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2008年最後は旅先の「エエ話」でしめくくり
ああ、また今年も12月になってしまいましたのね。月日の経つのはアローのごとし・・・って、これ、前にも使いましたっけ。ぼけておりますマダム。年末のめまぐるしさについて行けませ?ん。だって、だって・・・ウォン安に乗じてソウルに行って、マジ極楽ステイをしてきちゃったんですもの。その余韻がいまだに続いていて、本当に、もう、気分はソウル! なのでございます。
マダムは貧乏旅行をスルーしてしまいましたの!
実は、こんなお便りをいただいたんですのよ。「いつも楽しく拝見しています。マダムのコメントが一番楽しいですが、皆がリッチな旅行をしているわけではないので、貧乏旅行を対象にしたコラムもあると楽しいかなーと個人的には思います」。まずはご愛読ありがとうございます。そしてスミマセン。マダムはもう大人なので、キツイ・汚い・危険の3K旅はつらいのです?。そして、よーく読んでいただければちらりとにじみ出てくる、そこはかとない割安感。そう、マダムはマダムでも、わたくしは庶民派マダムなのでございます。
マダムが、時間とエネルギーだけが有り余っていた若かりし頃には貧乏旅行をしたかというと、あまりに貧乏すぎてほとんど旅行をしなかったというのが本当のところ。手に職を持つようになってからでは、もう無期限の旅行などできませぬ。そこでギリギリの日程で、できるだけのことを満足できるレベルでするという、マダム黄金の旅行パターンが編み出されたのでございます。きっと、メルマガを読んでくださっているみなさまも、予算よりも時間がポイントなのでは、と思うのです。ですから、マダムの山あり谷ありの体験が少しでもお役に立てば、これほど嬉しいことはございません。
でもどんな旅の体験談も大歓迎でございます
もちろん自分ではしない(できない)ものの、貧乏旅行のお話は聞くのも読むのも大好きです。ネット上でも書籍でも、学生からご年配者までたくさんの方の体験を知ることができます。それを読んで「よしっ、マダムも・・・」とはなりませんが、コミュニケーションの仕方や危機管理法などヒントをいただくことも多いです。もし、万が一、なにかあって、どうしても、という状況において貧乏旅行をすることになったら、もちろんすかさずみなさまご報告いたしましてよ! 心の隅の方で、乞うご期待、でございます。
さて、今回はマダムの元に届いた、みなさまの旅先での体験談をご紹介いたします。いつもは別コラムで取り上げるのですが、実のところ、みなさまからいただくお便りの大半が超力作。サクッと数行でまとめてしまうには惜しい傑作ぞろいなのです。そこで日頃のご愛読への感謝をこめて、年末スペシャル。ロングバージョンでまいりますわよ。
サイパンのホテルで出合った市井のカミサマ
トップバッターは大阪のタント様。「2001年も家族でサイパンへ行った時のこと。ホテルはハイアットリージェンシー。クラブフロアに泊まっていました。帰国の数日前、当時幼稚園児だった子供が履いていたビーチサンダルの鼻緒が切れてしまったのです。で、ホテルのフロント(フロアのバトラーではなく)に事情を説明し、ビニールテープを貸してくれるよう頼んだのですが、少し探すフリだけで「あいにくございません」とホテルの人にありがちな、非常に丁寧なアイソ笑い。ホテル周辺は店もなく、本当に困ってしまいました。で、目に入ったのが、たまたま内装工事に入っていたローカルのおじさん。たずねたところ、手持ちの道具の中から養生テープ(仮止めに使うもの)を取り出し、お世辞にもきれいとは言えないウチの子のサンダルを自ら手に取り、切れたところに巻いてくださったのでした」
嬉しいですよね、こういう普通の方が普通にしてくださる親切。なんとタント様ご家族は、このあと9・11テロのせいで、4泊だったはずの旅行が7泊になってしまったのだとか。「帰るまでの間、ツアーでなかった私たち家族は、色々な情報に振り回され、3回目のバゲージダウンにして、やっと帰ることができました。ホテル側の配慮もあり、テロ期間中は、予約料金(ラックレートではないです、ホテル直営ネット予約のデスカウント料金)の6割で宿泊でき、かなり安い金額でクラブフロアに泊まっていられましたので、それはラッキーだったみたいです。同じようにその日チェックアウトのツアーの方たちは、まずチェックアウト。その後の保証もなく、安いホテルを紹介してほしいとか詰め寄っている姿を見ました」。直してもらったサンダルで、延長期間中も元気に歩いていたお子様は、もう中学1年生に。「学校の用事などで家族旅行もままならなくなってきています。3歳のころから10回以上は海外へ連れて行ったと思いますが、もっと行っておけばよかったと、後悔しております」。
きっとお子様が大人になってから、また新しい形の家族旅行が楽しめると思います。もう少しの辛抱ですわ、タント様!
ローテンブルクの土産屋から送られてきた50MD
お次は「冬のヨーロッパはバスタブにこだわります」星野様の、ドイツでのちょっといい話。「15年前の8月、友人とツアーでドイツ・スイスに出かけました。ローテンブルクで、マルクト広場の一角にある土産物店でゴブラン織り風のショルダーバッグを購入しました。確か48DM。最初に現金を渡したのですが、T/Cが使えると思い50DM分で払いました。会計をしている最中に正午の鐘が。そう、それはマイスタートゥルンクが始まる合図。ドイツ初めての友人とともに慌ててお釣り2DMを受け取り、店を飛び出したのでした。先に渡した現金50DMを返してもらうのをすっかり忘れて・・・。その日の夜フュッセンのホテルで「今日の支出」を計算していると・・・合わない。端数のペニヒはともかく、どうしても50DM近く合わない。そして、その日の出来事を反芻した結果、思い出したのです! ローテンブルクでのことを。しかし200kmも離れた町のうえ、お店の名前も住所も電話番号も分からない。私のミスといえばミス。授業料だと思って諦めるか・・・いいえ、ダメもとで手紙を書いたのです。
うーん、あきらめなかった星野様、スゴイ! エライ!「お店の位置は分かっていたので、ホテルの封筒にRhotenburg ob der Tauberと郵便番号、そしてマルクト広場周辺の地図を描き「ここの土産物屋に届けてください」と書きました。そしてA4の便箋2枚に目いっぱいに、いきさつと使用したT/Cの番号(控えておいてよかった!)、氏名とサイン、そして可能ならば50DMを返してもらいたい旨、最終日のジュネーブのホテル名と住所、日本の住所を。そして翌日、国境を越える前に投函しました。
辞書もなく、自力でドイツ語の手紙を書いた星野様ですが、内心はすっかりあきらめていたそうです。ところが・・・。「秋も深くなってきたある日、郵便受けを見てみるとドイツからのエアメールが入っていました。中には50DMの紙幣と手紙。「お店の手違いで申し訳ない。普通郵便で申し訳ないが、50マルクをお返しします」という内容でした。私はその場で、感激のあまり雄叫びをあげてしまいました! お店の人がよく返してくれました。そして郵便屋さんがよく、あの宛先の書き方で届けてくれました。私がますますドイツを好きになったのは言うまでもありません」うう、何と感動的な。でも。きっちりオチがありますわよ! 「ドイツからのその手紙は日本語で書かれていたのです。私は何のために必死になってドイツ語で書いたのか・・・。ちなみにその50DMは、年末年始の新婚旅行で使ってしまいました」
レオナルドエクスプレス故障で知る人種模様
最後を飾るのは大阪のtomomo様でございます。今年の夏にイタリアのサルディーニャ島の南、ヴィッラシミウスという元漁村のリゾート地にご滞在。素晴らしい景観と気候、素敵なホテルにかわいい町とおいしい食事を堪能されたご様子。しかし、もう一つの滞在地ローマでは。「トラブル続出でしたが、その中でも辛かったのがレオナルドエクスプレスの故障です。いや、乗り込んだ時から暑いなー、エアコンきいてねーなー、とは思ってたのです。動き出したのは予定時刻から遅れること数十分。その数十分後に、プスンといって停止しました。なんのアナウンスもないままさらに数十分。車内は蒸し風呂です。お昼時の電車だったので空腹に耐え、暑さに耐え、様子をうかがっていたら、次のレオナルドエクスプレスが目の前を通過。「それに乗せてくれー!」と叫びましたが、当然素通りです。ありえない!!
動かない電車、蒸し風呂状態の車内。さあ、どうする!? 「そのうちに、乗客が荷物を持って線路わきの崖を登り始めました。諦めて自力で脱出することに決めたようです。まずは若い女性が二人、結構急な崖を、スーツケースを引っ張ってはずり落ちを繰り返してとうとうフェンスの向こうへ消えていきました。それから数十人が同じように、崖を登って消えていったのですが、土地勘のない私たちはいかんともしようがありません。何の説明もなく、どれくらいこの車内に閉じ込められるのかもわからないまま、ただひたすら汗をかいていました。運転手がすることといえば、エンジンをかけてはプスンと停止することの繰り返し。そのまま1時間以上が過ぎ、次のレオナルドエクスプレスも通過です。どないなることかと暗澹たる気持ちでいたところ、それからしばらくして何とか動き始めました。次の駅までどうやら少しの距離だったようです。そこで下ろされ、ようやく次にやってくるレオナルドエクスプレスに乗り換えることができました」
災難! 本当に南イタリアの列車は、オンタイムという概念ないですわねぇ。マダムも何回痛い目に遭わされたことか。さて、ここからtomomo様の観察眼が冴え渡ります。「停車している間、まずイライラとしだしたのは、日本人である私たちです。それから数十分後、いわゆる白人がたちがうろうろし始めました。そして黒人の方々は最後まで気にもせず、陽気に大声でしゃぺり通しておりました。人種による性格の違いを思い知ったひと時でした。それにしても黒人の方々、まったくうるせーったらありゃしない!」。大爆笑です。手に取るように状況がわかります。これのドコが「エエ話」や、という向きもございましょうが、マダムにとってはジャスト・マイ・ツボでございましたの!
2009年も辛口サロンをどうぞよろしく!
今年もマダムあてにたくさんのお便りありがとうございました。読みながら笑い、ともに怒り、悲しんだりと、いつもみなさまとサシ(おっと)直接お話をしているような気持ちになれて、誠に幸せでございました。来年も、マダムは時間とお金と減りつつある体力のヒットポイントを補充しつつ、また新しい旅に出かけ行くつもりでおります。みなさまにも、よい旅が待っていますように。それでは、また来年! Ciao!
「That´s the only way.」
前もってお願いしておいたことや、パンフレットなどに明記されていたことが直前になってキャンセルに。どうしても納得がいかないときに使いたいクレーム用フレーズです。「これしか方法はない」、つまり「そうじゃなくちゃダメ!」というような意味で、シーンによって断固とした口調や甘え口調を使い分けてみてください。
とかく旅はままならぬ
完全無欠の段取りをしていても、旅先ではどこかで必ずトラブルが起こるもの。鷹揚に構えていた方が余計なストレスをためずにすむ、という心得。