ラウンジ&ダイニング「ピア」は静かなレストラン
神戸港の夜景は感動的な美しさ
日本に唯一のホテルに建つ公式灯台
ベイエリアは鮮やかな光の競演
プロシア人が建てた外国人用ホテル
1870年(明治2年)8月3日付の神戸外国人居留地で発行された英字新聞の中に「オリエンタルホテル」の広告があります。その2年前、明治元年は、函館、東京、大阪、長崎、神戸に外国人居留地が作られ、東京で日本最古といわれる「築地ホテル」が建てられた年。追って神戸でもプロシア人によるホテルが開業します。それが現在の神戸メリケンパークオリエンタルホテルの前身、オリエンタルホテルだったのです。
オリエンタルホテルはさまざまな著名人に愛されたホテルでした。「ジャングルブック」の著者ラドヤード・キプリングは、このホテルで食べた料理を褒め称え、その旅行記の中で「シンガポールのラッフルズホテルや香港のビクトリアホテルをも凌ぐ」とコメントしています。谷崎潤一郎の「細雪」にも、このホテルは幾度となく登場します。またタイタニック号の乗客のカバンの中から、オリエンタルホテルのレターヘッドが出てきたという話も残っています。そして日本で初めてジャズが演奏されたのもこのホテルでした。
悲劇を超えて受け継がれた伝統
その後オリエンタルホテルは東洋汽船により買収され運営を譲渡しますが、1945年の大空襲により大部分が焼失。1949年には焼け残りの一部を再生して復興を果たします。15年後の移転の際には港町神戸のホテルのシンボルにと、屋上に灯台が設置されました。ところが1995年の阪神大震災で再び全壊。その長い歴史に終止符を打つことになったのです。しかし、この悲劇でもオリエンタルホテルの「灯」は消えることがありませんでした。それは、オリエンタルホテルの灯台を新生「神戸メリケンパークオリエンタルホテル」に移し、そのオープニングに合わせて再び光を取り戻そうという計画です。スタッフはみな「少しでも震災でうちひしがれた人々の心の支えになれば」と願い、実現に向けて全力を尽くします。そして大震災から半年後の7月7日、再び灯台に光が灯り、7月15日にはホテルは営業を開始しました。
神戸港のランドマーク
ホテルに立つ灯台は日本ではもちろんここだけ。そして、おそらく世界でも他に例はないだろうといわれています。赤いポートタワー、白い海洋博物館、そして神戸メリケンパークオリエンタルホテルの灯台から放たれる赤と緑の光。この風景こそが、神戸港のランドマーク。人々を見守り、また励まし続けるかけがえのないシンボルなのです。
(アップルワールド取材・執筆)
どの部屋もゆったりと造られています
ビューバスルームからの眺めは豪華客船さながら
いくら見ても見飽きない光景が広がります
リラクゼーションプールにはジャクジーも
このホテルを愛した外国人スタッフ
「どうしてもこのホテルで働きたい!」。ネパールから来た青年はホテルのロビーに入った瞬間にそう思ったといいます。彼は日本語を勉強してホテルビジネスを学び、本当に念願を叶えてしまいました。ロビーでゲストを出迎えるロビーグリーターの中にその姿を見つけることができます。ネパール語、ウルドゥー語、英語、日本語を話し、海外からのゲストにも適切に対応する彼の意気込みは入社から今日まで変わることはなく、優秀なスタッフに与えられる賞を何度も獲得しているのだそうです。
時を同じくして、韓国人の男性もこのホテルでの職を望み、やはりロビーグリーターとして働いています。さらに2人の中国人女性がゲストリレーションスタッフとして働いています。ホテルが外国語を使えるスタッフを探したわけではありません。偶然このホテルを訪れ、彼ら自身がこのホテルの魅力にひかれて職を求めたのです。もちろん、日本のスタッフも負けてはいません。神戸メリケンパークオリエンタルホテルでは多数の女性スタッフが働いています。そのほとんどが、このホテルに憧れてポジションを得た人々です。憧れて入った職場なだけにその愛社精神はとても強く、そして勤務年数も長くなるケースが少なくありません。
憧れを形にした人は長い縁でつながれる
「このホテルでは毎年多くの結婚式が行われます。ホテルスタッフが結婚式が決まる前からお付き合いをして、縁を結ぶこともあります」。営業企画担当のスタッフは、何と縁結びの方法までも考えているのです。しかもそれが実現したときの喜びがとても大きいため、仕事が楽しくて仕方がないのだとか。このホテルでプロポーズをし、結婚式を挙げ、記念日のたびに足を運んでくれる。そうした一連の流れができているのです。
「動かぬ豪華客船」の魅力
マネージャーは「このホテルでは憧れが形になることがひんぱんに起こります。そうなると、長い縁でつながれるのです」と言います。これはゴールインしたカップルだけに当てはまることではありません。このホテルに憧れてポジションを得たスタッフたちにも言えることです。職場が楽しいから笑顔が増える。ホテルに誇りを持っているから、胸を張ってゲストに接することができる。だから、このホテルのスタッフの顔はみな輝いているのです。「動かぬ豪華客船」は宿泊する人だけではなく、働くスタッフの心をも引き付けて離さない魅力を持っているのです。
(アップルワールド取材・執筆)
豪華客船さながらのバルコニー
吹き抜けの天井には帆船の帆があります
すべての部屋に海を見渡すバルコニーがあります
室内プールはオールシーズン利用可
全てが開放感にあふれたホテル
三宮駅から20分毎に出ている無料シャトルで約20分。突然白い波の形をしたホテルが現れます。エントランスはなだらかな坂の上。静かで落ち着いたロビーは、都心の大型ホテルではなかなか味わえない雰囲気です。そしてチェックインカウンターから天井を見上げると、そこは60メートル近い吹き抜けの空間。気持まで天に昇っていくかのような開放感にあふれています。
客室はとにかく「広い!」の一言。幅120センチのダブルベッドが2台と足を伸ばして横になれるソファ、大きなデスクと椅子。バルコニーにはテーブルセットまで用意されています。「ここで食事をしたい」とルームサービスを頼むゲストが多いそうですが、確かに眺めといいムードといいつい贅沢をしたくなる気分になるのも納得。一方、廊下には船の窓をイメージした四角い窓がズラリと並びます。そこからの眺めは、まるで船の見晴らし台からデッキを見下ろしているよう。リラクゼーションエリアには海を見ながら一年中泳げる室内プール、ジャクジー、サウナがあり、バルコニーには白いデッキチェア。プールサイドバーでは、カクテルを飲みながらゆったりとくつろぐゲストの姿も。より深いリラックスを求めて、アロマテラピーサロンへ足を運ぶ人も少なくありません。
見知らぬ同士が手を振り合う
このホテルの2階は旅客船用ターミナルにつながっており、外国からの船舶の入国手続きが行われます。反対に横浜から神戸へと航海してきた大型旅客船は、ここを最後に日本から離れていきます。徐々に遠ざかっていく船の客室と、陸に残るホテルの客室が同じ高さになるとき、その場に居合わせた人々は、誰もがふと手を振り合うのだそうです。もちろん見知らぬ同士。互いの旅の安全を祈りつつ、別れの挨拶を。そんな素敵な光景が、神戸メリケンパークオリエンタルホテルでは繰り返されているのです。
ここは動かぬ豪華客船
「オープン当初はインターネットも携帯電話もつながらなかったんですよ。でも、ここはリゾートホテルですから、滞在中くらいは現実社会を忘れて過ごしていただきたい・・・などと勝手なことを思っていたものです」とホテルのマネージャー。それはホテルで働く全てのスタッフの本心なのかもしれません。このホテルは動かぬ豪華客船。そして豪華客船はゆったりとした時間を楽しむために乗るものです。豪華客船に乗ったつもりで心身ともにリフレッシュしていただきたい。そんなスタッフの気持ちを理解できたとき、きっとこのホテルの真の楽しさを味わえるはずです。
(アップルワールド取材・執筆)