アメリカン・エキスプレス
ミスターMのおいしい旅の話「次の旅はここへ行け!」
Vol.
128

「開けた秘境」ブルネイを行く

ミスターMのおいしい旅の話 「開けた秘境」ブルネイを行く

マレー半島の東にあるカリマンタン島(ボルネオ島)の北部に、三重県ほどの面積を有するブルネイ。国名は聞いたことがあっても、実際はどんな国なのか知らない人も多いのではないでしょうか。正式名称はブルネイ・ダルサラーム。豊富な天然資源に恵まれた不思議に平和な立憲君主国、そんな「開けた秘境」に、このたび初めて足を踏み入れることになりました。

ほれぼれするような整然とした町並み

ブルネイの評判は両極端で、ある人によると「地上の楽園」、ある人によると「世界一退屈な国」。シンガポールやマレーシアの延長のような場所だろうなあ、と想像していたのですが、足を踏み入れてみれば、ほぼ評判の通り。楽園であると同時にまったく刺激のない国なのでありました(笑)。町並みは、とにかく整然としているナのひと言。高い建物がなければ、看板も広告もネオンもほとんどない。どこを見ても清潔ですっきり。この「町が毒されていない感」は感動的ですらあります。聞いた話によると、人口が約45万人しかいないためクチコミが宣伝の役割を果たしており、街頭での宣伝広告の類いは必要がないのだとか。よって広告代理店的な存在もないのですと。仕事として成り立たないですからね。

この町づくりは、先代国王が、親友だったシンガポール初代首相リー・クアンユーからすべてを学んだと言われています。確かに、目隠しをしてブルネイ中心部に連れてこられ、「シンガポール郊外の町だよ」と言われたら、素直にうなずいてしまうほど良く似た雰囲気です。違いは車ですかね。税金がない豊かな国ですから、どんな高級車が走っていてもおかしくないのに、ほとんどが日本車。ランクル、セダン、そして軽まで車種はさまざま。実はブルネイは日本にとって重要な貿易国のひとつ。石油・天然ガスを輸入し、車輛を輸出するという、良好な関係を保っているのです。

幸福な国民の生活、その裏には…?

現在の元首はハナサル・ボルキア国王。国民は各種税金はもちろん、医療費、教育費などすべてが免除されており、さまざまな国営機関を利用した時はブルネイドルで1ドルを渡す。これが「支払い」となるそうです。例えば出産するならブルネイはもちろん、通貨協定を結ぶほど緊密な関係にあるシンガポールでもOKで、その際も飛行機代から入院費、診察費まですべて含めて1ドルぽっきりなのだとか。もちろん全国民がその恩恵に預かれるのですね。何ともうらやましい話です。

生活が保障されていると、人間はエネルギッシュとかハングリー精神という言葉とは無縁になってくるものですが、ブルネイの人々もおっとり、のんびり。あえて国を出てまで稼ぎにいく必要もなく、家族を大切にしたシンプルなライフスタイルが敷衍しているようです。子供が多く治安もいいですしね。とはいえ2014年から段階的にシャリア法が導入されていることを考えると、観光客にはわからない「圧」のようなものもきっとあるのでしょう。インターネットの発達とともに民主化運動が高まりつつある他のイスラム諸国のように、見えないところで不満分子が育っている可能性もないとは言えません。

ブルネイの必見スポット

そんなブルネイの観光ですが、有名なのは美しいミナレットを持つモスク見学と、手つかずの自然を舞台にしたエコツアー。ボートで行くジャングルツアーでは、マングローブの群生や野生動物をたっぷり観察できます。そのツアーで必ず訪れるのが、世界最大の水上集落カンポンアイール。ここはすごかったですねえ。約25000人が暮らすという群は、俯瞰するとまさにアジアのヴェネツィア。一見の価値あるスポットです。そして個人的に非常に面白かったのが石油の町セリア。セリアの街のいたるところで稼動する掘削機! まさにオイルマネー造成マシーン。オイル・ガス・ディスカバリーセンターも興味津々でした。

スゴい! 世界に誇る7つ星ホテル

さて、お次は買物、と言いたいところですが、ショッピングモールはブルネイで1カ所のみ。携帯、アクセサリー、田舎の洋装店みたいな代わり映えのない店の集まりで、な~んの興味もわきません。みなさん、ほしいものがあればシンガポールに行ってしまうんですね。そうそうにあきらめて、ホテルに戻ります。今回の宿泊は世界に2軒だけの7つ星の1つ、エンパイアホテル&カントリークラブ。国営の素晴らしいホテルです。重厚なエントランス、呆然とするようなロビーエリアと空間、これでもかの大理石とシャンデリア、そして金。圧倒される空間です。客室は500超。私が滞在した部屋はシャワーブースだけで6平米くらいあったかな。あんなに広いシャワーブースは初めてでした。

このホテルに泊まる最大の魅力は、やはりゴルフでしょうな。海を見渡すジャック・ニクラウス設計の優雅なチャンピオンシップコースは、どこもかしこもピッカピカ。400人がメインテナンス係だというのですから、その力の入れようがうかがえます。もちろん世界のVIP御用達、の割には破格と言っていいほどのプレイフィーもたまりません。サービスもインターナショナルの洗練とはいきませんが、みなにこやかで気持ちのいいものでした。

優雅で贅沢な時間をブルネイで

食事はチャイニーズと東南アジアのミックスといった感じ。オープンエアのホーカーセンターから、接待にも使える高級レストランまで外食は豊富です。唯一の不満は……そう、お酒が飲めないこと! イスラムの国だから仕方ありませんが、おいしい食事の時にアルコールがないのは誠に寂しいものであります。私は4日間の滞在で完全にデトックスしましたね(笑)。その後でシンガポールに行っても、なぜか飲みたいという気になりませんでした。不思議!

空港はすべてがスムーズだし、うんざりするような交通渋滞もないし、町はキレイで人心も穏やか。ブルネイはとにかくストレスのない国です。煩わしい日常を忘れてひたすらのんびりしたい人、あるいはいろいろな意味でデトックスしたい人には、ぜひおすすめしたいデスティネーションです。ルーティングとしてはコタキナバルやミリのリゾートを周遊してブルネイ、そして最後にシンガポールで世俗の楽しみも味わうというのが理想的でしょうか。7つ星ホテルも決して手の届かない料金ではありません。ぜひ優雅で贅沢な時間を過ごしてみてください。

長い間のご愛読ありがとうございました

さて、長い間おつきあいいただきました「おいしい旅の話」は、今号で最終回となります。連載中はたくさんのお便り、本当にありがとうございました。みなさんとは、またいつか、どこかの空の下でお会いできることを祈っています。BON VOYAGE & GOOD LUCK!

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