アメリカン・エキスプレス
ミスターMのおいしい旅の話「次の旅はここへ行け!」
Vol.
82

ダナンでベトナム再発見

ミスターMのおいしい旅の話 ダナンでベトナム再発見

みなさん、ご無沙汰しておりました。マダムヨーコにピンチヒッターをお願いしていた間、私がどうしていたのかといえば、開発の続くドバイで絢爛豪華なホテルやショッピングモールにアゼンとしたり、香港ではかのペニンシュラホテルで昔と変わらぬトラディッショナルなブレックファストを満喫したり……ん!? いや、それはそれは忙しかったのですゾ!(汗)。今回は、そんな慌ただしい日々の中で、私の心をほっと安らげてくれた、とっておきのリゾート のお話をいたしましょう。

知名度はまだまだだけど……

その舞台はベトナム中部。ベトナム最後の王朝、阮朝(1802~1945年)の都であり、古くから東西交易の中継地として繁栄したフエ、現在は中部最大の商・産業都市であるダナン、そして16~17世紀に阮朝の交易の中心地として栄え、 今なお色濃くノスタルジア漂うホイアンであります。ダナンはベトナム戦争の際はアジア最大の米軍基地が建設されたことでも知られていますが、同じ中部にあるフエやホイアンに比べると、観光的な知名度はまだまだ。五行山や世界遺産のミーソン遺跡は郊外にあるので、フエ、ホイアン訪問のついでに駆け足で通り過ぎて行く団体客が大半。日本人の姿もほとんど見かけません。

ところが、です。町の南のノンヌォックビーチに滞在していた私は、いつの間にか、すっかりその魅力にとらわれてしまったのです。まずは何と言っても、その居心地のよさ。手つかずの美しく静かなビーチ、時期的なものもあるでしょうが、暑すぎず乾燥しすぎずのちょうどいい気候。ひたすらリラックスして過ごす大人のバカンスには、まさに最高のシチュエーション。移動続きでクタクタの心身を癒やすのに、ドンピシャの場所だったのであります。

ベトナムのイメージを変える町

ベトナムというと、誰もが真っ先に浮かぶイメージはホーチミンだったりハノイだったりするわけですが、ダナンを中心とする中部は全くの別世界、もう一つのベトナムといっても過言ではありません。バイクの群走に象徴される、あの混沌とした空気とは無縁ですし、キャピキャピ感というか、目端の利いた商売っ気みたいなものもなし。地元の人々はひたすらおっとりしているし、町並みにも不思議な情緒が漂っています。さらに驚くのは、これら中部地区は、観光地であるフエやホイアンでさえも、まるで古き良き時代のまま取り残されたかのように、びっくりするほど物価が安いのです。たとえばハイネケンやサンミゲルの中瓶が、3万ドン≒150円!(ハッピーアワーなら、さらにその半額!)。地ビールのドラフト大ジョッキが14000ドン≒70円。一度はトライすべきホイアン名物、日本人が伝えたとも言われる汁なし麺カオラウは、そこそこの店で食べても 50~70円ほどと、ひょっとして10ドル札だけで1日過ごせてしまうのではと思うくらい。私なぞ、滞在中にいまだかつてないほどビールを飲みましたねえ (笑)。いろいろな意味で、あんなに美味しいビールは久しぶりだったような気がします。

ダナンのビーチリゾート

じっくり観るのならば、もちろんそれぞれの都市に1~2泊するのがベストですが、忙しく動かないで中部地区の滞在を楽しむにはどこを拠点するのがスマートか。やはり、ダナンの市街地から車で10分ほどに展開するノンヌォックビーチエリアがダントツです。各リゾートは広大な敷地を有し、ヴィラや低層建ての広々とした客室などバラエティ豊富。予算とお好みでチョイスできます。たとえローカルチェーンと言えどもクオリティ、サービスはインターナショナルスタンダードに近く、デザインなども洗練されているので、安心してリゾート気分に浸ることができますゾ。

ダナンで最も有名なのは、1997年開業、2009年には皇太子殿下も訪問されたフラマリゾートでしょうか。他にもビーチエリアにはハイアット、クラウンプラザ、ヴィンパール ラグジュアリー、フュージョンマイア、プルマンといった、選ぶのに悩みそうな高級リゾートが軒を連ねています。もっとお忍び感&エクスクルーシブ感を求めるなら、あのリーディングホテルズ傘下、全ヴィラ専属バトラー付きのザ ナムハイ(ホイアンとの間に位置)なども、ぜひ検討リストに挙げておいてください。他にもフエのラ レジデンスなど、小規模型ホテルが多いベトナムの中でも、きら星のような存在がいくつもありますよ。

ダナンからホイアンへ日帰り散策

「何もしない」、これこそ究極のリゾートライフであります。現在のノンヌォックビーチリゾートはその理想的なデスティネーションなのですが、「そうはいって も、やっぱり飽きそう……」という人もきっといるはず(笑)。ならば滞在中にホイアンにはぜひ足を運んでください。ノンヌォックビーチから車で約30 分。これまた風情ある世界遺産の街です。歴史的建造物や博物館、昔ながらの手仕事の店、庶民の熱気と躍動感あふれる市場と、1日ゆっくりのんびり散策するにはもってこいです。

番外。ちなみに私はホイアンで谷 弥次郎兵衛の墓を訪ねました。弥次郎兵衛は豊臣秀吉時代に朱印船貿易でベトナムに渡った堺商人の一人。徳川時代になり幕府の鎖国政策、貿易禁止令により一旦は帰国したものの、ホイアンに残した恋人の元に戻ろうとして客死してしまった人物なのだとか。1647年に建てられた墓は郊外の田んぼの中にぽつんとあり、今でも地元の人々が大切に墓守をしてくれています。中世の勇気ある堺商人のロマンに触れ、線香を手向けてお参りしていたら近所の農民が集まってきて、ちょっとビックリ。しかし日本に対して親しみを持ってくれているのですね。感謝感謝。ありがたいことです。

帰りはスローボートで

こうしてホイアンのひとときを楽しんだ私は、川沿いの小さなカフェでカオラウを食べ、ビールでリラックス。するとボートの船頭さんが、乗って行けと勧誘してきました。宿泊していたリバーサイドホテルまでは車で10分ほどの距離ですから、さほどかからないだろうと値切り交渉の末、古びたボートに搭乗。酔い覚ましがてら水上からの光景を楽しみ、心地よい風に吹かれての、のんびり道中。ところがホテル近くに到着したのは、のんびりにも程がある2時間半後! ま、こんなunexpectedな経験も滅多にできないので、いい思い出になりました(苦笑)。

成熟したリゾートへの成長途上にあるダナンは、至れり尽くせりのアクティビティやアトラクションが用意されていない分、時間を効率的に使おうとする強迫観念から解放され、心底リラックスできる場所です。そして、中国人海外旅行者が爆発する昨今、こんな「別世界のベトナム」が存在できるのは、 そう長くはないかもしれません。行くならいつ? 今でしょ!(笑) いやホントに知名度アップする前の今が旬かも。もう一つのベトナムの世界、きっと気に入ると思いますよ。

花鳥風月

花鳥風月/ベトナム中部でゴルフをするなら

東南アジアのゴルフと小耳に挟めば、「で、コースはどうなの?」と聞かずにおれないのがゴルファーというもの。ベトナム中部には3つのゴルフコースがあり、一番新しいのが2012年11月オープンのラグーナ・ランコー・ゴルフクラブです。設計はサー・ニック・ファルド。かのバンヤンツリーが運営するリゾートコンプレックスにあります。

あと2つはダナン郊外ノンヌォックビーチ近く。グレッグ・ノーマン設計のダナン・ゴルフクラブと、コリン・モンゴメリーが手がけたモンゴメリー・リンクス・ゴルフクラブ。3つとも全てリンクスタイプで、景観は素晴らしいけれど、なかなかチャレンジングなコースです。世界中のホットアイが注目しているので行く価値もやりがいもあるのですが、それにしてもちょっとお値段が……。ビールの値段とあまりにかけ離れた世界(笑)。ゴルフがまだまだセレブなスポーツの、現在のベトナムならではのセレブリティゴルフを満喫してみてみます?

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