106
私の考える「これからのシニア親子旅」
2回にわたってお送りしたシニア親子旅のお話。みなさまからたくさんのお便りをいただき、ひたすら感謝感謝のマダムヨーコでございます。拝読してわたくしが強く感じましたのは「みんな……あきらめてないな! いいぞ~!」というワクワクするような気持ち。苦労のタネや感動ポイントは人ぞれぞれですが、誰もが年老いた親との旅行の得難さを教えてくださいました。今回は、そんなエピソードをたっぷりご紹介いたします。
<前回の記事はこちら>
・どうする? これからのシニア親子旅:準備編
・どうする? これからのシニア親子旅:滞在編
親子海外旅行のテーマは「非日常」
トップバッターはワッフル様。「今までの一人旅の経験を活かして、また今まで心配をかけた分のお礼として、年1ペースで母を海外に連れて行きます」。う~ん、素晴らしいっ。考えるのは誰にもできる。問題は、それを実行することですものね。「親孝行しないと……」なんて口ばかりの自分を反省、でございます。そんなワッフル様の親子旅は「私が過去に行って良かった所へ行くので、完全にツアコンになります」というスタイル。
飛行機は「もちろんCクラスですが、Cクラスしか乗せたことがないので、これが当たり前と思ってしまい、良さが分かってもらえないのが残念」て(笑)! その何となく悔しい気持ち、よくわかりますわ。「短期間でも良いのです。空港を歩いて、お土産をみて、慣れないホテルに泊まって……の非日常が、私たちの海外旅行のテーマです」。ああ、初めて海外旅行に出かけた時のドキドキを思い出すような、なんて素敵なお言葉でしょう!
「でも、せっかくTGVとレンタカーでモン・サン・ミッシェルまで行ったのに、着いたら『もう見たから中はいいや、帰ろう』と言われたのはショックでした」。言うよね~、トシヨリそういうこと平気で言うよね~。爆笑。ワッフル様、6月の香港はいかがでしたか? またご報告お待ちしております。
フラッシュカードで一人歩きをサポート
お次は鋭いコメントが印象的なくう様。「母と私の旅行で一番気を付けるのは、今のところはホテルのランクです。名前の知られているチェーンホテルであることは必要最低条件です」。ほほう。やはり知名度が安心感につながるのでしょうか。ホテル選びが難航してしまう方には、おすすめのテクといえそうです。「友達親子ではありませんが(意見の相違は今もある)、旅仲間としては最高」だという、くう様のお母様。積極的に「一人で出かける」派なのですね。
ところが「究極の方向音痴な母。待ち合わせの時はいつもハラハラドキドキです。各国会話集をアレンジし、その日の行き先に合わせた内容の手書きのフラッシュカードを作って、タクシーの運転手さんにね、とか迷子になったら見せてね、と渡しています」。これはガイド本を渡すよりはるかに有効! さらに地図で駅の出口番号やバスやトロリー乗り場などもチェックし、ホテルまでの手書き地図やメモを作って渡しているのだそう。「カードがきっかけで現地の方と心の交流(!)が弾むことも」と、嬉しいおまけもあるようです。
持ち歩き地図は必ず現地語のものを
注意点は、現地語の地図を持ち歩いてもらうこと。「ガイドブックの地図も悪くないのですが、日本語表記の地図を指して『ここ、どこですか?』と聞かれても現地の方が困るばかりですし」。確かに。わたくしも未だにそれで途方に暮れることアリなのです。地図は現地語で。肝に銘じましたわ!
「旅行先では小言三昧な日も」あるというくう様。ヘコむことがあっても、「私といることで『母』に戻る時間があるのも悪くない、と思っています。それもこれも、職場の先輩から『親と気兼ねなく旅行できるのも親が元気だからこそ。たくさん行ってあげなさいね』とアドバイスされていたからです」。そしてくう様も、同じアドバイスを後輩に。大切なことは言葉で伝えてこそ。これからも、ご無理のない範囲で母娘旅をお続けになれますように。
注意! Cクラスは一度乗ると戻れません(笑)
「父と外遊し始めたのは父が80才を過ぎた頃」というのは、初めましてのkyouko様。ご兄弟を亡くされ、肩を落としていたお父様を見て「良薬は旅しかない!」。実に前向きなご判断でございます。そして出かけたシンガポール旅行。めでたく復活を遂げたお父様と「それ以降は体力や予算を考慮して、アジア限定ですが、ビジネスクラスでの旅をしております」。
すると「一度ビジネスの快適さを味わってしまった」お父様は、もうエコノミーには戻れなくなってしまったと。ど、どこかで聞いた話ですわね(笑)。昨年は、お姉様ご夫婦と4人でクアラルンプールと台北へ旅されたkyouko様。その時にお父様は、初めての空港で車椅子体験。「実は父は最初拒んでいたのですが、一度体験してしまうとこれまた快適。出入国手続きも特別レーンでささっと終了。車椅子の老人がいるメリットを実感しました」。
「老人は利用すべし!」で負担を軽減
そこから得た教訓が「老人は利用すべき」。もちろん、ズルをするためではなく、少しでも高齢者がラクに旅をするためのテクニック。同行者の負担も軽減されますから、優先、優待、どんどん利用するべきでございます! また、現地ではガイド付きの車を予約して観光するのだそう。「丸一日フル活動は厳禁。たいてい半日回ったらホテルに戻り」親世代はご休憩。子供らはその間を利用して町歩きを楽しみます。
高齢者連れの旅は「何かと高くつきますが、これもいろんな意味で安全のための必要経費と考えます」。やはり親子旅にケチは禁物なのですね。ちなみにkyouko様は来年、92歳のお父様とともにアジア旅行を計画中とのこと。ぜひ、ぜひ、実現しますように。陰ながら応援しております!
卒寿だってまだまだ行ける!
続いては、常連トラヴェジェンヌのシェリー様。お母様の介護をされながら、だからこそ一緒に旅に出かけようというパワフルな姿勢や、日々の通院も「旅行」に見立てて楽しんでしまわれる、そのおおらかさ。わたくしはお便りをいただくたびに、胸を熱くしております。
「近所の方は、90歳を過ぎてもビジネスクラスでヨーロッパへ出かけていましたが、94歳の時『今回はやめとくわ』と当日キャンセル」されたとのこと。さ、さすが。パワフルな方の周辺には、やはりパワフルな方が集まってくるのですね……(笑)。「あと2年したら、母も卒寿。かなり危なっかしいけど、まだまだ行ける!」というシェリー様。もちろん、まだまだ行けますとも!
「高齢者のお客様を連れていく」添乗員のつもりで
最後は「すでに父母は他界してしまっていますので、過去に一緒に旅した事を思い出して泣きながら読みました」というmatsumoto様。「旅格言の『親との旅行で我は無用』は秀逸です」「極端な例えですが添乗員になったつもりで『高齢者のお客様を連れていく』という考え方をするくらいのほうが結果として良いような気がします」とおっしゃいます。
またプランニングには、「何をするにも時間がかかることを前提に」「自分が旅をする時の倍の時間を費やして」とのアドバイスも。また航空券の予約時には「特に足が悪くなくても車椅子利用をリクエストした方が、イミグレーションが混んでいても長時間立たせることもなくなるので」おすすめだそうです。あら~kyouko様も、同じことをおっしゃっていましたわね! 「事前の準備を何倍にもして、楽しい想い出を残して欲しい」とおっしゃるmatsumoto様。素敵なお便り、本当にありがとうございます。
ともに年を重ねることはできても、一緒にできることが少なくなっていくのが親子というもの。まだ親御さんと旅行ができる「幸福」をお持ちのみなさま、どうぞ先送りせず、面倒くさがらず、お父様・お母様との旅を実現してください。マダムJ はじめ、お便りくださった方々の思いが、読者の皆様にも届きますように。それでは、また来月。Ciao!
みなさま、いつもお便りありがとうございます。時に爆笑し、時にしんみりし、時に胸を打たれ……。みなさまの声は、マダムヨーコのトラヴェジェンヌ魂を支える大切なエネルギーなのでございます。これからもみなさまの旅のリポートのみならず、意見・質問・疑問・相談など、旅に関するさまざまな声をお寄せください。毎日首を長くしてお待ちしておりま~す。
「Where could I find the electric outlet?」
「電気のコンセントはどこにありますか?」という意味のフレーズ。ホテルの客室に案内されて、見つからなかったらこうたずねましょう。ところで「コンセント」は和製英語ですから、外国では全く通じません。「outlet」もしくはイギリス風に「socket」と単語だけでもで覚えておけば、何とかなるはずです。
海外旅行に定年なし
たとえ歳を取っても、体が思うように動かなくなっても、元気と好奇心と希望があれば、どんなことだってできます。あきらめないで!