ミスターMのおいしい旅の話「次の旅はここへ行け!」
Vol.
64

あなたもかかっている「ツイン」の呪縛:その1

ミスターMのおいしい旅の話 あなたもかかっている「ツイン」の呪縛:その1

相変わらず不景気だのユーロ危機だの、ため息が出るような話も多い昨今ですが、海外旅行に関してはLCCの躍進もあり、近年まれに見る大チャンスであります。さらに安く飛んで現地で贅沢に過ごすという、メリハリを付けた旅のスタイルも増えてきた様子。「思い切って」というフレーズがぴったりなこのご時世、みなさんはどんなプランをお考えですか?

そもそも「ツイン」の概念がない海外

そんな夢を膨らませての海外旅行。肝心のホテル選びで日本人が最も気にする事柄といえば・・・もうおわかりですね、そう、ベッドの数です。いつもツインの部屋を確保するのに苦労している、ツイン確約をして欲しいというご要望も相変わらずです。そこで今回は私からも改めて、ツインと日本人に関する考察をしてみたいと思います。

まず前提として覚えておかなければいけないのが、外国のホテルには、そもそも「ツイン」という概念がないということです。これはちょっと驚きでしょう。ほとんどのホテルのオウンサイトや予約サイトを見ておわかりのように、ホテルの客室は「スタンダード」「デラックス」「スイート」といった、カテゴリ別に販売されています。今でこそ、そこにどういうサイズのベッドが何台置かれているか情報公開しているところもありますが、たいがいがカテゴリ名だけですよね。実は、それが原則なのです・・・日本人ゲスト以外にとっては。

同じ空間を共有しない「個」の文化

海外、特に欧米のホテルは1室にベッドが1台。これが基本です。たとえ客室のグレードが上がり複数の寝室があったとしても、主寝室に2台のベッドが置かれることは決してありません。その背景にあるのは「個」に対する文化の違いです。私たち日本人は、「親子で川の字」のように、他の人と一つの空間を共有することに抵抗がありません。欧米はどうでしょうか。よく映画にも出てくるように、子供は赤ちゃんの頃から個室を与えられ、夜も一人で眠りますよね。たとえ親子であっても、個人として自分の空間を持たされるわけです。

だからホテルに泊まるときも同じ。家族で利用する際は、添い寝のできる年齢を超えた子供は別の部屋を取るのです。コネクティングルームやアジョイニングルームは、そのためにあるのですね。そして夫婦やカップルは、一つのベッドに同衾するのが当たり前。反対に言うと、一つのベッドに同衾できない人間とは空間を別にする。これが欧米の考え方なのです。

平気で他人と空間を利用できる日本人

一方、布団というおのおのの「陣地」で眠ってきた歴史を持つ日本人は、それゆえか空間の共有が平気です。反対に夫婦だからといって同じベッドに寝なければならないというほうが苦痛だったりするのです。ホテルに泊まるときも同じ。家族でも友人でも、なるべく同じ部屋に泊まりたいと思う。でも、布団は別々でないといやなのです。それが「ツイン」主義という発想につながっていったのですね。

「日本人にはツイン」という考え方を広めたのは、60年代後半から始まったパッケージツアーの流行に他なりません。この時に、ツアーでの料金は基本的に二人一室の際の一人料金、すなわち「ハーフツイン」という設定がされました。つまり誰かと同室になれば、一人で参加しても料金が割増にならないという「平等条件」だったのですが、それが二人=ツインベッドという「ガラパゴス・ベッド嗜好」ならぬ日本ツイン主義を生んでしまったのです。そして日本人は、たまたまツアーで一緒になった見知らぬ他人とも、平気で同じ部屋をシェアできてしまうんですなあ。欧米人にとっては全くもってアンビリーバブルなことでしょう。もちろん欧米人もドミトリーのように、他人と同じ部屋で寝泊まりすることはありますが、これはあくまで寮でやゲストハウス、またはそれ以下のエコノミーな宿泊施設での話。一般のホテルではあり得ません。

「ツイン」「ダブル」も日本独特の言い方

ついでにホテルのベッドについて言うと、二人部屋=「ツイン」「ダブル」というのは日本人の思い込み。台数とサイズが混同しているのです。2台のベッドのことなら「two bedded room」、どんなベッドサイズかは「single」「queen」「king」と言わないと通じません。そうした西洋的なベッドカルチャーの背景を知らないまま、旅行会社が作り出した「ツインベース」なる概念が定着してしまい、個人旅行が盛んになった今日でも、日本人はどこに行っても「二人ならツインが当たり前!」となってしまうわけなのですね。

こうして80年代になり日本人がどっと押し寄せたハワイやアジアでは、ツインベッドルーム比率が欧米と比して高く用意されるようになったのです。そりゃあ大勢のグループできて、たくさんお金を落としてくれるとなれば、ベッドを2台だって3台だって入れてしまいますよ(笑)。かのホリディ・インは70年代にすでにクイーンサイズベッドをツインルームの基本規格とし、日本人には2人で大きなベッドで寝られる快適なホテルとして親しまれましたが、実はこれは4人部屋だったのです!

なぜツインの確保ができないのか

ところでホテルは、予約段階で部屋の割り振りを決めているわけではありません。部屋番号まで指定するような上得意なら別ですが、基本的にチェックインの段階でアサイン(割り振り)されるのが一般的です。なぜかといえば、突然のキャンセルやノーショー、ウオークインなどすべてのゲストが予約通りにチェックイン/チェックアウトするとは限らないですよね。またすべての予約にベッドの指定が明記されているわけではありません。最近でこそ、そのあたりを細かくケアする予約システムが出てきましたが、まだほんの一部。そんな理由から、多くのホテルでは確定比率をもとに客室準備しており、すべての予約者のために部屋を確保して待っているわけにはいかないのです。そして日本人が大勢を占めない地域では、当然1ベッドスタイルのダブルルームの比率が高くなります。現段階では、これらが「確約不可」の理由とお考えください。

ちなみにホテルの部屋は、まず「何人部屋か」基準です。言い換えれば、ベッドが1台だから一人部屋、2台だから二人部屋ではありません。ベッドがシングルサイズ1台なら(普通は)一人部屋ですが、クイーンやキングサイズであれば二人または三人部屋となります。

どうですか、ツインルームの客室形態が少しおわかりになってきたでしょうか。次回は「それでもツインでなければ」という方のために、ツインを手に入れる確率を少しでも高めるためのテクニックと、ツインにこだわらずもっとホテルライフを快適に楽しむためのヒントをお話しいたします。

花鳥風月

花鳥風月 ロールアウェイとエキストラベッド

ホテルの客室に追加で入れるベッドのことを「エキストラベッド」というのは、みなさんもうご存じですよね。ところがオーストラリアやフィジーなど南太平洋では、同じ追加ベッドのことを「ロールアウェイ」と呼びます。まあ、今ではだいぶ少なくなってきたのですが、何か特別なモノが来るんじゃないかとドキッとしてしまう人がいるかもしれません。

厳密に言うとこの2つは形態がちょっと異なります。エキストラベッドは外部から運び込むこともあり、マットも薄手で比較的簡易な造りですが、ロールアウェイは本来、室内にあるベッドの下に造り付けられたベッドのこと。同じ木枠でそのまま引き出してきてセッティングします。なので質的には本体と同じと考えていいと思います。時は流れヘブンリーベッド等が主流の今日では、ほとんどお目にかかることがなくなった歴史遺産ですが、オセアニアに出かけるときの豆知識として覚えておくといいでしょう。出合った時には、ぜひ写真投稿してください!

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