バルセロナの建築物といえば奇才ガウディの作品がすぐ思い浮かびますが、同時代にはもう一人の天才がいました。その名はドメネク・イ・モンタネール。恵まれた家庭に生まれ育ち、早くから建築の才能を発揮したモンタネールは建築学校学長を勤め政界にも進出。苦労の末に生涯を閉じたガウディとは対照的な存在でしたが、ガウディのことはいつも意識していた様子。一生相容れないままのライバルだったようです。モンタネールのモットーは「芸術には人を癒す力がある」。華やかで優しく、見る者の目を喜ばせる彼の作品は音楽堂や病院として今日もバルセロナの人々の生活の中で重要な役割を果たしています。
そのモンタネールが最後に手がけたのが。このカーサ フュースター。大富豪フュースターの依頼により1908年に落成した豪華な館です。当時は上流階級や知識人が集い、社交場のような役割を果たしていたのだとか。その後改装され2004年にホテルとしてオープンしましたが、1階のカフェや共有部分などは往年の雰囲気が濃厚に残されており、館内を歩いていると20世紀初頭のバルセロナにタイムスリップしたような気分になります。美しい外観もモンタネール時代のまま。彼の建築物に興味がある人なら、ぜひとも泊まってみたいホテルなのです。
客室はシンプルでシックなアーバンスタイル。ストレートなラインで構成し、作り付けのベッドヘッドやサイドキャビネットをしつらえるなど、コンパクトな空間を広く、そして使いやすくする工夫がされています。とはいえビビッドな色づかいは、やはりデザイン大国スペインならでは。グラマラスなムードのラウンジは館になると照明に映えてさらに妖しい雰囲気に。屋上のプールも凝った照明がされていますので、こちらもお見逃しなく。レジーナ劇場の向かい、グラシア通りの北端という滞在には申し分のないロケーション。ここを拠点にモデルニスモ建築物を散策するのも楽しいかもしれません。
旧市街と新市街だけでなく、バルセロナには特徴的なエリアがたくさんあります。例えば有名美術館が集まるモンジュイック周辺、カテドラルを中心としたゴシック地区、ショッピングやグルメゾーンとして賑わうエシャンプラ地区などなど。その中でも最もトレンディでエンターテインメント色の強いのがバルセロネータ。シウタデリャ公園の南側にあるベイエリアです。そのウオーターフロントに向かって建つガラス張りのユニークなビルがW。そのフォルム(4等分して立てたスイカのよう)から横浜のインターコンチネンタルホテルを想像する人もいるでしょう。
デザインはバルセロナ出身の建築家リカルド・ボフィール。新しいバルセロナ空港やマドリッド国際空港など、アヴァンギャルドで強烈な印象を与えるのが彼の作品の特徴。とはいえ奇天烈な建築物が群生するバルセロナ。目立つよりもしっくりなじんでしまうのがユニークです。Wには都会的でスノビッシュなイメージがありますが、このバルセロナでもそのコンセプトは踏襲しつつ、開放感と躍動感を感じさせるリゾートテイストが加味されています。近未来的でシャープなライティングが施されたロビーやラウンジ、陽光と海風を全身で浴びながらリラックスできるテラスやプール、屋上バーなど同じ館内でシティステイもリゾートステイも楽しめるのです。
473室もある客室は6種類のスイートを含めた全10カテゴリー。ほとんど全室がピクチャーウインドーになっており、地中海や市街の素晴らしい眺めを堪能することができます。インテリアには低めのベッドやモダンな家具をあしらい、シンプルながら上質のリネンやアメニティが心身のくつろぎをさらに高めてくれます。もし特別な旅にしたいならスイートに。プライベート屋外テラスや室内の独立ジャクージなど、特別な時間を過ごすにふさわしい空間が用意されています。もちろんペットの同伴もOK。また洗煉されたダイニングの数々、300平米を誇るフィットネスセンター、ブリススパなど館内施設はどれも魅力的。バルセロナのトレンドを知るなら、このホテルはベストチョイスです。
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