アメリカン・エキスプレス
ミスターMのおいしい旅の話「次の旅はここへ行け!」
Vol.
102

まだまだ続くかバリ島バブル

ミスターMのおいしい旅の話 まだまだ続くかバリ島バブル

やや旧聞になりますが、昨年末になんとか時間を確保してバリ島に行ってきました。この時期、インドネシアは雨期ですが、ラッキーなことに滞在中は気持ちのよいシャワーがあった程度。クリスマスホリデー前でバカンス客はぐっと少なく、またやむを得ない事情でアポがいくつかキャンセルになったこともあり、思いがけずリラックスした時間を過ごすことができました。

インターナショナルブランド総上陸!?

さて以前、開発に拍車がかかるバリの現状について、マダムと対談したことがありました。話題にのぼったのが、ゴミ処理問題、深刻な渋滞に代表されるマスタープランのない開発の弊害、そしてホテルの過剰供給懸念。
ホテルといっても、当時雨後のタケノコ状態の主流だったのはロスメンのような安宿や小規模ヴィラで、マイナス面は多々あれど、雇用促進や宿泊施設の選択肢が増えるというメリットもあると思われたのですが、この1、2年の間に状況はまたもや大きく変化しています。それがインターナショナル系ラグジュアリーブランドの猛攻勢です。

改装やすでにソフトオープンのブランドを含め、大々的にバリ進出をぶち上げたのは、メリディアン、シャングリラ、ハイアットリージェンシー、アンダーズ、ウォルドーフアストリア、リッツカールトン、ソフィテル、インディゴ、マンダリンオリエンタル、ケンピンスキー、ラグジュアリーコレクション、ウエスティン、アロフト、そして日本からはあの星のや。
これだけのメジャーどころが、遅くとも2018年までには開業予定だというのです。なんとも凄まじい話ではありませんか。これまでも 「どうするの!?」というくらい、ホテルオープンラッシュが続いてきた場所ですよ。ウウム、まだ立錐の余地があったのですなあ(笑)。

バリ島ホテルバブルの実態は

インドネシア観光省による2014年度の統計によると、バリ島で稼働しているホテルは2212軒、客室数は実に5万室、正規登録していない宿泊施設を加えると約7万5000室。これは過去5年間の最高値とのこと。ところが、そんな華々しいニュースとは裏腹に、さまざまな問題が浮上してきました。ホテルの敷地、もしくは建設予定地に足を運んでみれば、よ~くわかります。
たとえば2013年11月にクローズしたサヌールの名門バリハイアット。あの広大な敷地内に2015年、ハイアットリージェンシー及び同系列のデザイナーズホテルであるアンダーズの2軒が誕生する計画なのですが、1年が経過した時点で現場は更地のまま。資材すら置かれていない状態です。

さらに深刻な人材不足

またヌサドゥアの老舗ゴルフ場、バリゴルフ&カントリークラブをリニューアルしたバリナショナルゴルフリゾートの脇に敷地を確保していたのが、シャングリラ。すでに瀟洒なゴルフヴィラが完成しています。しかし、どうも使われている気配がないのですな。聞くところによると、何とシャングリラそのものが撤退してしまったと。だから稼働させようにも契約等の諸事情から動かせず、ただただ放置するのみなのだとか。もったいない話ですねえ。

その原因は、資材よりも深刻な人材不足。そんなわけで「バリ島でホテル業界に就職すれば入社3 カ月でセールスマネジャー(営業課長)、半年でアシスタントディレクターオブセールス(営業次長)、1年でディレクターオブセールス(営業部長)に昇進できるぞ」なんていう冗談もあるくらい。もう、完全にヒトが足りない! 特に何百室もある大型ホテルや、1室にクオリティの高いスタッフを何人も必要とする高級ヴィラはさらに深刻です。ハコはつくったけれど動かす手がない・・・では・・・。

過酷なホテルサバイバル

あまりにも多くの大規模プロジェクトが次々に動くため、資材も人材も不足して全くコトが進まない。これがバリ島ホテルバブルの現状です。いや、バリ島だけの問題ではありません。ジャカルタを筆頭にインドネシアはここ数年、空前の好景気が続いています。
下方修正したとは言え経済成長率5.9%。従って資材・人材は不足するほどに高騰し、労働者はより稼げる土地・職種へと移動してしまいます。比較的安価で労働力を確保できたサービス業や観光産業には大打撃。かといって給料を上げれば宿泊代金を上げざるを得ず、すると激化するホテル戦争で生き残ることはできない、と、もう八方ふさがり。

追い討ちをかけるように、バリ州知事がホテルの過当競争による値崩れを阻止すべく、宿泊料金の下限設定を検討しています。しかも、規定価格以下で売った場合でも規定価格分の税金を徴収するとかで、もし施行されるとすれば観光客にはもちろん、ホテルにとってもありがた迷惑な条例になりそうです。
それでもホテルラッシュにかげりが見えないのは、バリ島での土地・不動産取引が地元資本中心で、ほとんどがキャッシュによるものだからという見方があります。だから景気が低迷しても価格が一挙に下落することはないし、外国人向けのリースホールド(借地権)物件も堅調。金融業界が暗躍跋扈し、不動産バブルが沸騰した80年代の日本のような急激な崩壊は起こらない・・・というのがバリ島らしい楽観的な予測です。

ウルワツを席巻するチャイニーズ

それを証明するように、バリ島を訪れる観光客もさらに増加しています。1位がオーストラリア人、低迷する日本人を抜き去って、ついに中国人が第2位。中でもリッチ層の中国人が集結しているのがウルワツ周辺のラグジュアリーヴィラで、かのブルガリは今や「チャイニーズ・ブルガリ」などと言われる始末。
期待とはあまりにギャップのある雰囲気に、ヨーロッパ人ゲストがみな逃げ出しているとかいないとか・・・。しかしホテルにとっては、大枚をはたいてくれる大切なお客様。無下に断るわけにもいきません。これもバリ島のホテルが抱える陰の問題の一部かもしれません。

とにかくひたすら突き進む

日本人のバリ島滞在は比較的短期間で、ウブドと南部エリアに数泊ずつ分泊パターン、滞在ホテルを中心にさほど活動エリアを広げないケースが大半ですが、1カ月にもなる長期滞在が珍しくないヨーロッパやオーストラリアからのゲストは、滞在中にあちこちのエリアに足を伸ばし、バリ島を丸ごと満喫しようとします。この時にネックになるのが、ああ、やはり交通渋滞! 相変わらずひどい状態で、ジンバランからウブドに移動するのに3時間なんて、聞いただけでウンザリ。私も今回「じゃ、いいや」でやめにしてしまいました。

こうした根本的な問題を解決しないまま、ハードだけを増やし続けていくバリ島。これからも2025年完成を目指した北部の新空港建設や、「セカンド・バリ・プロジェクト」と称されるロンボク島の開発など、ビッグプロジェクトが目白押しですが、果たして目論み通りの結果が待っているのでしょうか。あの、懐かしくも心安らぐゆったリズムのバリ島は、もう戻ってこないのでしょうか。「何だかすべてが心配なんだよね」と言う地元の知人のつぶやきが現実にならないよう、ただ祈るしかありません。グッドラック。

花鳥風月

そうはいっても、やはりバリ島は私の大好きなデスティネーションのひとつ。今回の旅でも、おいしいものとの出合いがありました。それはベベッ・ブンギル。英語だとクリスピーダック。歯応えのある香ばしい味わいのアヒル料理です。本店はウブドで、歴代のインドネシア大統領もバリ滞在中は必ず足を運ぶという超有名店。私が行ったのはヌサドゥアの大きなレストランで、まあ人が来るわ来るわ。付け合わせで出ていたサンバルも美味ですぞ。

もうひとつは オタオタという白身魚のすり身をバナナの葉に包んで焼いたもの。これまた、ピリッと辛みが利いていて、後を引くおいしさなのですな。サテリリッと似たような手軽な軽食ですが、しっとり感というか、なめらかな感触で、私はオタオタに軍配を上げたい(笑)。ビールによく合います。やめられませんよ!

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