世界を知る努力、していますか?
海外旅行がこれだけ一般的になっているにもかかわらず、日本人は海外でトラブルに巻き込まれやすいと言われています。ある程度長く海外に滞在している人でさえ、生活習慣になじめない、あるいは日本人だけで固まることが多いようです。
残念ながら日本では、世界に通じるトラベラーになるための基本教育が学校でも、そして数あるガイドブックにおいてもなされていません。たとえあっても、悲しいかなその手の本は売れないのです。そのため、海外旅行がごく身近なものになっているにもかかわらず、いまだにさまざまなトラブルに巻き込まれてしまうことが多いのです。
不用意な行動が犯罪を誘発することも
旅の基本は、まず世界の常識を知り、最低限の自己防衛を常に心がけることです。旅とは観光地やレストランを調べるだけではなく、それぞれの土地で留意すべきことを学び、情報武装することから始まります。その地の文化、習慣、儀礼を知る。そうすることが、たとえ付け焼き刃であっても、「ネギを背負ったカモ」とは何か違った雰囲気を漂わせる足がかりとなるでしょう。また、悪意を持った相手に付け入られにくい、スキのない雰囲気づくりも必要です。それにはまず無防備な行為とは何かを知ることが必要です。
例えば、人前でクレジットカードやお金のたくさん入った財布は絶対に出さないこと。これは基本中の基本です。時々、支払金額がよくわからないから必要額を抜いてくださいとばかりに、見知らぬ相手に財布を差し出してしまう人がいます。これは人を信じる・信じないの問題ではありません。そのような行為自体が、場所によっては「犯罪行為」になりうるのです。他人のモノを盗むことが犯罪なのは当たり前ですが、無知な異邦人が、土地の人に無用な気を起こさせる種をまく行為自体もまた「犯罪」。その地の文化性を無視した行為なのです。
窃盗のような軽犯罪が日常的に起こる国では、このような、いわば「被害者に非がある」と思われるケースについては、犯罪とすら見なされないでしょう。一方、被害にあった多くの無防備な観光客は、ひどい所だとひとり憤慨しながら現地警察に駆け込みます。が、よくよく話を聴けば「これでは被害にあっても仕方がない」という状況。警察も「自業自得じゃないか。迷惑なのはこっちだよ」と思いながら、しぶしぶ保険請求用の調書を書く・・・というのが実情です。
「知る」ことが自己防衛の第一歩
日本では「不便を受け入れる、我慢する」ことを忘れてしまったか、「不便=面倒」と毛嫌いする人が増えているように感じます。確かに「便利」は素晴らしいことですが、便利万能はサバイバル能力を低下させるもの。それが、海外でのサバイバル力、トラブルシューティング力がなかなか身につかない一因ではないでしょうか。
異文化コミュニケーションの第一歩は、相手の文化、習慣をあるがままに受け入れ、認めることです。そしてそれを日本人の尺度で「良い/悪い」と測らないこと。今こそ「郷に入らば郷に従え」の精神で旅してみてはいかがですか。旅がもっともっと味わい深くなること請け合いです。