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「場慣れ感」演出で脱!海外での悪目立ち
みなさま、ごきげんよう。ようやくの春ですわね~。先日、日本語授業のボランティアに行き、オランダ、ロシア、ペルー、シンガポール、ドイツなどなど10カ国の学生から、「日本の魅力・日本の不思議」について興味深いお話をうかがいました。まさに驚きと笑いと反省の1日。その中にはスマートな旅人になるためのヒントもちらほらと…。みなさまにもご紹介いたしますわね!
「日本の素晴らしいこと」は何?
外国人学生のみなさまは来日して1年~1年半。毎日みっちり学んでいるようで、ほぼ日常会話には不自由なく、時に「抜本的改革」だの「忖度を要する」なんて、すんごい言い回しをサラリと繰り出す強者もいらっしゃいました。学生が取り上げた「日本の素晴らしいこと」は、「カプセルホテル(安い・便利)」「自販機(ユニーク・どこにでもある)」「東京の防災(官民一体)」「お盆」等々。特に「お盆」は、西洋ではあえて一族が集まって祖先を偲ぶ習慣はないとかで、日本の各地に伝わる風習はとても美しく、そして感動的だということでした。
お店で人を呼ぶ時は?
一方、「日本で変だなと思うこと」の筆頭は、「お店の人を大声で呼ぶこと」。ひえ~。驚きです。店内でスタッフが見当たらない時や、混雑した飲食店では「あの~、すみませ~ん!」は、誰もがフツーにしがちなこと。ところが海外(中華圏を除く)では、これは「ペットに対してや、偉い人が使用人を呼ぶ時ならともかく」とても無礼な行為らしいのです。
じゃあ、気づいてもらえない時はどうすればいいのよう~。「飲食店ではテーブル担当が決まっているから目を合わせるか、軽く手や指を上げればすぐ来てくれます」。無人のお店は?「誰かが来るまで待つか、あきらめます」。そうですか…って、気が長いのか短いのか!?
こんなに違う挙手と握手の作法
ついでに出たのが、挙手の時ひじを伸ばしてまっすぐ上げること。日本では礼儀正しいこの動作、諸外国ではまったくと言っていいほど採用されていません。理由は「戦争中、特にナチ式の敬礼に似ているから」。ほ~。学生たちは「ひじは曲げたまま」「ひじを曲げて人差し指を立てる」「ひじは伸ばすけど掌は握る」と、とにかく敬礼系を回避している模様。この動作に対する不快感は若い世代でもキョーレツなのです。驚きましたわ~。
握手の作法の違いも最初は戸惑ったらしいです。「初対面なのに両手で握ってくる」「しかも力を入れて上下に振る」「女性も同じようにする」。これらがとってもフ・シ・ギ! あちらでは、初対面の場合は普通に握り、振ったりしない。両手でするのはよほど親しい間柄のみ。男女の場合は女性からは手を差し出さず、受ける場合は軽く握る程度に、というのが基本。同時に頭をペコペコ下げるのも奇異に映るらしく、握手の時は相手の目を見つめ、笑顔を見せるのがマナーなのだとか。
これぞ海外での悪目立ちパターン
つまりはこういうこと。海外旅行先で初めて会った現地ガイドに「よろしく」と両手でニギニギ握手をし、人気のカフェで「おねえさ~ん!」とスタッフを呼びつけ、会計の際は腕をブンブン振り回したり、両手でバツをつくったり。そして、別れ際に果てしなくお辞儀を繰り返して去ってゆく日本人。そりゃあ不思議な存在でしょう。悪目立ち以外の何モノでもありませんわよねえ。とほほ。
わたくしたちが丁寧・親身・礼儀と思っていることが、習慣の違う国では不思議・不気味・謎なんですのねえ~。ということは反対に、最低限こうした言動さえしないように気をつけていれば、スマートにその場に溶け込めるということですわよね。みなさまも海外旅行中につい体が動きそうになった時、ぜひ思い出してくださいませ。
意識して「場慣れ」を演じてみましょう
あれこれお国事情を話してくれた学生たちですが、「でも居酒屋でオネガイシマ~スと気軽に呼べるのは、みんなが仲間みたいで楽しい」「握手会に行くと両手で握手してくれて感激です」(←誰推しだ!?)と、日本に慣れるに従って、最初は変だと思った事柄も、どんどん日常茶飯事になってきているようです。これぞ郷に入れば郷に従え、ですわよね。
価値観の違いを頭から拒否するのではなく、理解し、受け入れながら、時には真似ることで敬意を示す。「場慣れ」とは、そうした言動がどこにいても自然にできることでございましょう。今やあらゆる情報を手軽に収集できる時代です。旅立つ前に渡航先の「常識」を少しだけでも頭に入れ、意識した言動をしてみてください。自分で演出することからも「場慣れ感」は身につき、きっとスマートな旅人になれると思いますわよ。
さて、長い間お楽しみいただきましたマダムヨーコの辛口旅サロンも、今回が最終回となりました。またどこかの空の下でお会いできる日を楽しみにしつつ、みなさま、どうぞ末永くお元気で良い旅を。Ciao!
最近はサロン内で常連様同士の交流も生まれ、主宰者としてはうれしい限りでございます。「身に余るお言葉をいただき恐縮です。シェリー様が海外からの観光客にお声をかけられる姿勢はとても立派です。良き日本人の見本ですね」とメッセージをくださったスカーレット様。自ら進んで海外からの観光客の手助けをすることで、「海外へ行かなくても現地の人から生の情報をもらえると『観光と買い物とグルメ』で終わる旅行よりも、密度の高い時間が過ごせますね」。そう、見知らぬ人との交流は「ステキな旅」のようなもの。すべては自分の気持ち次第なのです!
そんなスカーレット様からのお返事を心待ちにしていたシェリー様からは、関西圏のラグジュアリーホテルのクラブルームをご利用なさったご報告が。ゆったり贅沢な時間を過ごされたご様子、う、うらやまし~~。5月には船旅で上海へ行かれるのだとか。実はわたくしも5月に志摩のリゾートで「何もしない滞在」をする予定でございますの。シェリー様の「歩けるうちに、食べられるうちに、楽しんでおこう」の合い言葉、マジで身にしみているマダムヨーコです。
というわけで、サロンにお便りをくださったたくさんのみなさま、今回が最後でございます。全てのみなさまのお名前を掲載したいところですが、どうかマダムヨーコの心からの感謝の辞にてご勘弁ください。本当に長い間ありがとうございました!
「If you say so…」
「そうおっしゃるなら…」という意味のフレーズで、日本的には「お言葉に甘えて」というニュアンスになるでしょうか。過分な申し出を受ける時、もしくは乗り気ではないけれど重ねて誘われるので仕方なく、という時の両方で使い回せます。前者の場合は、やや遠慮がちな雰囲気を醸し出すといいですね。
人の踊る時は踊れ
すなわち「郷に入れば郷に従え」。いたずらに自分の価値観に固執せず、時には周囲と合わせることで、新しい世界が見えてきますよ。