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魅惑の都市でプチ・グルマンを楽しもう~バンコク編
2008年度初のグルメ特集はバンコクです。レストランはもちろん屋台でも大満足の食事ができる美食の都。ここではダメな飲食店を探すほうが難しいかもしれません。ま、中にはアゼン・ボーゼンのレストランもあったりしますが、そんなことは稀なケース。というわけで今回はどこを紹介しようかと迷いに迷いましたが、バンコク市内でも洗練されたムードが漂うランスアン通り周辺をメインに、昼も夜も大満足のレストランをピックアップしてみました。
ランスワン通り界隈はバンコクの南青山的存在
BTS駅のチットロム駅から南に走る短いストリートがランスワン通りです。道路でいえばちょうどプルンチット通りからスクンヴィット通りに変わるあたりかな。ここは昔から欧米の大使館や領事館が集まっており、1本隣りを走るワイヤレス通り界隈とともに、外国人用の高級レジデンスや形成外科、審美歯科が目につくような垢ぬけた場所だったんです。
そして近年のさらなる開発により、レストランもまたハイレベルのクラスのものが登場してきました。そのたたずまいが、これまた素敵なんですな。「いかにも」的な感じがまったくなく、街路樹に隠れるようにひっそりとしたエントランスを設けている店あり、シックなデザインありと、独特のスノビッシュなムードが漂っています。日本の南青山や代官山あたりを想像してもらうといいかもしれません。
大人だからこそくつろげる極上ビストロ2軒
さて、ランスアン通りおすすめの1軒目はビストロの「カルデラッツォ・ビストロ(Calderazzo Bistro)」。マリオット メイフェアの路面側に、まるで一軒家のように造られているガラス張りのお店です。明るいサンテラス風の内部は、白いテーブルクロスがまぶしい上品なしつらえ。料理はイタリアンフュージョンで、前菜、メイン、デザートを選ぶプリフィクススタイルです。ボリュームが比較的少なめなのは、パワーブレックファスト、ビジネスランチ、接待ディナーと、仕事と食事が切り離せないエグゼクティブへの配慮? なんてことはないかもしれませんが、ランチとしては重すぎず少なすぎずで大変満足でありました。夜は夜でしっとりした雰囲気になりますから、ロマンティックなひと時を過ごすのにもぴったりです。丁寧で気持ちのよいサービスも、シビアな目を持つビジネスマンに支持されているポイントですね。
もう1軒は「ルノートル(LENOTRE)」1号店がシーロムのソフィテルにオープンしたとき、バンコク駐在の邦人女性スタッフは「これで日本レベルのケーキが食べられる!」と、嬉し涙にくれたとか・・・。そんなルノートルも今ではバンコク市内5軒に拡大。ランスアン通りはナチュラル ヴィレの1階に店舗があります。いつ行ってもディナータイムは満席。集まっているのは、やはり駐在外国人やアッパークラスのタイ人たちです。お味の方ももちろんGood。新鮮なサラダやキッシュ、コンフィなど、いかにもビストロ風のおなじみメニューがそろっています。
洗練されたタイ料理を楽しみたいなら
タイ料理は好きだけれど、ハードすぎる辛味がつらいという人は「バーン・カニター&ギャラリー(Baan Khanitha & Gallery)」なら大丈夫。場所はランスワン通りから東に2本目のルアムルディ通り沿い。ギャラリーを併設したスタイリッシュなレストランです。辛さを上手に抑え、素材の味や歯ごたえを活かしたタイ・クイジーヌは、食に保守的な欧米人にも大好評。ちなみにこのレストラン、本店はスクンヴィットにあって、かつて日本のロイヤルファミリーも訪れたこともある有名店。連日、日本人観光客で大賑わいだそうですから、足を運ぶなら穴場的な存在のルアムルディ店をおすすめします。
シーロム周辺でちょっと一休みというときや、軽くランチを取りたいときの私のお気に入りが「ジム・トンプソン・カフェ(Jim Thompson’s Cafe)」。シルク専門店ジム・トンプソン本店の2階にあるカフェです。やや奥まった位置にあるせいか比較的静かで、ゆっくり過ごすにはもってこい。ソムタム、パッタイ、トートマンプラー(タイ風薩摩揚げ)といった定番メニューが、気軽に食べられるのがいいですね。どうやら駐在員の奥様方のサロン的な場所でもあるらしく、彼女たちの厳しい視線がこのカフェの洗練度アップに一役買っているようです。
これぞ大本命。バンコクで最高のフカヒレを食べる!
バンコクの「食」を語るとき、実は絶対に外すことができないのがフカヒレであります。フカヒレといえば中華のイメージですが、香港や中国で供されるフカヒレのほとんどが日本から輸出されているのをご存じでしょうか? その点、タイのフカヒレはピュアな地元産。つまり本場の本物が味わえるというわけです。確か30年前は100バーツも出せば、どんぶりからはみ出るほどのフカヒレが食べられたものですが、今や100バーツでは、はるさめの中に筋がちょぼちょぼレベル。同じボリュームを求めるなら、価格はその2~30倍は覚悟しなければなりません。タイの食材の中では最も高騰した人気食材、それがフカヒレなのですね。しかし香港なんかに比べたら、遙かにリーズナブルなのですから、グルマンとしては食さないわけにはいきません。
数あるタイのフカヒレの名店の中で、真打ちといえば「ギャック・フカヒレ・レストラン(Surawong Kieak Shark Fin Cuisine)」にとどめを刺します。名前の通りここはフカヒレ専門店。ただし、この店で覚悟しなければいけないのは値段だけではありません。店内は二の足も三の足も踏んでしまいそうな小汚さですし、トイレもローカル式。かなりハードルは高め。なのに最高級の接待店として国賓クラスのお客もここを訪れているのですから、恐れることはありません。フカヒレをはじめ、アワビやアヒルまで、何を食べても打ちのめされるほどのおいしさに感涙。これほど見事なタイ料理と中華のマリアージュは、ちょっとやそっとではお目にかかれません。場所はスリウォン通り。近くのパッポンで散財するのなら、その1夜分をフカヒレに捧げてみてください。
バンコクで絶品の朝食が味わえるホテル
朝食はそのホテルの品格を物語る。なんてちと大げさですが、私にとってブレックファストタイムは、ホテルチェックの大切なポイント。「これぞ!」という幸運な出合いは意外と少ないものですが、バンコクには忘れがたいひとときを味わわせてくれたホテルが2軒ありました。
改装により、現代的という言葉だけでは収まらない独特の美しさを放つデュシタニ バンコク。私はロッテのソウル ホテルに匹敵する改装の成功例だと思うのですが、中でも飲食施設の素晴らしさには目を見張らされます。クラブルームに滞在したゲストだけが利用を許される朝食ルーム「イル・チェーロ」は、朝食時にありがちな慌ただしさとは無縁の、落ち着いたラウンジ風。ブッフェスタイルではありますが、ホットミールは作りたてをサーブしてくれます。このオーダーシートがすごい。調理法はもとより、トッピング、ソーズ、付け合わせ(とその調理法)まで選べる細かさ。ゆったりとしたチェアに座っての申し分のない朝食。選ばれた人だけが教授できる贅沢なのです。
これまでのヨージ・ヤマモトからコム・デ・ギャルソンにユニフォームを一新したメトロポリタン バンコク。手がけるのはロンドン拠点のコモ・ホテルズ。トレンドの一歩先を行くブレのない戦略で、オープン以来高評価をキープしているスタイリッシュなホテルです。会員と宿泊者しか入店できないバーや、ヘルシーコンシャスなオーガニックレストランなど、飲食施設にも斬新なアイデアを取り込んで、ゲストのセレブ感をくすぐる手腕は実に見事。ここの朝食で、一度は食べて欲しいのがワッフルです。たいがいの人がメニューを開かずにブッフェで済ませてしまいますが、このようにオーダーサービスが可能なメニューもあるのですな。ココナツのきいたワッフルに甘さ控えめのパームシロップをかけまわし、サイドにフレッシュなマンゴーやパッションフルーツがどっさり! 絶品! 他のメニューもおいしいのに、私はどうしてもこのワッフルを食べずにはいられないのです。嗚呼!