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魅惑の都市でプチ・グルマンを楽しもう~アジア周遊編 その1
すでに韓国、バンコクといった人気都市をご紹介してきた「プチ・グルマン」シリーズ。今回は香港、シンガポール、クアラルンプールという、バカンスはもちろんビジネストリップでも需要の多いアジアを代表する3都市から、ここなら絶対外さない、私のお墨付きレストランをピックアップしました。おいしいものを食べるゾ?と情熱を燃やす人には当然ですが、接待や食事をしながらのミーティングなど、ビジネスでの利用にはとりわけ効果大。海外でのレストラン選びでお悩みの方は、ぜひリストに加えておいてください。
香港では珍しい上海料理の神髄を味わうなら
揺るぎない名声を得ている老舗からモダンなアレンジで耳目を集める新興店、屋台に甘味喫茶、お粥からゲテモノ専門店まで、町そのものが巨大かつバラエティに富んだフードコートのような胃袋都市、香港。よほどのことがなければ「これはヒドイ!」と愕然とするような飲食店にぶつかることはありませんが、反対に「これこそが絶対唯一の店」と断言するのもまた難しいのが事実。これこそ食のレベルが高い証拠。香港では食にこだわりのある人ほど、どこに行っていいのか途方に暮れてしまうのではありますまいか。
今回のおすすめは、誰も迷うことなく行ける美味い店「滬江大飯店」(ウーコン・シャンハイ・レストラン、B/F Alpha House, Nathan Rd.)です。カオルーン ホテルと続きになるビルの地下という好立地にあり、ランチタイムから深夜まで通しで営業している便利なレストランです。日本人に親しみやすい味の上海料理ですが、実は香港では上海料理の専門店があまり多くありません。それだけに有名店はレベルアップにしのぎを削っています。この滬江大飯店も、洗練されたウッディなインテリアときびきびしたサービスが特徴。週末は地元の人たちで賑わうのもその実力を物語っています。
何をオーダーしても失敗なし!
ここでは何をオーダーしても失敗なし心配なし。素材良し、味良し、清潔感たっぷりな店です。ジューシーなスープが口いっぱいに広がる小龍包、シンプルなのに奥の深い小エビの素炒め、車エビを使った濃厚なエビチリ、もちろんシーズンには上海蟹もマストですが、私が言葉を失ったのは紹興酒にソフトシェルクラブをつけ込んだ「酔っぱらい蟹」。これが、もう・・(お察しください)。他にも紹興酒づけの鳩やナマコの煮物など、オリジナルメニューも盛りだくさんです。できるだけ大人数で、そしてできるだけお腹をすかせて出かけてください。
本物を知っている人にこそ足を運んで欲しいKLの中華
これまでもアジア各地のグルメ・スポットを紹介してきましたが、今さらながら中華の登場率の高さに驚いています。なにしろ旅先で困ったら中華を探せ、というくらいですからね。中華のレベルが高ければ高いほど、全体のクオリティも上がっていくのかもしれません。チャイニーズパワー恐るべし、です。
マレー、インド、中華の各民族が群雄割拠(?)しているクアラルンプールでも、私のイチ押しは中華です。マレーシア政府が総力を挙げて建設中のショッピングコンプレックス「パヴィリオン」の向かいにあるグランド ミレニアム クアラルンプール。このホテルが擁する中華レストラン「晶苑」(Zing)がそれ。豚肉を使わない伝統的な広東料理をモダンにアレンジしたメニューの数々、素晴らしいワインリスト、しっとり&ゆったりとした大人の空間と、パリッとした格調の高さを感じさせるスタッフのサービス・・・。決して万人向きではありませんが、本物を知っている人ならそのレベルの高さが実感できるはずです。
飲食施設が充実しているグランド ミレニアム クアラルンプール
私にとっても晶苑でのひとときは、かつて香港の広東料理ここにアリと名高かった現インターコンチネンタル、懐かしきリージェント ホテルの「欣圖軒」(ヤントウヒン)で味わった感動に匹敵するものでした。ちなみにグランド ミレニアム クアラルンプールも、つい最近までリージェントだったホテルです。大々的に改装しているので昔日の面影は全くありませんが、美しくお化粧直ししながらも隠しきれないエイジングがチラホラと・・・。それでもロケーションの良さと晶苑をはじめとする飲食施設のレベルの高さは健在。ショートステイにはうってつけのホテルといえるでしょう。
シンガポール一人旅に使いこなしたいカフェレストラン
香港と同じく食のパラダイスといわれるシンガポール。ここでは一人旅での食事に、ちょっとした休憩にと便利に使い回せるしゃれた雰囲気のカフェレストランを紹介します。場所はオーチャード通りとスコッツ通りの交差点近くに建つグランド ハイアット シンガポール内。「メザニン(=Mezzanine)」を「Mezza9」と書き換えたシャレた店名です。その名の通り中二階の開放的な場所にあり、和食からスウィーツまでインターナショナルなメニューがそろっています。
その日、チェックインがかなり遅くなってしまった私は、とりあえずコーヒーでもとこのレストランへ出かけていったのですが、驚くべきことにお客さんの大半が一人で食事をしているジェットセッター風ビジネスマン。食事情に優れているシンガポールで、ゲストに外食させないというのはかなりのもの。コンテンポラリーでユニークなデザイン、オープンキッチンというカジュアルなムード、そして手頃な値段。スタッフも気が利いて親切ですから、壮年の男性だけでなく、若い女性でも夜遅くに気兼ねなく食事を楽しむことができるはずです。
グランド ハイアット シンガポールに滞在する楽しみ
このグランド ハイアット シンガポールもまた、かつてはハイアット・リージェンシーという名前でした。1980年代の初めには現在のハイアット ホテルズの社長が総支配人を務めるなど、ハイアットの歴史の中でもキーエグゼクティブを輩出してきた由緒ある存在です。フィリピンのアライヤ財閥からブルネイのブキティマ国王へという、財源豊かなオーナー遍歴も華麗。現在は2棟で構成される客室のうち1棟は全室スイート仕様。オープンから長い年月が経っていますが、メインテナンスに抜かりはなく、なのにどこかかつてのオーチャード界隈の雰囲気が漂っているのが魅力です。世界レベルでホテル内の飲食施設の簡素化が進む昨今、シンガポールは反対に飲食施設がますます充実していく希有な都市。滞在していると、その熱気が直に伝わって来るような気がします。
怪しさ爆発!今だからこそ行くべき深セン
香港での洗練されたグルメ三昧に飽きたら、尖東駅からKCRに乗って、かつての国境の町、深センへ繰り出してみませんか? お目当ては、駅の真ん前にどーんとそびえる巨大ビル「羅湖商業城」(ローウ・ショッピングセンター)です。実はこのショッピングセンター、大きな声では言いにくいのですが、扱っているもの全てがフェイク、しかも世界的にも精巧なフェイクぞろいというある意味すごい場所。いえ、決して買い物はおすすめしません。基本は見学です。本物と偽物を上手に使い分ける香港の人々は、一体どういう品を買いに来るのか、丁々発止のディスカウントのコツとは、西洋人が集まってくるショップの特徴は、今度のし上がりそうな目利きがいる店はどこか等々、マーケットの裏側にスポットを当てて楽しんでいただきたいのです。
日本や韓国がそうだったように、中国もオリンピックとエキスポが成功裏に終わって初めて、一流国への仲間入りを果たすことになるはずです。ですから現在は必死にその土台作りに取り組んでいる最中。このような存在は今のところ、ある種の中国文化のひとつとして、国や人民の活力を高めるために見て見ぬふりをされていますが、時代の流れの中で霧散していく可能性が大。だから今こそがアツさ絶好調だと思うのです。ついでに駅前のなんてことはない中華料理屋へもぜひ。香港とはまた違う、中国そのものの活気を感じることができますよ。これぞ深センの知られざるグルメ・・・かもしれません。