アメリカン・エキスプレス
ミスターMのおいしい旅の話「次の旅はここへ行け!」
Vol.
98

客室にコーヒーセットがない理由

ミスターMのおいしい旅の話 客室にコーヒーセットがない理由

全くなんと言うことか、長年愛用していたバゲージのファスナー部分が修復不能なダメージを受け(いったいどれほど乱暴に扱われたんでしょうね) 、お陀仏に……。急遽購入したリモワとインドネシアに初トラベルと相成ったのですが、今度は帰国の際そのbrand newリモワがミッシング。国内線に乗るはずが、国際線で北京に飛んでいってしまったのですと! 幸いにも無事に中華文字のシールやタッグを付けて中国の旅から帰ってきたのですが、どうやらこのリモワ、相当旅行好きなようです(笑)。

セルフの概念がない高級ホテル

前回のコラムでは、ホテル選びの際のクチコミの読み解き方について触れましたが、クチコミと言えばよく目にするのが「高級ホテルなのに客室にコーヒーセットすらなくてガッカリ」といった内容の投稿です。これはビジネスホテルや温泉宿など、これでもかとアメニティ類が用意されている国内文化に慣れている人に特有なクレームのような気がします。しかし、こと海外ホテルに関して言えば、これぞ「勘違い!」の筆頭項目。もしホテルにクレームとしてあげたら、失笑されるでありましょうな。

ちょっと使いたいのに、部屋にない。実に合理的でない、不便なサービスではあるのですが、コーヒーセットが置いてないのは、そこが高級ホテルだからに他なりません。繰り返しになりますが、高級ホテルはそもそも貴族の旅先における別宅というコンセプトが根底にあり、ゲストはイコールご主人様というわけです。わざわざ自分の手を煩わすことはしないし、させてもらえません。

コーヒーが飲みたければ、召使いであるバトラーやルームサービスに申し付けるのであります。これが高級ホテルのマナーでありルールなのです。部屋にコーヒーセットをあらかじめ用意しておいて、自分で入れて飲んでもらうというような、いわゆる「セルフ」な世界とは一線を期しているのですね。

冷蔵庫がないのも高級ホテルだから!?

同じく「部屋に冷蔵庫がない!」。あっても小さいし、ギッシリ飲み物が詰まっていて自分の物が入れられない……という状態も高級ホテルだからこそ。こういうところでは持ち込みなど「想定外」なのです。冷蔵庫がない客室では、コーヒーと同じように冷たい飲み物もオーダーして運んできてもらうのがスタンダード。

もし冷蔵や冷凍が必要な物を買ったら、やはりバトラーかメイドに預けて保管をお願いする。サービスを受ける側、即ちゲストはそういうことが普通にできなくてはなりません。また、たとえ冷蔵庫があったとしても、その役割はあくまでもミニバーです。中味を出して自分の買ってきた物を入れておく、というのは本来あまり褒められた行為ではないのです。かくも高級ホテル、ラグジュリーライフとはやたら面倒なんですなぁ(笑)。

また、こうして中身を出し入れすることでチェックの行き違いが発生し、利用していないミニバー請求をされることもあります。もちろん飲んでない物にお金を払う必要はありませんが、誤解を招くような行為をしたことも確かですから、支払い問題が発生した際には謙虚かつ冷静に対応したいものです。

チッピングは旅行力のレバレッジ

どうですか、何でもかんでもいちいちオーダーするのは面倒くさいし、チップも煩わしい。高級ホテルなんて窮屈なだけじゃないか……と思ってしまいましたか? う~む、その思考こそが いつまでもチッピングが上達しない所以ではないでしょうかねえ。

面倒でも窮屈でも、「そういうもの」と割り切って「サービスを受ける」経験をしてこそ、非日常な高級ホテルの楽しさや快適さが実感できるのだと思いますな。だとしたらチップなど安いものじゃないですか。だって、悩むのはせいぜい数ドルレベルの話でしょう? 深刻に考えるほどの金額ではないではありませんか。

高級ホテルでは背伸びをすればいいのです。自分でお金を使って知らなかった異次元のサービスを体験してみる。そこで初めて「ああ、そういうことか」と発見があるのです。未知なる世界に尻込みして不便な窮屈な気持ちのままステイするなんてもったいないし、本来サービスをするために控えているスタッフがするべき事柄までしてしまうと、ある意味迷惑行為ですしね。頭を柔らか~くして、つかの間のラグジュリーライフをエンジョイしてください。

そう、高級ホテルとはチップにしろお金にしろ、どうしても使わなければいけないシーンが必ずある場所です。だからこそ躊躇するならまず払う。その上で楽しむ。その経験を素直に受けとめ繰り返していけば、絶対にあなたの旅行力はレベルアップし、クォリティライフの糧になるんじゃないでしょうか。

背伸びして初めてわかるチップの本質

みなさんのチップに関する悩みを聴いていると、いつまでたっても「チップは義務じゃないから」とか「地元の人は払わないと言うから」など、自分に都合のいい言い分の方に耳を傾けて、できる限りチップを払わずにすまそうとする人がなかなか減らないんですなあ。そんな行為が「日本人はケチ」イメージを植え付けることにつながって、コンシェルジュはもちろん、レセプショニストやハウスメイドにも通り一遍の応対しかしてもらえないのです。

チップにマニュアルはありません。たとえばプレミアのついたオペラのチケットをコンシェルジュに取ってもらったら、どうしますか? そのコンサートが自分にとって大切であればあるほど、自然にチップも弾みますよね。500ドルのチケットだから20ドルとか、そういう決まりも目安もないのです。

「気前がいい人」より「気持ちいい人」

ちなみに東南アジアでは、持てる者はあまり値切る行為をしません。そして、どんな些細なサービスに対してもちょっとした心付けを渡します。我々は経済大国ニッポンの日本人なのです。世界の人たちは、私たちをそういう眼で見ていると自覚してください。旅行とは社会貢献であり、経済貢献活動でもあるのです。

旅先でサービスを受け、良い気持ちにさせてもらったら、キモチ良く心付けを振舞いましょう。日本人は気前がいい、と言われるよりも、気持ちがいい人たちだと思われたいじゃないですか。感謝の気持ちを伝えるチップ、心の琴線に触れるチップ、これこそがオモテナシの国、日本人らしい「心付け」のチップなのだと思うのであります。

花鳥風月

私のホテル選び

マダムに「ミスターは、ホテルは毎回同じところに泊まる一途派ですか、それとも違うところに泊まる浮気派ですか?」とたずねられました。私は同じ都市を訪ねる場合、ほぼ毎回違うホテルを選ぶ超浮気派です、と言うか仕事柄選ばざるを得ません。いろいろ個性の違うところを泊まり比べて、見る眼や感性を磨くようにしています。

定宿にするかどうかのポイントは、先ず客室などのハード(快適な滞在ができるように、目配りの効いたメンテナンスがされていること)、そしてホスピタリティ。私の言うホスピタリティとは、マネジメントであり、ホテリエのハートです。従業員が楽しく働いているか、宿泊している誰もがゲストとして大切にされていると感じられる暖かな空気感。そこが私のホームスイートホテルですね。

レギュラーゲスト、常連になると、客室がアップグレードされるなど、いろいろ嬉しいプラスアルファもあります。自分から何か求めなくても、ホテルサイドからあれこれオファーしてくれるようになれば、あなたは大切なグッドゲストとして扱われていると考えていいでしょう。また自分が大切にされているゲストであることを、スタッフの対応や言動の端々から読み取る感性も重要です。まあ、そのためにはかなりの経験が必要ですが、いろいろなホテルに泊まることで、学習の場も広がるはずです。ボンボヤージュ&グッドラック!

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