アールヌーボーは、商業建築に広く用いられましたので、現在でも少なからぬホテル建築にその様式をとどめています。具体的な応用をご覧いただきましょう。
1968年の冬季五輪記録映画『白い恋人たち』(監督クロード・ルルーシュ、音楽フランシス・レ)の舞台、グルノーブル。その中央駅前に建つ6階建て2ツ星ホテルです。最上階の窓上にアールヌーボー特有の書体でホテル名が描かれ、外壁の細部にもアールヌーボーの植物モチーフが生かされています。
ゲラート山の麓に位置する4ツ星ホテル。ガラス天井の大型温泉プールと、アールヌーボーの内外装で有名です。
ミュシャ美術館にほど近いところにある5ツ星ホテル。創建は1906年で、当時のアールヌーボーの面影をよく保存しています。
グランド ホテル エ デス パルメス
(シシリー島パレルモ/イタリア)
パレルモ空港から約32km、街の中心部にある172室の4ツ星ホテルで、1874年に豪壮な住宅をホテルに改装しています。
1907年に当時のイタリア随一の建築家エルネスト・バジールにより、暖炉のあるロビーラウンジを中心に本格的なアールヌーボースタイルに模様替えされています。かつてワーグナーが宿泊し、曲づくりに有効なインスピレーションを与えられたという逸話が伝えられています。
プラハの中心部バーツラフ広場に面した2ツ星ホテル。この街は、様式建築の動態保存の博物館みたいなところがありますが、アールヌーボー建築も幾つか残っています。これはそんななかの傑出した例です。
[写真左]優雅なエントランス/[写真右]レストラン
ホテルのロゴが典型的なアール・ヌーボースタイル。建物は1907年の建設。1984年に国の文化財に指定されています。