ようやくホテルに着いたら、「オーバーブックのため、お部屋がありません」。ちゃんと予約したはずなのに。バウチャーも持っているのに!でも慌てるのはちょっと待って。オーバーブックも仕組みを知れば、それほどコワイも のではありません。むしろ予定より高級なホテルに泊まれるチャンス!と楽しんでしまう余裕を持ってください。
- オーバーブックはなぜ起きる?
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そもそもホテルは、「部屋数よりも多い数の予約」を受けています。
というのも、ホテルの予約状況は、利用者のさまざまな変更(宿泊日の更、部屋数の変更、急なキャンセルなど)により、日々めまぐるしく変わっています。ホテルというのは常に満室(=完売)を目指しているわけで、このため ホテルは過去の経験・データをもとに、ある程度のキャンセルが出ることを見込んだ上で、部屋数よりも多い数の予約を受け付けるのが普通なのです(これは航空会社も同じです)。
そして毎日、その日のキャンセル数や、急に予約してくる人の数などを想定しつつ、最終的に数が合うように調整しています。ここで見込み違いが起こった時に起こるのがオーバーブック。「予約は取れているのに部屋がない」と いう事態です。
また天候など外的な要因も、オーバーブックの原因のひとつです。悪天候などで航空機が運行キャンセル、または大幅遅延した場合、その日チェックアウトするはずのゲストが急にチェックアウトしなくなり、結果として部屋が足 りなくなる、という状況が発生します。こういった場合、宿泊客が優先になるか、予約客優先かはホテルのポリシー次第。もし前者の場合は、予約客がはじき出される形になってしまいます。
なお、オーバーブックはホテル側の勝手な都合のように受け取られがちですが、これは世界一般的に、ホテル側の免責事項となっていることも覚えておきましょう。
- オーバーブック回避初歩の初歩
- オーバーブックに遭遇しないためには、とにかく早めにチェックインすることです。また、18:00以降に到着しそうな場合は、必ず一本電話を入れましょう。服装も気をつけたいところです。チェックインの時は、なるべくきちんと した服装をしていた方が上客と見られ、扱いも自ずと違ってくるものなのです。
- オーバーブックと言われたら
- それでもオーバーブック扱いになってしまった時は、たいていの場合ホテル側が、すぐ近くのホテルか同等クラスのホテル、またはよりランクの高いホテルの部屋を手配してくれます。これを「トランスファー」または「リロケー ション」といいます。オーバーブックが起こっても、即、路頭に迷うということではありませんから安心してください。まずは状況を把握してホテル側の説明を確認してください。
- ワンランク上の交渉術
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フロントスタッフであれば、誰もオーバーブックなどしたいはずがありません。彼らも人間。申し訳ない顔をしていても「たまたまその時シフトについていただけ。自分達も被害者だ」くらいに思っています。そんな相手にいきなり怒鳴ったりしては、よほどのVIPでない限りロクな扱いを受けません。こういうシチュエーションでのポイントは、いかにホテルマンが「このお客様を大切にしたい!」と思うようなゲストになるかということ。つまりあなたの交渉力なのです。
■ステップ1:コミュニケーションの確立
まず、余裕があればオーバーブックの原因、状況などをたずねます。そして本当に1室も残室がないのか、スイートまでもソールドアウト(売り切れ)なのかを確かめます。
■ステップ2:自己主張
次に自分がこのホテルに宿泊することをどんなに楽しみにしていたか、ここに泊まれないことで、ビジネス的にいかに不自由するかなどを伝えます。実はスイートに空きがあり、あなたの与える印象(きちんとした身だしなみ、やたら怒ったりしない理性的なクレーム態度など)がよければ、スイートがオファーされる可能性もあるのです。
■ステップ3:交渉開始
それでも、どうしても残室なしと言われたら、気持ちを切り替えて「トランスファーされるホテルはリクエストできますか?」と切り出します。ホテルには状況によりいろいろな考え(料金、協力関係にあるホテルネットワーク、ビジネス的思惑等々)があるので、一方的なクレームを続けていてもラチが開かないだけでなく、交渉姿勢としてもスマートではありません。落ち着いて状況を聞いてから「もしできれば・・・」という姿勢で次善策を提案する。こうした謙虚さが、希望をかなえてあげたいという気持ちを相手に起こさせるものなのです。
■ステップ4:交渉詰め
同時に、本来ならば必要でなかったはずの交通費、通信費などの交渉を一気に行います。場合によっては「もう1度来ていただけるならば」と、次回の招待(無料宿泊)があったりします。
■ステップ5:クロージング
希望がかなったら、担当スタッフに(そんなサービス当たり前などと思わずに!)礼を尽くし労をねぎらうことを忘れずに。しかし、客を客とも思わない失礼千万な対応であったなら、然るべき代替えサービスを徹底的に要求しましょう。こんな時に泣き寝入りしてはいけません。ここでのポイントも、感情的に怒鳴ったりするのではなく、静かな、しかし毅然とした態度で、言うべきことはしっかり言う、ということです。
そして、最終的に納得がいったら笑顔で別れたいもの。不平不満で残りの滞在を台無しにするのは残念すぎますからね。