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ポーランドの古都クラクフでヨーロッパの未来を思う
すでに桜も盛りを越えようとしている今日この頃、私は相変わらず各国を飛び回る日々が続いております。先月訪問したオーストラリアのゴールドコーストでは、想像通りチャイニーズグループでメチャ混み。彼らのよく言えばおおらか、ハッキリ言えばガサツな言動に、かのインターコンチネンタルも形無しといった風情でありましたナ(苦笑)。
極寒のヴァヴェル城周辺も観光客でいっぱい
さて今回は、ポーランド紀行第2弾。かつてポーランド王国の首都として栄えたクラクフ滞在記です。ワルシャワがよくも悪くも経済の中心地だとすれば、クラクフはのんびりとした古都。世界遺産になっている旧市街もこぢんまりとしており、落ち着いて過ごせる町なのでありました。
とはいえヴァヴェル城周辺は、寒さに耐性のあるヨーロピアン観光客でいっぱい。カフェも観光料金なのか、妙にお高いような気が…。しかし世界を絨毯爆撃中(笑)の中国人軍団は、とんと見かけませんでした。まあ、初夏になればショパン大好き日本人ともども、アジア勢もどっと増えるのでありましょう。
注目のカジミシェシュ地区で戦争博物館へ
ところで、クラクフでいま、俄然注目を集めているのがヴァヴェル城の南東、新進気鋭のアーティストによる独特のカルチャーシーンが展開されているカジミシェシュ地区です。ここは映画「シンドラーのリスト」の舞台にもなったユダヤ人ゲットーがあった場所で、ポーランド最古のシナゴーグも鎮座しています。
ヴィスワ川を渡るとシンドラーの工場跡があり、そこはナチス占領下のクラクフの様子を伝える戦争博物館。シンドラー氏の執務室なども残されており、想像以上に充実し、また緊迫した展示内容(フィルムによる動画もあります)に、私の目は釘付け。ハッと気づくと長い時間が経っておりました。時間が許さずアウシュビッツに行けませんでしたが、もし足を伸ばしていたら、その衝撃はかくやと想像できるほどの、貴重な体験でした。
トラバントで市内をミニドライブ
じっくり見学し外に出ると、雨。傘の用意なくキョロキョロしていると、ガイドらしき女性が声をかけてきます。話を聞くと、旧東ドイツの国民車「トラバント」で、共産主義時代を追体験する市内ツアーがあるのだとか。お代は100ズゥルチ。「ホテルに帰りたいだけなんですよ」と言うと、ツアー抜き60ズゥルチで搬送交渉成立です。
ちなみに「トラバント」は、「トラビ」の愛称で親しまれた小型車で、排気量は600cc。重量もわずか600kgというミニカーのような車です。1991年まで生産されており、総数約300万台。東ドイツやポーランドでは、納車15年待ち(!)というほどの人気を誇ったのだとか。ベルリンでも、このトラバントに乗って市内をめぐるツアーは数週間待ちの大人気だそうで、期せずして乗車できたのはラッキーでしたねえ。
学問都市クラクフは知的水準が高い!?
くだんのガイドは年の頃は50前後。途中でわざわざシナゴーグを回って解説してくれたのですが、話術は巧みだし、知識もハンパではありません。英語、ドイツ語を含めて4カ国語も話せるのだそうで、高い教育を受けていることがうかがえます。降車時にはサービスに感謝して100ズゥルチを渡しましたが、ウ?ム、ポーランドはやはり知的水準が高いのかな、と…。
そういえば、空港から乗ったタクシーの運転手は大学生で、彼によるとクラクフには26もの大学や専門学校があるのだそう。ここは立派な学問都市なのですな。しかしポーランドはまだまだ発展途上国。物価は安いけれど、稼ぎも少ない。経済的に発展するまでは、勉強してドイツか他のヨーロッパへ働きに行きたいと力説しておりました。
真面目で無口で律儀な国民性の背景は…
なんとも真面目というか、律儀というか。だって、ワルシャワでも町中では誰1人として信号無視をしないんですよ。驚きましたねえ。車の姿が全く見えなくても、ほんの5歩で渡れてしまうような場所でも、ただ、じっと待っているんです。他のヨーロッパに、こんな国民性のある国はないような気がします。
それに、一般的にポーランド人は、やたらとニコニコしませんね。一見すると怖いし、どこか陰を感じます。クロアチア人は、同じように陰があるけどしゃべり出すととまらない(笑)。ポーランド人はひたすら無口です。でも話しかけると、きちんと答えてくれる。ただ余計なことは決して言わない。これぞ共産主義の名残りか、それとも、そうせざるを得ない背景があるのか…。いつか解明してみたいものです。
さまざまな困難に直面しているヨーロッパですが、伝統と文化を守り、自分たちの国を発展させていこうと願うのはどの国も同じこと。その希望や期待を、いろいろな形で感じさせてくれたポーランド滞在でした。
日本人の口に合う素朴な東ポーランド料理
そうそう、クラクフで食べたおいしいもののお話も。塩パンやアイスクリームてんこ盛りのアップルパイは、実に素朴で美味。ワインも手頃で飲みやすかったですね。レストランでは、マテイキ広場の近くにある「ヤレマ」。伝統的な東ポーランド料理で、ジューレックという酸味のあるさっぱりしたホワイトソーセージ入りのスープや、餃子みたいなピエロギが印象的でした。香辛料がきつくなくて、日本人の口にも合う料理です。
ところで、今回利用した中央駅近くのアンデルス ホテル。いやあ、よかったですよ! モダンでオシャレ。特にパブリックエリアのデザインが斬新でした。滞在していて気分がいいのです。料金もお手頃ですし、立地も抜群。おすすめです。