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人生を豊かにする「いい旅」をしよう
みなさん、2009年あけましておめでとうございます。今年の年末年始はなかなかグッドなカレンダーでしたから、ゆっくり休めた方も多かったことでしょう。これで、景気さえよければ史上最高の海外脱出人数となったかもしれませんねえ。本当に、一日も早く少しでも明るい未来が見えてくるといいのですが。
ガラガラのカラカウア通りで思う
不景気不景気と大合唱の2008年暮れにハワイとタイに続けて行ってきました。アメリカ経済好調の波に乗り、メインランドからのゲストがどっと増えたハワイが大規模な再開発とリニューアルに着手したのは2005年のこと。当時は、ホテルの予約が取れず四苦八苦したものでした。ところが・・・。工事も最終段階に入りつつある2008年中旬あたりから形勢は一気に逆転。
理由はご存じのとおりサブプライムローン問題。あっという間に本土からのゲストは激減。やっぱりお得意様は日本人・・・かと思いきや、高騰し続けるサーチャージと米国経済悪化が日本にも波及して、2008年12月のハワイはガラガラ。これがあのカラカウア大通りか、と目を疑うほどの人気のなさ。たまに見かける旅行客は、「ああ格安ツアーだな」というのが一目瞭然の若い世代ばかりなり。ハイクラスのムードを漂わせている人は皆無に近いのでした。
ハワイは9.11以来のさむーい年の瀬
それでもオアフ島はまだまだいいほうなのだとか。ホノルルマラソンなどのイベントはあるし、年越しに訪れる芸能人も何とかキープ状態。悲惨なのは他の島々です。あちらの頼りはほぼメインランドなので、現在はレイオフと経費削減のラッシュらしい。でもホテルもお店もクローズするわけにはいきません。こんな厳しい年の瀬はSARS以来ではありますまいか。
トホホな感じのワイキキ再開発、でも買い物には最高
観光客の熱気が失せた再開発エリアの目玉、ルーワース通りを歩いてみるとこれが残念極まりなし。あれだけの投資をしながら結果はこれか、とアメリカ人のコンサバぶりにはちょっと落胆を隠しきれないほどです。それに引きずられるように、かつて感動を与えてくれたレストランの多くも、びっくりするほど繊細さとキレを失っている。でも、不思議なことにアメリカ人には大人気なのです。嗚呼。
しかし、悪いことばかりじゃありません。人が少なければビーチは静かできれいだし、食事も待たずにゆっくり楽しめますからね。そしてショッピング! DFSをのぞいたら、まさかまさかの50%オフ。これには驚きましたねえ。今年はさらにサーチャージも見直されますから(もしかしたらなくなるかも・・・)、余裕のある人にとって、いや余裕なくたってハワイはお得感いっぱいの行き時・行き場所といえるでしょう。
デモ解散直後のバンコクに降り立つ
閑散としたワイキキを飛び立って、次なる目的地はタイのバンコク。ここもやはりご周知の通り、タクシン派傀儡政権退陣を求める民主派デモにより、首相府から国の玄関口であるスワンナプーム空港までも占拠・閉鎖されておりました。私のハワイ滞在中は、ピケ隊が解散するかしないかというぎりぎりのところ。タイ訪問は取りやめるべきかと非常に迷いました。が、おそらくプミポン国王のお誕生日12月5日に合わせて事態は収拾するはずと考え、チケットは保留したままに。これがドンピシャ。予定どおり機上の人になったのでした。
しかし、機内はほとんど1列に1人という、これまた生まれて初めてというくらいの人口密度の低さ。その大半が帰国できずにいたタイ人やエアクルーたち。数少ない「正規の」旅行者である私に、キャビンアテンダントの気を使うまいことか・・・。到着したスワンナプーム空港は、破壊行動が行われなかったこともあり、システムはデモ解散後に即復旧したといいますし、構内も全く清潔かつ安全でした。そして、予想はしていたけれどこれほどとは、と愕然とするほど閑散としておりました。
観光大国の空港閉鎖は致命的
でも、いくら死傷者がほとんどいなくても、あれだけ国際的なニュースになったデモと占拠は観光大国タイには致命傷に違いありません。バンコク市内はいつものとおりの渋滞で、屋台が並び、老若男女が三々五々出歩いています。しかし一歩ホテル内に入ると事情は一変。「稼働率は?」なんて、気の毒すぎて聞けないくらいのロウオキュパンシー。朝と夜のみコーヒーショップを営業し、メインダイニングはクローズ。アルバイトは解雇、正社員もワークシェアリングで収入半減と、気持がふさぐような話ばかり。気晴らしにタニヤ辺りをぶらいついてみましたが、ここでもすさまじいディスカウントが繰り広げられておりました。なにしろ在庫を処理しないと、次の仕入れができないのですからみな必死です。
いまこそが海外旅行のチャンス
こんな報告ばかりしていると、みなさん「やっぱりこの状況じゃ、海外旅行なんかできないよなぁ」と思ってしまうかもしれませんね。確かに巷には悲観論が蔓延しているし、切羽詰まった状況に置かれている人もおられるでしょう。でも、メディアに流されて思考停止してはなりません。不景気を象徴するようなニュースが流れる一方で、史上まれにみる円高の今こそが、海外に出かけるチャンスだという声も上がっているのですから。
ただこの経済危機、しばらくは続きそうですね。ここ数年、資源高や穀物高などの影響から世界中で急激に生活物価が上昇し続けてきましたよね。日本も例外ではありませんでしたが、バブル崩壊後の15年からの年月をかけて調整に苦心し何とか切り抜けてきました。今度は破たんしたバランスを正すべく世界規模での調整、ある意味リセット、原点回帰が行われようとしていると思うのです。
本物を見極める目を養おう
ホテルに例えれば、かつては大資本・大規模のグランドホテル、リゾート型が主流だったものが、近年は一気に小規模・小資本のブティックホテルが世界中を席巻しました。ダウンサイジング、大から小への移行は時代の象徴的な流れです。小規模、小資本開発の手軽さが結果玉石混合、オーバーサプライという形で返ってきました。これからは、「こんなものだろう」と安直に造られたホテルはやはり淘汰されていくでしょう。結局歴史が物語るように、生きながらえるのは規模や資本の寡多ではなく、揺るぎないコンセプトとポリシー、そして情熱あるマネージメントとスタッフによって運営されていく「本物」だけです。
ですから世界的な経済恐慌から劇的なパラダイムシフトが行われようとしている今、本物を見極める目を養う、好みを磨くことが求められている気がします。高いからいいもの、安いから悪くても仕方ない、みんながしているから、メディアが取り上げるから・・・そんな大勢に流されるような安直さから一歩踏み出しましょう。成熟した安定社会とは? また社会にとって自分にとって本当に何が必要で、そのためには犠牲を払ってもどう取り組むか。そんな価値観を醸成する時がやってきたのではないでしょうか。
海外旅行は異文化に触れること
今度はこれを海外旅行に例えてみましょう。バブル以降、日本人にとって海外旅行は本当に身近な日常的レジャーになりました。見聞や知識、多様性の理解などを豊かに深くできるチャンスが飛躍的に増えたのです。これは素晴らしいことです。その反面、海外旅行がいつでも、何回でも、簡単にできるという認識は、海外に出るか否かの違いだけで、国内旅行とほとんど変わらないものになってしまったと思うのです。むろん国内旅行でも見聞や知識を深めることはできますが、島国の特徴である国境を接した外国がない・・・全くの異文化に触れるという体験はできません。これこそ海外旅行の醍醐味であり、畏敬や感動の源泉であるはず。そしてそのためには他国や他民族、異文化への敬意と理解、ローカルルールの順守という大前提があるのです。しかし安直な海外旅行の繰り返しだけでは、そもそもこの前提すら脳裏をかすめもしないというケースがほとんどではないでしょうか。それが「どんなところにもTシャツとサンダルで入る」「モニュメントに落書きをする」「集団で万引きをする」などという恥ずかしい事態を引き起こし、日本人観を貶(おとし)めることに一役も二役も買ってしまうのです。
ベトナムの世界遺産、ハロン湾への行き方
11月号でご紹介したベトナムの世界遺産、ハロン湾へのデイツアーについて政本さんからご質問をいただきました。「ハノイからハロン湾行きミニバスはどうやって手配したらよいのでしょうか。申し込み方法などをを教えてください。よろしくお願いします」
いつもご愛読ありがとうございます。政本さんがおっしゃる「ミニバス」とは、どのような定義のものかはわかりかねますが、私が文中で紹介した安いツアーは小型バスによる送迎込み、即ちホテルに迎えに来てくれるもので、特定の乗り場から出発するものではありませんでした。ハノイ市内のあちらこちらに個人旅行者を対象にした旅行案内カウンターがありますので、申し込みはどこでもできます。ちなみに私は旧市街のホテル訪問中に偶然見つけたところで手配しました。
ハロン湾ツアーは何社も催行していますし内容もさまざまですが、今回私が参加したのは、ハロン湾日帰り往復バス+ハロン湾クルーズ+船上ランチ付きで$20。これを目安にしていただいて、ご自分のスケジュールや希望に合う条件の現地ツアー会社のものを選択なさればよろしいかと思います。もちろん日本の旅行会社でも企画していますが、こちらはかなりイイお値段です。