アメリカン・エキスプレス
ミスターMのおいしい旅の話「次の旅はここへ行け!」
Vol.
104

日本人は中国人の爆買いを笑えない!?

ミスターMのおいしい旅の話 日本人は中国人の爆買いを笑えない!?

少々旧聞になりますが、なんと25年ぶりにニュージーランドに行ってきました。滞在はクイーンズランドだけでしたが、あの頃と何も変わっていないこと に、いやはや驚きましたねえ。変化といえば、せいぜいショップやレストランが増えた程度でしょうか。相変わらず風光明媚で、のんびりとした観光地だったのであります。しかし、季節は夏だというのに気温は3度。いつもは25度くらいあるらしいのですが……南極が近いから……? 半信半疑でセーターを持って行って大正解でした。

25年前と変わらないニュージーランド

ニュージーランドを訪れる日本人は2013年度で約7万4000人。最盛期は約17万人にのぼったそうですから、かなり深刻な減少ぶりです。留学やワーキングホリデー、ウインタースポーツ目的での渡航は着実にあるようですが、いわゆる「観光客」が戻ってこないのでしょうなあ。スイスやカナダのような美しい大自然が好きな人には、きっと楽しんでいただけると思うのですが、実際のところニュージーランドがブームにならない最大の理由は、遊びに来たはいいけれど風光明媚の他に何が……(苦笑)。危機感を抱いたニュージーランドもこの状況を打開すべく、2019年までに日本人旅行者数を倍増させる「ダブル・ジャパン」なるプロジェクトを進めている真っ最中。航空券のキャンペーンもはじまっているようです。

かつては人間の10倍の羊がいるといわれたニュージーランド。主産業は酪農や観光で、まあ堅実かつマイペースな国であります。しかし、お隣さんであり何事においても一番のお得意様であるオーストラリアはというと、23年継続してGDP成長を続ける世界でも指折りの物価上昇国になってしまいました。その背景にあるのが、やはりというべきか、中国の存在です。オーストラリアは昔から英語教育を求める中国人留学生や移民が多かったのですが、中国語にも堪能なケビン・ラッド首相がその関係を一層強化。外国人でも不動産が自由に買えるというアドバンテージも相まって、中国人がなだれをうってオーストラリアに流入しているのであります。ニュージーランドは経済立国ではないため、幸か不幸かチャイナパワーの熱波にさらされてはいません。が、観光客数は日本人の約2倍。じわじわとその数をのばしつつありますから油断はできません。

海外での爆買い元祖は日本人!

世界のどこへ行っても中国の猛威を見聞する昨今。日本ではこの春節に彼らの「爆買い」が連日ニュースになりましたよね。まあ、私に言わせれば、あんなのはまだ序の口ですよ。なぜなら、もっと昔から超ド級の爆買いを我と我が目で見てきたのですから。その元祖ともいうべき存在……パリのルイ・ヴィトンショップに整列&入場制限を導入させたのは、そう、ご想像の通り日本人です(笑)。今でこそ年間1700万人を超える日本人が海外旅行に出かけますが、自由化されたのは1964年のこと。当時は1ドル360円の固定相場制で、海外旅行なぞ庶民には超高嶺の花。それが変動相場制になり、ジャンボジェットや団体パッケージツアーが登場してきた1970年代後半から、一気に身近に。とはいえ、それで海外旅行者数が爆発的に増えたわけではないのです。

その頃のハワイツアー代金は、サラリーマンの平均月収 の約6倍。さすがに「気軽」にとはいきません。しかし高度成長が波に乗るにつけ、社内行事や報奨旅行、商店街のイベントや抽選の景品などのインセンティブとして、しだいに「海外旅行」が目玉商品になっていきます。そしてその流れに素早く対応し、組織的・継続的・全国的に海外旅行を仕切ったのが、あの農協。いってみれば日本の団体旅行の先駆けは農協ツアーなんですね。そしてその後に続いたのが、営業マン・ウーマンを中心とした報奨旅行ツアーだったわけです。

豪快そのものの日本人団体ツアー

いや~、農家のみなさんは本当にスゴかったですよ! 1回の海外旅行で200~300万円も持って行く人がザラにいたほどです。1ドル300円時代の200~300万円ですぞ。現在に換算すると……そりゃもう信じられない金額です。しかもキャッシュ。フロントに設置されていたセーフティボックスなんか、お金が入り切らなくて大変です。もっとすごいのは、そのお金を旅先でお土産買いに全部使い切っちゃうんですね。豪快そのものです。

人気があったのは洋酒や洋モク、香水といった海外免税商品ですが、私が鮮明に覚えているのは宝石やスイスの時計などの宝飾品の類いです。ブランド品ももちろんありましたが、まだそれほど浸透していなかったため、高級品と言えば宝石。お店で宝石がズラリと並んだディスプレイプレートをざっと見て「これとこれとこれ」。「どれですか?」と聞くと、その中の一つじゃなくて「プレートごと」なんですねえ! お店の人は仰天です。ショーケースの中が空になるくらい買い込んで、お隣さんや親類縁者や顧客にお土産として気前よくバンバン配っちゃう。するともらった方は「今度は私たちが……」と、勇んで次のツアーに参加するという、今日では信じられないような好循環経済だったんです(笑)。

歴史は繰り返す、でも……

農協ツアーだけではありません。私が実際に遭遇しただけでも、シャンゼリゼに行けば、帽子を被ってカメラとJALパックのバッグをクロスがけにし、通りに寝転がってカフェでくつろぐカップルやらエトワール凱旋門を激写。ホテルの客室に入ればベッドは寝心地が悪いからと、マットレスを降ろして床で寝てしまう。しかも二人じゃ寂しいとみんなを呼んできて夜通し酒盛り。そして朝が早いから5時頃から起きて廊下をウロウロ。ただし怖いから外へは出て行けないと、もう、当時の日本人団体ツアーは修学旅行みたいなものだったのです。どうでしょう、そんなエピソードを聞くと、現代の中国人旅行者のことを、笑ったり眉をひそめたりするなんてできませんよね。後光の射す異国への扉が開いた当初は、みんな心も財布も躍りまくりで、そんなものなんです。歴史は繰り返すのです(笑)。

一方、似ているようでいて両者には決定的な違いもあります。日本は経済成長で中央と地方がともにボトムアップしながら一億総中流意識が敷衍しましたが、中国ではその人口数と広大な国土のため、地方や農民にはそんな恩恵は行き渡らずまだまだ貧しいまま。いくらヴィザが解禁されたとはいえ、海外旅行ができるのは富裕層で教育レベルも高い人たちや経済成金族らの都市部中心。また労働環境や公害などの社会問題をひとつずつ乗り越えてきた日本に対し、中国はあまりに成長が急激なため、あらゆる問題が一気に押し寄せてきています。また大量の情報が一瞬にして通り過ぎて行くのも、かつての日本にはなかった現象でしょう。海外旅行もあっという間に個人化し、最初は団体でも2度目は個人で、しかも気に入ったら毎月来るという人が増えているのも、情報化社会がもたらした結果かもしれません。

日本人の「旅行」の将来は

中国人に日本ファンが多い理由は、街がきれいで、一晩中明るくて、お店がいっぱいあって、何でも安心して買えて、魅力的なモノにあふれている。そしてサービスを含めて全てが上質。彼らにはない世界がここにあるからに他なりません。半信半疑で来た人たちが初めて日本のスゴさを体感したことが、日本ブームのきっかけなんですね。 日本は、悲しいかな、そういう時代は終わってしまいました。海外旅行が特別なイベントではなくなり、たいていのことは「知っている」。多くの人に海外旅行に対する目新しさもなくなってしまいました。

だから今目立って売れているのは、何百万円もするような豪華ツアーなんですね。生きている間に、これまで見たことがないもの、行ったことのないところを知りたいと、お金に糸目をかけずに出かけて行く人たちがいるからです。そのほとんどは日本の高度成長を支えた人たちであり、知的好奇心が高く、海外旅行にまだ強い憧れを持ち続け、そして生活に余裕がある富裕層です。

ディスカバージャパン再来へ

でも、その人たちが年を重ね海外旅行を「卒業」してしまったら……。そんな豪勢な海外旅行はすぐに下火になるでしょう。それでも日本人の旅行に対する好奇心はなくならないので、次に目を向けるのは国内になるかもしれません。それは決して夢のない話ではありません。今後も中国人をはじめ海外からの渡航者が増加の一途をたどれば、 日本国内も確実にインターナショナル化していきます。そうすれば、私たち日本人自身がこれまで眼を向けなかった、また気づかなかった新しいものが登場してきたり、新しいカルチャーが生まれてくることでしょう。かえって国内旅行の方が新鮮で目新しい。近い将来、そんな時代がくるかもしれません。

今回は日本と中国を比較し、日本の団体ツアーのあけぼのについて触れましたが、実は日本ほど特殊な海外旅行の形態を持つ国はありません。それがどのようにして生まれ、どのような功罪を私たちにもたらしているのか。今後も折りをみて、日本人の海外旅行クロニクルをお届けしたいと思います。どうぞお楽しみに!

花鳥風月

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