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どうする? これからのシニア親子旅:滞在編
みなさま、ごきげんよう。シニア世代の子供がさらに高齢の親と出かける海外旅行について、たくさんのお便りをありがとうございます。今回は後編として、現地に滞在する際の心得や、互いに禍根を残さない時間を過ごすためのヒントなどをご紹介いたします。引き続きお話しいただくのは、長年、試行錯誤しながら「ベストなシニア親子旅」を追求しているマダムJ。では、よろしくお願いいたします。
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ロングステイで「暮らし」を楽しむ
80代の母はじっとしているのが苦手なタチ。海外旅行もリゾートでのんびりというよりは、自由気ままに街を歩いて、市場やスーパーをのぞいたり、地元の食材で料理を楽しんだりする生活型の滞在を好みます。そこで、治安がよく、地理が把握しやすく、ごく一般的な暮らしが楽しめる場所ということで、ヨーロッパの中小都市に滞在することが多いですね。
日数はだいたい2週間ほど。「1週間じゃ、現地に慣れた頃に帰国になってしまうからつまらない」との仰せに従い(笑)、可能な限りロングステイできるように調節しています。また短期滞在では、どうしてもスケジュールがタイトになりがち。世話をする私にとっても、時間にゆとりがある長丁場の方がかえって気楽なんです。リタイアメント組や自営業はこういう時便利ですね。現役の会社勤めだったら、まず、お休みを取るのでひと苦労ですから。
滞在拠点選びの基準はキッチンと部屋数
ホテルは基本的にフルキッチン付きのアパートメントタイプを選びます。海外滞在で何がいちばんつらいといって、食生活が変わることほど体にこたえることはありません。キッチンがあれば各自好きなものをつくれるし、食事のためにわざわざ外出する必要もないですしね。ちなみに母が必ず持って行くのは「のり」。あとは分担して持参します。うどん、そば、そうめん、いちおう米。麺類は必須ですが、めんつゆと七味があれば現地のものでも何とかなります(笑)。えっ!? 肉のエキスが入っている調味料は持ち込み不可のところがあるんですか? 知らなかった……これから気をつけなくちゃ。
フルキッチンの有無の他、アパート選びの基準になるのがベッドルーム数です。母、妹、私たち夫婦、友人など、同行する全員にプライベートスペースが割り振れる物件が理想ですが、それが無理な場合でも母には必ず1部屋渡します。これは母の希望ですから、他の人はリビングをカーテンで仕切っただけの“部屋”になろうとも、何とかやりくりしますよ。
またアパートの立地も重要です。中心部から徒歩あるいはバスや電車1本でアクセス可能かどうか、周辺は安全かなど。途中で「こりゃダメだわ」とならないよう、不明点はオーナーにメールで質問するなど、とにかく念入りにチェックします。もちろん料金にもこだわりたいけれど、部屋数や立地条件を優先していくと、安く抑えるのは難しいですね。ロングステイということで、とりあえず料金交渉はしてみますが、時には普通のホテルに泊まるより高額になることもあります。
トラブル時のリスクが高いアパート滞在
長期滞在拠点としてアパートタイプは便利なことばかりですが、カギの受け渡しだけは面倒ですね~。特に深夜到着・早朝出発の際は、その段取りだけでも大変。また滞在中に部屋のドアが開かないとか、洗濯機が動かない、電気がつかなくなったといった生活に直結するトラブルが起きた時、オーナーに電話しても、相手も仕事中だったり、離れた場所に住んでいたりして、すぐに対応してもらえない場合が多いんです。何より、電話で外国語で状況を的確に伝えるのが難しいじゃないですか。機械類のマニュアルが外国語でも読めるとか、日常会話程度の英語は話せるとか、解決のためにはある程度の適応力が必要ですね。
「年寄り半日仕事」を日々のモットーに
母連れ旅行での私のモットーは「年寄り半日仕事」。必ずどうなってもいいような予備日を設定しておくんです。自分だけなら空港に着いて、すぐ目的地に移動するけれど、母がいる時はあえて空港の近くで1泊するとか……。母の体力を考慮しての判断ですが、飛行機のビジネスクラス同様、移動に関してはお金を惜しまず、無理をさせず。空港からアパートへの移動も、近距離でやや割高になったとしても必ずタクシーに乗ります。長期滞在なので荷物が多いし、手間と時間と体の負担を考えれば、安いからと公共交通機関を使うほうが、いろいろ不安なんですよ。もったいないと思わずに時間とお金を使うようにしています。
携帯電話、防犯ブザー、タブレット端末は必需品
滞在中は各人がそれぞれ好きなことをして、したいように暮らしています。むろん母1人で動くのが難しいようならアレンジしますし、喜んで同伴もしますが、基本は別行動です。その分、むかつくこともありますよ(笑)。とにかく、どこに行っているのかわからないのが心配。だから電話と防犯ブザーは、忘れずに身につけていてもらいます。電話は海外用の携帯をまとめて買ってあります。プリペイドではなく、現地で使った分だけ請求が来るシステム。日本にいる時は使わないから料金はかかりません。ローマ字ですがショートメールもよく使います。
実は、我が家は全員が未だにガラケー派。去年ようやくタブレット端末を購入したところなんです。大都会ならネットカフェに行けばいいし、ホテルならビジネスセンターやコンシェルジュが助けてくれるけれど、小さな町で、ましてや個人アパートともなると、現地での各種予約やリコンファーム、情報収集は自力でするしかありません。タブレットが1台あるだけで利便性が飛躍的に高まりましたね。とはいっても家族で持っているのが私だけなので、互いの連絡は相変わらずガラケー頼りですけれど(笑)。
マイペースに見えても各人がしっかり自己管理
自由人の母にとっては、自分で動くことこそが重要なコミュニケーション手段なんです。何でも面倒を見てくれるツアーがいいという人もいるでしょうが、そんな殊勝なタイプじゃない(笑)。事前学習もせず、崇高なことなど考えず、一人でブラブラして町の雰囲気を楽しみたい。だから絶対に自分でカギを持っていたいと言いますね。誰かと共有では気が向いた時に外出できないし、体力的につらくなった時に、すぐアパートに帰ることもできないというのがその理由。まあ、もっともなので、部屋の割り振りと同じく、母には必ずカギを1本進呈し、他のメンバーが何とか残りでやりくりしています。
食事も気をつかいませんねえ。三食とも自由で、食べたくなければ食べなくていいし、食べたいものを食べればいいという感じ。でも母は気ままに見えても自重しているんでしょうね。自分のペースを崩しませんよ。誘っても気が向かなければ部屋で本を読んで過ごしたりと、どこにも出かけない日もありますから。もしくは午前中にお城を見に行ったら、午後はどこにも行かないとかね。そのせいかどうか、これまでピンチになったことはないですね。反対に無理して動き回っている子供世代がダウンして、母にお粥をつくってもらったりして(笑)。
ストレスをためず一緒にいることを楽しもう
親孝行旅行としては、好きなようにさせてあげることが大前提ですよね。だから旅の間は、母の言うことを聞こうと心がけています。時々、というかしょっちゅう「はあ!?」と思うこともありますが、我慢しちゃいます。まあいいやと目をつぶる。なぜなら自分が楽だから。つまらないことで言い返して、ケンカするのがいやなんですよ。母が楽しいんだったら、したいことをしてもらいましょうと。旅先ではみなが緊張しているし疲れているから、どうしてもぶつかりやすいですよね。だったら、気がついた方が我慢したほうがいい。
親しき仲にも礼儀ならぬ我慢アリ。お互い相手のことを考えて怒っているのだから、ストレスをためないように上手にやり過ごすことが大切です。かくいう私も、昔はあれこれ文句を言っていましたよ。でも、結局はお互い様でしょう。やり過ごしていれば、そのうち忘れます。海外旅行に親と一緒に行くだけで楽しいし、話し相手がいることもありがたいじゃないですか。それが親子旅行を続けている、いちばんの原動力です。母が希望する限りこれからも旅を続けますよ。卒寿を過ぎても元気に海を渡る人もたくさんいますしね!
みなさま、親子旅に関するたくさんのお便り、本当にありがとうございます。次回は、みなさまの声を大々的にご紹介いたしますので、お楽しみに!さて、トップバッターはもはや常連の貫禄漂うシェリー様。お母様の付き添いで大阪の病院に。ここぞとばかりにホテルやレストラン探しも楽しんで、「通院が1泊2日の大阪旅行と化しました」。困難な状況も気の持ちようで、いくらでもポジティブに考えられる……シェリー様からは、いつもそんな素晴らしいお手本をお教えいただいております。尊敬します。わたくしも見習いますわ!
続いて「我慢できなくなって香港弾丸食い倒れツアーしてきた」渡辺様。ご無沙汰しております。お元気そうで何よりです! 「むかーし『有閑倶楽部』という漫画で、主人公の女の子が『美味しい飲茶が食べたいな』とパパとプライベート飛行機かなんかで、香港に行っちゃう場面が忘れられなくて! 」。わかりますっ。実はわたくしも同じ漫画でマキシムのナポレオンパイの存在を知ったり、宝石のクラスを教えてもらったりしたものです。と、まずはそこに引っかかったマダムなのでした(笑)。渡辺様、また顔がにやける旅リポートお待ちしております!
最後はりえこ様。久しぶりのハワイ旅行で、悲しい思いをしたとのこと。挨拶をしても返してくれない、サービスがおざなり、人により態度を変える……同様の経験、わたくしもあります。しかし、もうそれは一期一会。今、ここで相対している人との相性が悪いのだと思うようにしています。そしてつまらない気持ちのまま過ごさないために、自分はあくまでも笑顔を忘れず、どこでも挨拶を心がけております。
さらに、ハワイはアメリカのリゾートなので、最低15%のチップは義務とあきらめるコトが肝心です。心付けではなく、スタッフの給与を支払っていると割り切った方が気が楽ですわよ~。どうしても我慢できない場合は、その場できっちり抗議しましょう。でないと、スタッフは普通に仕事をしているだけですから、なぜチップがもらえないのか理解できないし、それが「日本人はケチ=テキトーに扱って構わない」という包括論につながるのではないかしらん。ささ、気を取り直して、またチャレンジです。次のハワイはきっと楽しいですわよ!!
「Would you please come and fix the XX now?」
「XXをすぐに修理してほしいのですが」という意味のフレーズ。エアコンやトイレなど、すぐに直してもらわないと困るような備品が壊れていたり、うまく作動しない場合はすぐに連絡を。「now」に強めにアクセントを置いて緊急性を伝え、遠慮せずにお願いしましょう。
親しき仲にも礼儀ならぬ我慢アリ
マダムJの名言から。親しいからこそ言葉を選ばずにぶつかってしまいがちですが、そこをぐっと我慢してみて。ムダなケンカが減るかもしれませんよ。