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ロストバゲージはこうして防げ!
みなさん、ごぶさたしておりました。コートもいらないくらいのポカポカ陽気だったベルリンから帰国すると、日本は真冬並みの寒さだというじゃありませんか。そうでなくとも時差ボケ解消までの道のりが長くなりつつある昨今。眠れないわ、疲れは取れないわ、体のあちこちは痛いわ……(苦笑)。フリークエントフライヤーのご同輩諸氏も、体調管理にはさぞかしご苦労なさっていることでしょう。
チャンギでついにロストバゲージの洗礼!?
長距離移動がどれほど便利になろうとも体調管理は永遠の課題。ですが、同じようについて回ってくるのがロストバゲージのトラブルですね(笑)。一昔前には、ゼロハリはミッシングにならないという伝説がありました。大変高価であったのと、世界を飛び回る旅慣れたビジネスマン御用達の品ゆえというのがその背景。私もゼロハリは20年以上人生を共にした大切な相棒でしたし、確かに一度もトラブルには出逢わず。伝説はホントなんだナ~と思っていたものでした。ところが! ついに人ごとではなくなる時がやってきたのです。
大雪でてんやわんやだった前回の旅、LCCで到着したシンガポールはチャンギ空港にて、最後の荷物が出てきてカタンとカルーセルが停止するのを見届けた私。かつて手土産がドロンしてしまった経験はあるものの、自分のバゲージが出てこないのは、長年の旅人生でも初めてのことでした。まあ、これだけ飛んでいるのですから確率的に考えてもいつかは、と覚悟はしていたのですよ。
してたのですが……そっかあ、ついにお呼びがかかったか (笑)。こりゃ面倒だワイと手続きカウンターに向かうと、すでに先客あり。空気はちょっと深刻。チラチラ聞こえてくる話によると、彼はアメリカのビジネスマン。スーツケースを破壊されて(!)貴重品を盗まれ、さらに収納していたウイスキーも割られたのか内部はメチャメチャだと……。
神のみぞ知るタイミングでバゲージ発見!
ズタ袋に放り込まれた「残骸」を前に、なすすべもなくガックリと肩を落として座り込んでいる彼を見ていたら、あまりにもかわいそうすぎて「こ、この程度でロストなどとクレームしては申し訳ない」的な気分になる私……(笑)。慰めの言葉もかけられないまま2時間後、彼を刺激しないようにそっと手続きを終えてロビーに出ようとすると、同じレーンがカタコト稼動しはじめて別便のバゲージが出てきました。何の気なしに目を向けたところ、お、おやっ!? 私のバゲージがベルトに乗ってのんびり登場してくるじゃないですか!? 信じられない!
そりゃそうです。30分以上にわたる調査の結果は「出発地デンパサールで積み忘れ」だったんですからね。その時は呆然としながらもピックアップしてカウンターに戻り、書類手続きをして「サンキュー、バーイ!」と相成りましたが、考えれば不手際はチャンギ到着後ってことですよね。でもスタッフは自らが機材まで足を運んで確認し、積み忘れと結論を出したのです。
もし私が気がつかなければバゲージは関係ないレーンで回り続け、その後どうなったことか。こうなると不運なビジネスマン氏、煩雑な手続き、レーンの位置、すべてが私をバゲージ発見のタイミングへと導いていたような気がしてくるのです。う~ん、偶然ってオソロシイ。
リスク&ダメージ回避はパッキングから
今回は大事に至らずに済みましたが、ビジネストリップの多い私にとってロストバゲージは大問題であります。「でも、ロストバゲージは自分じゃどうしようもないことでしょ」ですって? 確かにその通り。でも、少しでもそのリスクを減らすためにできることはあるのです。パッキングから順を追って解説していきましょう。
預け荷物には大切なものは入れない。まずこれが大前提です。スマートデバイスはもちろん、カメラ、充電器、ジュエリーや高価なアクセサリー、また個人的に紛失して困るモノは、必ず携帯して機内持ち込みにすべし。また、これほどクレジットカードが普及しているにもかかわらず、いまだに現金をバゲージに入れてしまう人が結構いるようです。9.11以降グローバル規格となったTSAロックにより、セキュリティならば誰でも解錠はできる時代になっております。それに、窃盗のプロは“ニオイ”でわかるといいますから、いくら施錠したところで安心とは言えませんゾ。
異素材のネームタグ2つを基本アイテムに
パッキングが終わったら、バゲージをもう一度チェックします。ネームタグはどうしていますか? 私は必ず丈夫なレザーと強化ビニール製(US.Department of Homeland Securityのもの)の2つをつけています。1つは万が一の際の保険ですね。なにしろ機材積み下ろし作業におけるバゲージの扱いのテイネイさはハンパじゃないので、破損しやすいプラスチックやヤワな素材のモノ、それも1つきりでは十分とは言えません。
時々バゲージにステッカーで名前を貼付している人がいますが、あれは偽ポーターのカモになりやすいので避けた方が無難です。ホルダーなら、ぱっと見てすぐに名前がわかることはないですからね。複数ホルダーがイヤな人は、バゲージ本体に自分なりのマークやイラストを大きくペイントしておくのもいいでしょう。ベルトやバンダナは輸送途中で外れることもありますし、個体識別アイテムとしてもあまり有効ではありません。ゆえにネームタグかホルダーは、識別のためにも必須アイテムといえるのです。
スーツケースの特徴を英語で把握する
さあ、オリジナルの目印はつきましたね。では次に目を閉じて、あなたのバゲージの特徴を「英語で」言ってみてください。大きさ(具体的な縦・横・厚みサイズか容量をリットルかで)、ブランド、色、素材、デザイン、外観の特徴、どんな目印がついているか等々。空港で取り扱われるロストバゲージは膨大な数。その中からたったひとつを見つけ出してもらうのですから、データは詳細であればあるに越したことはありません。
外国語が不安な人は、不測の事態に備えて特徴をメモっておく、さらにバゲージの写真を撮ってスマホやデジカメなどに保存しておくと安心でしょう。また、バゲージ確保時の手続きにそなえ滞在ホテルの正式名称、住所、電話番号などが必要となりますので、こちらの用意もお忘れなく。
乗り継ぎはピックアップ&再チェックイン
いよいよ空港でチェックインです。私は乗り継ぎのある場合、通常スルーバゲージ扱いとなるONTO予約であっても、必ず経由地で荷物をピックアップ&再チェックインするようにしています。というもの、荷物が消える最大のリスキーポイントがカーゴ積み替え時だからです。乗り継ぎの場合はトランジットタイムを2時間以上見ておくのが原則ですから、各種手続きは余裕でできるはず。特にシャルル・ドゴールやヒースロー、JFKなどの大規模国際空港は、構造が複雑なためトラブルも多発する要注意スポットです。
こうした空港を経由する時は、面倒でもピックアップ&再チェックインをすればコネクティングフライトでミッシングの確立は大幅ダウンとなるでしょう。トランスファーデスクでボーディングパスをもらう際にも、バゲージタグを提示し乗継便のシステムに再登録してもらう事をお忘れなく。どこでもマストな手続きながら、これを端折るテキトウなスタッフもいるのでご注意を。
カウンターから立ち去る前にすべきこと
空港のカウンターでバゲージを預けたら、ここからが最後のチェック。搭乗券をもらってもその場をすぐに離れず、預け荷物にきちんとタグがついているか、荷物が2個以上あるならどのタグがどの荷物につけられたのか(番号まで確認する)、またプライオリティタグの類もちゃんとついているかまで、しっかり目で確認してから立ち去りましょう。フリークエントフライヤーなら、空港のスリーレターや便名が正しいかどうかもチェックしたいものですな。
さあ、これで自分のスーツケースは無事旅立ちました。 あとは最終到着地での再会を待つだけです。しかし「絶対」はありません。いかに最新の空港であっても、どれほど優秀な航空会社であっても、ロストバゲージは起きる時には起きるんです(笑)。万全を期するのと同様、いざという時に慌てず騒がず冷静に対処に当たり、善後策を講じてダメージを最小限に抑える。そこまでできてこそ真のハイパートラベラー。どうぞ、自分の大切な「相棒」を守るための手間を惜しまないでください。
サヌールはヨーロッパ人が心酔する「懐かしい」バリ
APECもつつがなく終了しバリの開発も一段落……と思いきや、まだまだラッシュ状態のよう。ところが、オーストラリアに続いて長年第2位だった日本人バリ来訪者は中国、マレーシアに抜かれて第4位に転落してしまいました。JALの直行便が廃止されたことが大きいのでしょうが、急激な開発によるバリらしさの喪失も、リピーターの伸び悩みにつながっているのではないかと思います。
確かにレギャン以西のリゾートの乱立は「どうかしてるんじゃないか」レベルですし、交通渋滞もなかなか緩和されません。でも私はあえて訴えたい。だからこそバリへ、サヌールへ行って欲しいと。マダムとの対談でも言いましたが、大地主が開発をコントロールしているサヌールは、懐かしいバリのリゾートムードがしっかり残っています。
その象徴とも言える存在が、1967年開業のセガラ ビレッジです。さすがに年季は入っていますが、コテージもバンガローも改装済みで清潔ですし、使い勝手も悪くありません。昔からヨーロピアンには絶大な人気を誇っており、それもまた独特の空気を醸し出しているのです。似たような今風リゾートが増殖しているバリにあって、古き良き時代を感じさせるセガラ ビレッジ。バリに行くのは久しぶりという人には特におすすめです。