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タイが内包するエネルギーと可能性
多数の死傷者を出した反政府デモから数カ月、落ち着きを取り戻しつつあるタイに行ってきました。そこで見聞きしてきたのは、騒乱とは一線を画し、成長を続ける経第二次産業界や洗練と戦略を極めていくリゾート業界など、タイの未来を示唆するに十分かつエネルギッシュな側面でした。風評とは異なる、何とも意外なその姿。今回は私という旅人の目から見た「今のタイ」の報告です。
安全・安心のスワンナブーム空港
タイに行くというと、決まって聞かれるのが「空港は大丈夫なんですか?」。国の玄関口が封鎖されるという異常事態、2008年の出来事の印象は、いまだにみなさんの記憶に生々しく残っているようであります。私は、あの直後にタイに降り立ったこともあり、「嵐のあとにはセキュリティ強化」の法則を身をもって体験していましたから、むやみに危機感を抱くこともなく、いたって平常心でスワンナブームに向かいました。現地は予想通り。各地への乗り継ぎもスムーズで、なにひとつ問題ありませんでした。
市内へ向かう車中で気がついたのが、激しく行き交うトラック。これがちょっとすごい数なんですな。スワンナブームは工業団地としても開発予定だった場所ですが、空港ができる前は交通の便が悪く遅々として開発が進まなかったそうです。それが、いまやバンコクの主要工業団地として大発展。政治的混乱とは無縁に成長を続ける好経済を追い風に、工業エリアはどんどん郊外へと拡大しつつあるようです。
人出は少ないが渋滞は復活
デモの中心となったショッピングエリアは、さすがに人影はまばらでした。伊勢丹や界隈のホテルは再オープンしたものの、まだデモの爪痕を残したままの店はあるし、セントラルデパートは年内クローズとのこと。閑散とした広場を見ていると、実にやるせない気持ちになります。ところが、これほど中心部に人数が少ないというのに、道路は車でいっぱい。バンコク名物の渋滞はしっかり復活しているのです。ちなみに空港と市内を結ぶエアポートリンクも、ついにこの8月後半に試運転が始まるそうですし、フォーシーズンズのすぐ隣に建築中のラグジュアリーホテル、セントレジスも12月には開業予定と、明るいニュースも少なくありません。これを機に、バンコクの人々に心からの微笑みが戻ることを願うばかりです。
経済成長の証は近郊リゾートエリアに顕著
今回はバンコクから車で約2時間半のホアヒン(というかチャアムに近いかな)に週末から2泊しましたが、いやー、ここでも驚きました。満室なのです! しかも観光客ではなく、タイ人ばかり。聞いたところによると、ウイークデーはバンコク周辺の企業セミナーやコンファレンスなどで大盛況なのだとか。何しろタイの経済成長率は7~8%。政情不安による観光収入が打撃を受けたとしても、タイ全体の割合としてはさしたる数字ではありません。ふと思い浮かんだのが、スワンナブームの工業団地。なるほどなるほど。国の景気としてはまだまだイケイケドンドンなのでありますな。しかし笑っちゃったのが月曜日の朝。あれほど大量にいたビジネスマンは、影も形もなくチェックアウト済み。朝食会場は私たちのみ。ブッフェさえなしです。この極端さが法人ビジネス需要偏重を物語っているのですねえ。
さらに輪をかけて元気なのがパタヤ
こちらはバンコクから車で1時間という手軽さもあって、ホアヒンとは反対にローカルのウイークエンドリゾートとして大人気。しかもチャーター便でやってきて長逗留し、バンバンお金を落としていくロシア人や中近東の富裕層もいますから、町中の整備や美化も急ピッチで進んでいます。かつてのパタヤのイメージしかない人は、現状を見たらぶっ飛ぶと思いますよ。とりわけ海岸沿いのプロムナードなぞ、どこの高級リゾートかという風情です・・・って、言い過ぎかな(笑)。滞在するなら週中に。週末は混むし高いし、かなりヘビーです。
そして一足先を行くプーケット
21世紀に入ってから観光国タイを襲った、さまざまな不運はみなさんもご存じの通りですが、最悪だったのが 2004年のインド洋大津波でしょう。タイ南部のピピ島やクラビ、カオラックなどは復興政策が行き届かなかったこともあり、なかなかかつての活況を取り戻すことができません。反対に大被害を乗り越え、着実に進化を遂げているのがプーケットです。洗練されたブティックリゾートの登場、クオリティへのこだわりを感じさせるレストランやスパ施設。津波前とはまた違った、エレガント路線かつロングステイ型のリゾートへと緩やかに変身しつつあるような気がします。
海外ゴルフ愛好家にビッグニュース
その象徴的な存在として私が注目しているのが、ロックパームゴルフクラブ内にオープンする新しい宿泊施設です。このロックパームとお隣レッドマウンテンゴルフクラブは姉妹コース。後者はタイでも珍しいジャングルコースなのが特徴。パトンまで車で約7分、静かで景観も抜群の好ロケーション。ここに2階建60 室、スパ施設を備えた4星クラスができるとあっては、海外でゴルフ三昧のロングステイというニーズに、まさにドンピシャではありませんか! 物価の安いタイですから滞在費、プレイフィーを考えても実にお得。プーケットのゴルフリゾートで、これほどリーズナブルに滞在できるところは初めてでしょう。もちろんゴルフをしない人でも、用意されているシャトルを利用すればパトンまではすぐですから、することがないと嘆くヒマもありません。ソフトオープンは11月予定。この目で確かめて、またお知らせいたしますので、どうぞお楽しみに。
いまだにチラホラと不穏なニュースが入ってくるタイですが、国際空港から各リゾートエリアへの渡航に関してはほぼ問題なし、というのがこの旅の実感です。ただし、タクシンの故郷である北部タイには、シンパが集結しつつあるというウワサもありますので、くれぐれも事前の情報収集を怠りませぬよう。正しい判断と自己管理こそが、個人旅行の大原則ですからね。
モダンなのにほっとする大人のベース/パトゥムワン プリンセス ホテル
パトゥムワン プリンセス ホテルが位置するのは、争乱の中心となったプラトゥーナーム界隈の西。周辺にあるマーブンクロン(いやはや、ここは秋葉原と渋谷が合体したような場所ですナ!)やサイアムパラゴンは特に被害がなかったようで、ほんの少し離れているだけなのに、若者たちで大賑わいなのでありました。そんなイメージもあり、これまで足を運んだことがなかったのですが、なかなか居心地のよいグッドなホテルでありました。
まずはレセプションが2階という構造がいい。これだけでぐっと静か、ゆっくりとチェックインやアウトの手続きができます。客室は幸運なことにスイートでした。シンプルでシック、モダンな内装ですが、落ち着きのあるカラースキームが抜群に効果的で、実にくつろげるのです。バスルームも快適でしたねえ。特にセパレートシャワーブースの使い勝手のよさ・・・体を気持ちよく洗えるゆとりサイズ、水はけのよさには大満足でした。残念ながら利用できませんでしたが、マダムによると、ここのスパエリアから屋外プールにかけての爽快さも「まるでリゾートのよう」で、とても印象的なのだとか。BST駅が近いので、バンコク市内を動き回るのにも便利です。女性的なネーミングですが、エグゼクティブにとっても、申し分のない滞在拠点と言って良いでしょう。まさに4スター!