アメリカン・エキスプレス
ミスターMのおいしい旅の話「次の旅はここへ行け!」
Vol.
49

LCCが変える旅のスタイル

ミスターMのおいしい旅の話 LCCが変える旅のスタイル

みなさん、LCCという言葉を聞いたことがありますか? これはローコストキャリア、すなわち格安航空会社のこと。言葉自体は知らなくても、中国の春秋航空が上海-茨城間の航空券を4,000円で売り出し19分で完売と大きな話題になったことはまだ記憶に新しいと思います。メディアではその戦略を面白おかしく取り上げるパターンが多いようでしたが、実はこのLCC、私たちの旅のスタイル、いえ、ライフスタイルすら変えてしまう大いなる可能性があるのです・・・。

すでに1960年代に登場していたLCC

世界的な不況と冷え込む一方の消費。LCCはそんな時代を背景に華々しく登場したように見えますが、先駆は航空機産業の中興的歴史ともいえる1960年代まで遡ることができるのです。発祥は広大な大陸を有する欧米。旅行がライフスタイルの土地柄、車や鉄道に変わる効率的な移動方法として、点から点を単純に結ぶ安価な便を飛ばす航空会社が出現しはじめたのです。同じ大陸でもアジアにその萌芽がなかったのは、経済や旅行需要がそこまで円熟していなかったからなのですね。

日本マーケットでは70年代に入るとジャンボジェット機の導入が進み、パッケージツアーの先駆けも登場しますが、主流はチャーターや団体旅行でした。この時代から、航空運賃の動向に絶大な影響を与えはじめたのがIATA(国際航空運送協会)。現在では世界各国の代表的な航空会社が加盟している団体で、その保護のため、航空券の扱いなどの整備、統一ルールの策定から運賃までカルテルと言われても仕方のないタイトなルールを定め連携してきました。思い起こしてください、当時のチケットの高さを。まあ日本は旅行需要が景気とともに膨らんだ80年代後半のバブル景気までは、それでも順調といっていい成長過程だったんですねえ。

時代は団体旅行から個人旅行へ

しかし、90年初頭にバブルがはじけ右肩上がりの需要を期待して新規参入が相次いだ航空業界は、やがて飽和状態を迎え、撤退や合併を繰り返しての再編成がはじまります。と同時に国内では海外旅行がより一般的になり、ライフスタイルへと徐々に変化。手取り足取りの団体旅行だけではなく、航空券も宿も自由に選ぶ個人手配旅行の時代へと進化。その動きに応じるように出てきたのが格安航空券・・・と、ここで注意です。格安航空券とは、最初から安価に設定されたチケットではありません。簡単に言うと、団体ツアー用に売られた割引チケットが2次流通したもの。利益は薄くても、高い航空機燃料で空気を運ぶよりはマシですから、規制がだんだんと緩んでいったのですね。この格安航空券の存在も個人旅行を後押しした大きな要素となりました。

そして現在、個人手配旅行はインターネットの機動力を得て、ますますパーソナルなスタイルへと進化しています。2000年代に入ると、海外旅行に慣れた人たちのシビアな観察眼と合理的思考をスピーディに反映できるWEB販売が、あっという間に旅行準備や選択手段の主流になりました。世界中の旅行代理店やホテル、観光業に関わる業種すべてがパラダイムシフトを余儀なくされたわけです。が、その大変動について来られない業界があったんですね。そう、巨象化した航空会社、メガキャリアです。

「空」が自由になる!

親方日の丸の国営中心に、公然とカルテルがまかり通った航空業界は苛烈な競争下での経営合理化ではなく、逆に人を増やしてサービスや施設を充実させ、関連事業に投資し、どんどん巨大化の道を歩みました。でも、平和な繁栄は長く続かず・・・。2001年のテロ事件、SARSや鳥インフル、スマトラ沖大地震による津波などによるダメージのつるべ打ち。加えて原油高騰による航空運賃の高騰。さらにさらに金融危機から世界的不況。親方日の丸でやってきた競争力のない会社が生き残れるはずがありません。アメリカ、ヨーロッパでは90年代の規制緩和で統廃合が進みましたが、日本では構造改革が大幅に遅れていました。その結果がここへきての、我が最愛のナショナルフラッグキャリアJALの経営危機。これもまた必然だったのでしょうか。

さあ、そこで、LCCの出番です。メガキャリアが時代を謳歌していた頃、ひそかに生まれては消えを繰り返しつつ、静かに実力を蓄えてきたLCC。欧米ではすでに2 割?4割のシェアを有する成長事業となっています。従来の航空会社の常識から離れた合理化された経営とサービス、自由な発想の価格設定とその先見性が、時代の荒波を超えてここにきてはっきりと優位性を見せ始めました。そして世界経済の牽引力がアジアにシフトしてきたのも、柔軟な発想を持つアジアでの LCCの急激な成長を支えています。まあ、これは航空業界に限った話ではないですよね。高度成長を背景に次々にオープンし栄華を極めた百貨店が今や次々に閉店し、生き残っているところも青息吐息。お客は専門店やファストショップ、コンビニへと流れてしまった。「高いものは付加価値も高い」の高価ゴージャス主義は、「必要なものだけを少しでも安く」の安価シンプル主義に変態してしまいましたから。

辺鄙な立地をどう活かし誰にアピールするか

会社の区分では大企業、中小企業という言い方をしますが、私は航空業界に関しては、中大企業と小企業という分け方がふさわしいと考えています。中大企業は言うまでもなくメガキャリア。細部まで分業化が進み、それゆえ大人数を抱える必要があるところ。反対にミニマムの人員で高いパフォーマンスを目指しているのが小企業のLCCです。もちろんLCCは、最先端たるエリート集団で形成されたメガキャリアが巨大な投資をバックにインフラを整え拡大し、運航やサービスマニュアルを構築してきたからこそ、生まれてきた存在です。とはいえこのLCCの台頭は、まさしく時代の変化、進化と感じざるを得ません。やがてメガキャリアとLCCの棲み分けができた新しい時代がやってくることでしょう。

さてさて今回は、そもそもLCCとはなんぞや誕生の背景解説で終始してしまいました。ちょっとカタい話題でしたので、このあとは「花鳥風月」で息抜きしてください。今後は折々に、より多角的にLCCの可能性についてお話ししていきたいと思います。

花鳥風月

バリの隠れ家ヴィラ2軒

バリで見てきたちょっと気になるヴィラの追加情報です。1軒目はウブドにオープンしたザ ヨネ ヴィレッジヴィラ。札幌出身の奥様とバリニーズのご主人が切り盛りする客室ヴィラ2棟のみの小さなリゾートで、コンセプトは「エコ」。朝食は自家菜園の無農薬野菜や米を使い、建物もアレルギーフリーの自然素材がメイン。室内にエアコンやテレビはないのですが、シャワートイレは完備と、結構ツボを押さえています。周りはホタルが舞う水田。パヴィリオンやテントでは食事、ヨガ、舞踏、マッサージなどさまざまなことが楽しめます。まだ方向性を模索中といった感じですが、きっちり作り込めば大化けするかも・・。ヴィレッジ丸ごと借り切りも可能だそうですから、家族連れでのんびりしに行くのもいいですね。

もう1軒はジンバラン プリ バリ。いちばん奥まったところにプールヴィラができたばかりですが、最初は「ナゼこんな場所に?」。しかしビーチに出てナットク。波の音が意外と大きいので、夜間の静寂を考慮しての配置なのですね。広いヴィラは、あえて家庭的な雰囲気でまとめられています。料金は決して安くはないのですが、驚くことにずっと満室続きだそうな。欧米人、中でもロシア人の長期滞在が多いのだとか。このリゾート、エントランスはなかなかドラマチックだし、プールからレストランへいたる構成も素晴らしい。ディナーに命をかけてる欧米人にはたまらないのではないかと(笑)。ジンバランでは古株ですが、「隠れ家」としたのは、ズバリ日本人が少ないからです。リゾートでは徹底的に非日常に浸りたいという人なら、そのよさがわかってもらえると思いますよ。

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