの発明
(オーギュスト・ペレ)

フランスでも「事件」が起こります。1867年、モニエが鉄網で補強したモルタルで特許をとりますが、彼が作ったのは植木鉢。この考え方が「建築に応用できる!」とひらめき、本格的に応用展開して1903年、パリでアパートをつくってしまったのが(2)のオーギュスト・ペレです。

ランシー教会堂

ランシー教会堂(フランス)鉄筋コンクリートの特性を生かした建物。
(オーギュスト・ペレ)

鉄筋コンクリート構造の誕生です。それまでの組積造(石やレンガを積み上げて作る工法)とはまったく違うチャンネルで建築を構成することが可能になります。1922年には早くも名作の誉れ高い鉄筋コンクリートの教会をランシーに完成させています。

ドイツ/シンプルで機能的な、新たな様式の誕生「バウハウス」

ドイツでも大きな胎動がありました。ロースの唱えたような、機能主義(建物の機能に関係ない装飾は設けない)に共鳴するところも多かった(3)ワルター・グロピウスは、ワイマールに、新しい時代に相応しいデザイン教育の拠点をつくります。これがバウハウスです。1919年のことですが、前年、第一次大戦で敗戦国になったはずなのに、この時期、国立の新しいデザイン学校の設立。この国の底力なのでしょうか?

バウハウス

新時代のデザインを体現したバウハウス

バウハウスの校舎そのものが、現代様式、国際様式を体現し、シンプルで機能的なこの新時代のデザインは、交通機関の技術革新とともに、技術信仰・機械信仰や機能信仰に支えられながら驚くほど短時間に世界に波及します。

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— 現代様式の特徴 —
〜 シンクロする思考、「脱装飾、機能主義」へ 〜

「シンクロニシティ」というのは、UKのミュージシャン、スティングの曲でご存知の方も多いと思いますが、共時性、同時発生のこと。虫の知らせ等と訳されることもあり、要は離れた場所で、同じ時間に、似たようなことを想う、体験することをいいます。

この時代、世界の各地で、まるでシンクロニシティのように、いろいろな建築家が思想家が哲学者が、脱装飾、機能主義に想いを馳せています。

アメリカではシカゴが元気でした。あの巨匠フランク・ロイド・ライトの師の1人、「シカゴ派」の中心人物、建築家ルイス・サリバンも「形態は機能に従う」という名文句を残しています。後に登場しますが、ル・コルビュジェの「住宅は住むための機械である」と一脈通じるものです。

この時代の建築は現代様式(モダン)、あるいは国際様式(インターナショナルスタイル)と呼ばれるのと同時に「機能主義の時代」とも呼ばれています。

シカゴ/「壁」で支える建築から、「柱と梁」で支える建築へ 〜 「シカゴフレーム」の誕生〜

19世紀末から20世紀初頭にかけて、シカゴで高層建築が盛んに建てられるようになる時代に確立された工法がありました。すなわち、壁で建物の重さを支えていたそれまでの工法とは異なり、柱と梁という骨組で構成する工法です。発祥の地にちなんで「シカゴフレーム」と呼ばれます。(当時アメリカで、知っているとカッコ良かった)ドイツ語で「ラーメン(RAHMEN)構造」とも呼ばれました。

これ以前の建物は、すべての荷重(屋根の重さ、その階より上の床の重さ、その階よリ上の壁の重さ、そこに収めている設備や家財道具の積載荷重)は、壁が支えて地面に伝えていたのですが、この方式では建物の荷重は梁と柱が支えるので、必ずしも壁で支えなくても良くなります。

※ちなみに、これ以前の壁は「耐力壁<ベアリングウオール>」、これ以後の荷重を支えなくても良くなった壁を「帳壁」<カーテンウオール>と呼びます。

これが建築の工法におけるこの時代の「コペルニクス的転回」です。壁が存在しない建物(日本建築の東屋みたいなもの)があり得るようになります。

スイス/「壁のない建築」を作り 、世界の建築家に影響を与えた「ル・コルビュジェ」

まさにシンクロニシティなのですが、スイス生まれの建築家(5)ル・コルビュジェは、まったく新しい工法として『ドミノシステム』を提唱します。

「シカゴフレーム」と良く似ていますが、コルビュジェのはシカゴ派の「柱梁方式」とは少し違い、鉄筋コンクリートを前提として柱と版(スラブ)とで構成する骨組の提案です。

西洋建築では、重い石の屋根、石の壁をささえるために、壁の厚さは時に1mを超えるようなものも珍しくありませんでした。ですから、それまで重荷を背負ってきた建築の壁が、重さを支える役割から解放されて軽快なものになる・・・というのは「大事件」にちがいありません。

ドミノシステムを基に、コルビュジェは1階に壁の無い建築(ピロティといいます)を作って世界中をあっと言わせます。ピロティのほかにも、屋上庭園や、それまでの石造建築にはあり得なかった「水平連続窓」はじめ、来るべき時代の様式の提案を行い、実作に反映させ、現代の世界中の建築家に影響を及ぼしました。

ドイツ/「Less is more」の思想 「ミース・ファン・デル・ローエ」

最後の1人は、コルビュジェより1歳年上(年齢順だと、記述が前後しますが)、ドイツ生まれの(4)ミース・ファン・デル・ローエ(参考サイトはこちら)です。オフィスビルや集合住宅の設計で知られ、1930〜33年にはバウハウスの校長も勤めます。

「超高層オフィスの父」的な存在で、ガラスの超高層計画、世界中の超高層建築の模範になったマンハッタンのシーグラムビル(1958竣工)等の作品が有名です。

彼の語録「Less is more(装飾的要素を取り払って余計なものを省いた状態は、逆に強い印象・訴求力を持ちうる)」は、国際様式・現代様式を一言で的確に表現したものとして“業界でこれを知らないとモグリ”視されています。

シーグラムビル

シーグラムビル

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— 現代様式の特徴 —
〜 まとめ 〜

この様式の特徴を簡単にまとめると、以下のようになります。

1. 素材のイメージは「鉄とガラス」。ここに集約されるでしょう。とは言っても「鉄」にはアルミやステンレスも含みます。
2. デザイン上の最大の特徴は、機能に関係のない“装飾のための装飾”というものがあり得ないこと。
3. また特定の地域や時代を連想させるような要素も一切ありません。

先に述べたように、壁が重荷を解かれ、他の時代に比べて圧倒的に軽く(物理的にも見た目の上でも)なっているのが、外観上の最大の特徴と言えましょう。

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