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ホテルのトラブル対処総集編
みなさん、いつも「おいしい旅の話」をご愛読いただき、ありがとうございます。2012年最後のコラムは、ホテルで起こりがちなトラブルとその対処法の総集編をお送りします。年末年始のお休みで海外に行かれる方も多いかと思います。いざという時に慌てず騒がず対処できるよう、もう一度しっかり確認し、どうぞ心おきなく出発してください。
3大トラブルいまだ根絶せず
予約窓口こそ多々あれど、今日の世界各地のホテル予約のほぼ9 割がオンライン手続きの時代と言っても過言ではありません。オーダーに沿ってインフォメーションを打ち込めば、時差で待たされることなく即時回答が来る。何という便利な世の中になったことでしょう。ところが、これだけテクノロジーが進化しているにもかかわらず、ゲストを困惑させる初歩的な課題は、全く解決される気配がありません。いわゆる「NO RESERVATION」「OVERBOOK」「DOUBLE CHARGES」の3大トラブルです。
いや、「テクノロジー」が悪いわけではありません。問題の主な原因は、ホテル側のオペレーションや、チェックする人間にあるケースがほぼ全てです。とはいえ、そのオペレーションを支えるコンピュータにも寿命がありますし、みなさんも苦労した経験があるように、OSやソフトウエアのバージョンやらアップデートの齟齬が重なって、ますますミスを助長してしまう。テクノロジーに頼らない業務など見当たらない時代になったのに、かえって問題が複雑化するという、本末転倒な事態になってきているわけです(苦笑)。さて、そんな「自分のせいではない」トラブル発生時、どう対処すればいいのか。再度復習しておきましょう。
「NO RESERVATION=予約がない」と言われたら
1)パスポートとバウチャーを示し、「名字と名前が逆に登録されていないか」「代表者の名前が異なっていないか」の再確認を要請する。
予約係とフロントの連携がうまくいっていない場合は、こうした再確認で解決する場合が多いようです。それでもダメな場合は、
2)バウチャー等に記載されている現地手配会社に、スタッフから直接連絡・確認してもらう。連絡が取れない場合は、手配会社のサポートデスク等に連絡する。
ちなみにアップルワールドの場合は、バウチャーの 「BOOKING AND PAYMENT BY:」欄に現地手配会社名、「お客様控えA」に海外サービスデスクの連絡先が明記されています。
3)深夜到着時の問題発生など、確認に時間がかかる場合は、いったんクレジットカードを提示してチェックインをすませ、翌日以降に解決する。
この時に一定金額をデポジットとして課金されることがありますが、チェックアウト時に精算されるので、しっかり確認してください。
なぜ起こる「OVERBOOK=オーバーブック」
きちんと予約はしたはずなのに「部屋がない」と言われるオーバーブック。しかしホテルの免責事項になっていることからもわかるように、 いくら怒ったところで「どうしようもない」状況であれば、事実「どうしようもない」のです。オーバーブックのメカニズムを大雑把に言うと「予測違い」。その日チェックインするゲストの部屋は、「総客室数 - 現在宿泊中客室数 - その日チェックアウトする客室数 - 使用不可客室数」の中から用意されます。ところが、自然災害やメインテナンスなど種々の理由から延泊せざるを得ない状況や、宿泊中の客室にトラブルがあり、別室を用意しなければならなくなるなど、事前に予測した部屋が足りなくなることが・・・。オーバーブックはこうして起こるのですな。
ホテルも「生き物」ですから、多数ある客室にはそれぞれの人生(笑)があり、予定外の事柄が発生することもあるのです。コンピュータが先の予測値を限りなく厳密に計算するものの、人間事情だけは何ともしようがありません。インターナショナルクラスのホテルですらこうなのですから、OA化が遅れているローカルホテルでは、いまだに人生経験つまり経験則からはじき出すカンピュータ頼りだったりするわけです。
「OVERBOOK=オーバーブック」はあえて楽しむ気持ちで
もちろんホテル側は、オーバーブックしたくてするわけではありません。ですから、万が一の際は同等以上の代替ホテルを用意してくれるはずです。この時、グッドゲストに求められるのが冷静な対応です。まず相手の説明をきちんと聞く。その上で、どうしてもそのホテルに泊まる必要があるのなら、その理由を丁寧に述べる。交渉には粘りも必要です。「本当に1室も空いていないのか」 「いつ戻ってこられるのか」などを確認してみましょう。
こうした交渉が荷が重いようなら、スパッと気持ちを切り替え、提案された別ホテルに移動することを前提に、立地や移動のための交通費、連絡のための通信費等々、気になる事柄を交渉・確認します。最終的に納得がいったら笑顔で別れたいもの。不平と不満で残りの滞在を台無しにするのは残念すぎますからね。 オーバーブッキングについてのより詳細な対処法は、本コラムの小冊子「5ツ星ラグジュアリーホテルって本当に快適ですか?」にも掲載しています。未入手の方、この機会にぜひお手元に。
「DOUBLE CHARGES=室料の二重請求」「追加請求」をされたら
事前に支払い済みであることが明記されているバウチャー、もしくは該当書類を提示することにつきます。解決しない場合は、「NO RESERVATION」同様、現地手配会社やサポートデスク等で確認してもらいましょう。こうしたトラブルに備えるためには、チェックイン時に 「ルームチャージは支払い済みですが問題ありませんね」と確認することです。さらに心配であれば、対応したスタッフの名前を聞いておくこと。チェックアウト精算も、余裕を持って行うようにしましょう。
チェックイン時に「1泊20ドル追加のようなことを言われた」と不審がる方がいますが、よ~く相手の話を聞いてください。それは「追加」で はなく、「アップグレードのオファー」、つまり「1泊20ドル追加すれば、ワンランク上のお部屋をご案内できますよ」というナイスなお誘いだったりします。CAが機内で免税品販売に励むように、ホテルでもフロント営業時代を迎え、積極的セールスをするホテルが増えてきました。チェックイン時のアップグレードのオファーもその一つ。以前は、こんなお得なアップグレードは一般的ではなかったのですから、実に良い時代になったものです。必要なければ「No, thank you. I would be happy to stay on the original.」(予約したお部屋で結構です)」でOKです。
「RESORT FEE=リゾートフィー」は現地徴収
追加料金には、「RESORT FEE=リゾートフィー」に象徴される、ホテルが現地で強制的に徴収する諸費用もあります。内訳はホテルによってまちまちで、部屋に配達される新聞代、フィットネスジム使用料、さらには市内通話フリーの電話代、インターネット回線使用料等々。どれも「リゾート」という言葉とは特に関係なさそうな項目ばかりですが、利用の有無を問わずこの名目で請求されるのでご注意を。 アップルワールドの場合は原則的にすべて前払い方式ですが、ルームチャージは前払いでも、「RESORT FEE」のような各種税金は現地払いというケースがあります。予約時に必ず何らかのアナウンスがあるはずですから、メールやバウチャー等のインフォメーションは、きちんと確認しておきましょう。
請求書は責任を持ってしっかり確認する
チェックイン時にクレジットカードを求められるのは、ルームチャージの支払いではなく、個人勘定を部屋付けにするためのデポジットです。「PRE-AUTHORIZATION(プリ・オーソライゼイション)といって、おおむね1泊相当の室料が課金されますが、これはチェックアウトの際、ミニバーやルームサービス、館内チャージなどで利用した個人勘定を差し引いて精算されます。チャージが発生していなければ全額戻ってきますので、ご安心を。もしカードではなくキャッシュでデポジットもしくは精算したい場合は、その旨を申し出るといいでしょう。
最近は、客室テレビで精算手続きができる「エクスプレス・チェックアウト」システムを導入するホテルが増えてきました。早朝出発やピーク時の混雑回避 に大変便利なのですが、やはり間違っていることもあるのですな。通常の請求書同様、こちらもしっかり請求内容やチャージをチェックし、間違っていたらすぐに修正してもらうこと。大丈夫だろう、また面倒だからと、確認せずにサインするお人好しが後を絶ちません。国内であれば、精算書の間違いはホテル側のミスと文句も言えますが、海外の常識は「サインする人の責任」。たとえ帰国後に気がついても、時すでに遅し。いったんカードチャージされた請求を返金請求するのは、大変な手間です。スムースな返金は限りなくゼロに近いと心得ておくべし、です。またトラブルに備えて、請求書は少なくとも数カ月は保管しておきましょう。
海外ホテルでのトラブルは大きなプレッシャーですが、トラブル 時には冷静な対応、態度こそがベストアンサーです。上級者の心得は、備えあれば憂いなし。常に「何かあるかも」「いろいろあるサ」と心の準備をしておけば、イザという場面でも慌てることなく対処できるもの。たとえテクノロジーが進化しても、安全な旅の準備には、いつの時代も情報武装と知識が基本。その「楽しい」努力を惜しまず、快適でハッピーなホテルステイを楽しんでください。それでは、2013年度も「おいしい旅の話」でお会いしましょう。みなさん、ハッピーニューイヤー!
花鳥風月
以前お話しした「ホテルバウチャーは不要か」について、読者の宗近さんから「ホテルバウチャーは絶対必要です」というお便りをいただきました。チェックイン時に提出したものを、支払時に「もらっていない」と言われてトラブルになった際、手元に控えがあって事なきを得たのだとか。スマートフォンのデータを見せるのも同じ手間のようですが、細かい付け合わせや現地手配会社への連絡などには、やはりペーパーで渡した方がはるかにスムーズです。予約がないと言われたり、各種トラブル発生時にも重要な役割を果たすバウチャー。ここぞという時のためにプリントアウトしておきましょう。