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私を美術館に連れて行かないで!
みなさま、美術館や博物館はお好きですか。国内でも海外でも機会があれば積極的に足を運ぶという方もいれば、国内ではあまり行かないけれど、海外の有名ミュージアムなら話は別という方もいそうですわね。そして感想はといえば、感動よりも「でかい! たくさん飾りすぎ! とにかく疲れた!」が多数派ではなかろうかと。ええ、マダムも、そんな正直すぎる1人でございました。
美術館は疲れるだけ!?
幼少の頃から「お勉強」でしか美術館に行ったことのない、つまり芸術に興味などてんでないコドモだったわたくしにとって、美術館は人混みにエンエンと揉まれつつチラッと絵を見るところ。つまり上野のパンダと同じレベルだったのでございます。途中で飽きるし、首と肩と足が死ぬほど疲れるし、そのくせあっという間に数時間が過ぎてしまうし。そんな経験から、単に本物を観たというアリバイのためなら、別に美術館なんか行かなくてもいいやという、身も蓋もない考え方になってしまったのでございます。
マダムを開眼させた「絵を観る旅」
そんなマダムの脳みそをシェイクしてくれたのは、10年ほど前にグリンデルワルトで出合ったひとりの日本人女性。たまたま同席したレストランで、彼女がこう語ったのです。私はフェルメールの絵が好きで、その全作品を観るためにお金を貯め、時間を作って旅をしているんです・・・。驚きでした。そうか、そういう「絵画の見方」もあるのか、と。今でこそ同趣旨のツアーやガイドも多数出ておりますから、もっと簡単に目的は達成できることでしょう。しかし「見せてもらう」のではなく「見に行く」ために考え、学び、費やした時間は、計り知れない豊かさを彼女に与えてくれたに違いありません。ああ、なんと素晴らしい旅の仕方なのでしょう!
思いを改めたわたくしはその後各地で美術館を訪問し、自分なりの「この1枚」を探すようになりました。なりましたが・・・やはり疲れとの闘いなのです?。特に後半はメロメロ。そこで試行錯誤の末、マダムが編み出したマイ美術館攻略法を、同じように美術館に翻弄されているみなさまに、こっそりお教えしたいと思います。ちょっと邪道ですけど、どうぞお怒りにならないでくださいましね。
好きな作品にたっぷり時間をかける
まず、自分の好きな作品、どうしても見たい作品があるかどうかチェックします。入館したら一直線にそこへ。そして目的の作品鑑賞に、じっくり時間をかけるのです。順路通りまた義理堅く、さして興味のない作品を見るのはキッパリやめること。そうとうの心力がないと途中で飽きますし、メインイベントの感動も半減してしまいます。その他の作品は、あくまで脇役扱いですませる勇気が必要です。主役に専心するため、あえて閉館間際に行くというのもひとつの手。自ら制限を設けて優先順位をハッキリさせるのです。また閉館間際には入場料が割引や無料になるところも多いので、ダブルでお得かもしれません。
そんなもったいないことはできないというのであれば、最低でも半日は費やす覚悟で。途中で疲れたらカフェでお茶を飲み食事をして、エネルギーを再チャージ。1枚1枚じっくり向き合いましょう。こうした鑑賞法の利点は、これまで興味の無かった作品に、新たな魅力を発見できることかしらん。時間のたっぷりある滞在の時は、ぜひチャレンジしてみてくださいね。
観賞は1人で、が原則
最後に、そして美術館観賞で何よりも大切なのは、1人で行くことです。いえ、入館まではだれと一緒でも構いません。しかし観賞はぜひ別行動を。自分のペースで、好きなように好きな絵を観る。気になる作品を、戻って再び観る。これができないと美術館は面白くありません。解説が必要ならガイドブック(近年は詳細な解説が載った日本語版も発行されていることが多いです)や、イヤホンガイドを借りましょう。時間を決めてカフェなどで落ち合えば、多少待たされてもイライラすることはありませんわよ?。つまり、美術館は「連れて行ってもらう」のではなく、自らの意志で行くべき場所なのです。
ウィーンで優雅な美術鑑賞
まだ数少ないマダムの美術館訪問歴ですが、その中から「これぞ優雅の極み」という1軒をご紹介いたしましょう。それがウィーンの美術史美術館です。個人的にはオーストリア応用美術博物館やウィーン犯罪博物館なんかも好きですけど(趣味バレバレ)、短い滞在でどこか1軒といえばやはり御大ですわね。といっても、ただ観賞に行くのではありません。木曜の夜に開催されるブッフェが狙い目です。これはカフェ「ゲルストナー」を舞台にした実に豪華なもの。素晴らしいのは、食事をしながら展示室も見に行けること! 日本ではあり得ない大人の対応です。食事はオーストリア産のフレッシュな白ワインや洗練されたデザートが印象的で、流れていく時間はとてもきらびやか。まるで世紀末ウィーンにタイムスリップしたような気分になれます。同美術館ではサンデーブランチも有名ですが、雰囲気でいったら圧倒的にディナーブッフェに軍配、ですわよ!
よく日本のガイドブックは有名な絵だけをピンポイントで観るように書いてあると批判されることがありますが、自らの芸術観が固まっていない人にとって、これは時に有効なアドバイスだと思います。大切なのは「何が好きか」「興味があるか」「気になるか」という自問自答を繰り返していくこと。その中から、「どうしても観たい!」という作品が浮かび上がってくることでしょう。どうぞ、たっぷり時間を取って、芸術の世界を楽しんでくださいね。では、また来月。Ciao!
サンフランシスコで結婚式に出席なさるという石田様から、同地ホテルでの着物の着付けについてご質問をいただきました。石田様、ご滞在が無事におすみになりましたか? またその様子もお知らせくださいね!
特典航空券についてはルパン様から、チャイナエアは比較的取りやすくまたフライト時間も便利だというご報告が。実はマダムも、友人から「ヨーロッパに行くならチャイナエアはイチ押し」という情報を得ております。確かに往路羽田発・復路成田着と、ほほうな工夫も・・・。ご利用経験者のリポートお待ちしております。
またくぷりん様より、ヨーロッパ行き得点航空券の予約方法として「同アライアンス内で時間的に乗り継ぎ可能なら、往路、復路、乗り継ぎ便、全部ちがう航空会社を利用できる」「出発地(日本)へ戻ってくることが条件ですが、成田から出発して関空へ戻ることも可能」「目的地の他にもう1カ所、降りる(入国する)可」という条件を上手に使えば、「たくさんの乗り継ぎは大変ですが、単純往復で使用するのとそう変わらないマイルで色々な飛行機のビジネスクラスを体験できるので、とてもお得なのではないかと思います」というアドバイスをいただきました。くぷりん様のルーティングは非常に興味深いので、いずれ詳しくご紹介いたしますわね。ちなみに最も大変なのは関西と成田間の確保だそうです。なるほど?。
「Can I get a refund for this ticket?」
あらかじめチケットを購入しておいたけれど使う機会がなさそう、間違って購入してしまった、もしくは列車やバスを乗り過ごしてしまったときに、「このチケットの払い戻しは可能かどうか?」とたずねるときのフレーズです。すでに刻印日時が過ぎていたとしても対応してくれる場合があるので、だめもとでトライしてみましょう。
芸術へのアプローチは「好き」「嫌い」から
芸術は決して「お勉強」ではありません。素直に「好き」「嫌い」と感じることから、理解への道は開けていくのです。