熊本城と市内を一望する「トゥール ド シャト―」
和洋折衷の幅広いメニューが自慢の「九曜杏」
「ほそかわ」では細川家の伝統料理を再現
「桃花源」の料理長のモットーは「生涯修行」
両陛下をお迎えした小さなホテルからスタート
熊本ホテルキャッスルは、そもそも1960年秋の国体においでになる天皇皇后両陛下をお迎えするために建てられた、25室という小さなホテルからスタートしたのだそうです。しかし国賓が宿泊したという実績は、その名声に大きく貢献し、国内はもとより海外からもゲストが訪れる有名なホテルになります。となれば、より多くの客室や多彩な館内施設が必要になることは自明の理。その大改装の機会は1973年にやってきました。
来たる将来に備えていったんクローズしたものの、大きな試練が襲いかかります。当時、さまざまな社会現象を引き起こした、あのオイルショックです。みるみる高騰していく資材、資金難・・・当初の計画は大幅な変更を余儀なくされます。一時は再開が危ぶまれるような場面もあったそうですが、紆余曲折を経て2年3か月。ようやく、というか、ついに地上11階、地価1階、客室数225室、4つのレストランとバ―、そして大宴会場を備えた高級ホテルとして華々しく再デビューを飾ることになりました。
集客に寄与するダイニング施設
大改装にあたり特に力を入れたのが、ホテルの3大要素のひとつであるレストランでした。最上階にあるフレンチレストラン「トゥール ド シャトー」は、フランス語で天守閣という意味の店名。どのテーブルに座っても、巨大なピクチャーウインドウから熊本城と市内が一望できる、素晴らしいレイアウトが自慢です。
味のキャッスル
和食と洋食の双方が楽しめる「九曜杏」、その個室である「奥座敷 ほそかわ」では、肥後45万石の藩主、細川家の伝統料理を再現した懐石が供されるそうで、接待や会合はもとより、結納などのおめでたい席で利用されることが多いのだとか。そして中国四川料理「桃花源」。地元では知らない人がいないという、超有名な1軒です。桃花源をはじめ、他のレストランのシェフたちは、みな国内外のコンテストで多数の受賞歴を誇るツワモノぞろい。常に最強の人材が集結する熊本ホテルキャッスルは、「味のキャッスル」と呼ばれ、飲食部門だけでも多くの人々を惹きつける原動力になっているのです。
鉄人シェフが供する絶品料理を召し上がれ
「九曜杏」は阿蘇、天草、火山を表現しています
数々の賞に輝いた証が「桃花源」のショーケースに
スペイン風のインテリアが美しい「エルドラード」
熊本の中国料理の原点
開業50周年を迎えた熊本ホテルキャッスルのキャッチフレーズは「さらに美味しいホテルをめざします」。「美味しいとは料理だけのことではありません。お越しくださった方々に、あらゆる意味で楽しい思いをしていただきたいという気持ちをこめています」と支配人。しかし、このホテルを知る人に限っては、「美味しい」といわれたら、条件反射的に館内の飲食施設を思い浮かべてしまうに違いありません。
熊本ホテルキャッスルは、ウエディングバンケットや各種宴会の受注率は、市内ホテルでは常にトップクラスをキープしています。利用者にその理由をたずねてみたところ、「料理がおいしいから」という答えが圧倒的。当然といえば当然ですが、実質よりも見かけを重視する現代では、こんなホテルは貴重な存在かもしれません。そして利用者もまた、その本質をきちんと見抜いていることがうかがえるのです。
熊本の四川中国料理の味は「桃花源」
館内飲食施設の中でも最も高い人気を誇る中国四川料理「桃花源」の料理長、斉藤隆士氏は、実は熊本ホテルキャッスルの社長でもある人物。日本に多数のホテルはあれど、社長がいちレストランの料理長を兼任しているところは、おそらく皆無ではないでしょうか。斉藤氏は桃花源に勤めて30余年。人気テレビ番組「料理の鉄人」で、伝説となったバトルを繰り広げたことでも有名です。彼のもとで修業をした弟子たちの多くは、独立後に熊本市内で中国料理店を開いています。ホテルで、あるいは町のレストランで、気づかずに親しんでいる桃花源の味。その結果、「熊本ホテルキャッスルの味は、熊本の四川中国料理の味」とまで言われるようになったのだそうです。
こだわりのレストラン群
桃花源だけでなく、他の飲食施設にもいくつものこだわりが隠されています。ダイニングキッチン「九曜杏」は、正面に向かって左側が阿蘇をイメージした和の造り。右側は柱に海の渦潮模様を装飾して天草を表現。そして正面のオープンキッチンでは、調理どきにあがる火が火山を象徴・・・と、見事に熊本を「魅せて」くれるレストラン。また地産地消を前提に、食材はすべて地元のものを利用。アルコール類も地元の物しか置いていないという頑固さです。熊本の魅力を伝えながら、最高級のものを提供する。熊本ホテルキャッスルのモットーはあらゆる面で徹底しているのです。
強烈なオーラを放つ「熊本城」の作者は
森の中でのチェックインをイメージしたレセプション
世界各国のVIPが利用してきたスイートルーム
絢爛豪華なキャッスルルームもテーマは「熊本城」
テーマは「熊本城」
熊本ホテルキャッスルのロビーでゲストを迎える、熊本城を描いた巨大な絵コンテ。その作者名は・・・と確認して驚愕! 日本画世界に誇る巨匠、かの黒沢明監督の手になるものだったのです。これはカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した「影武者」のものなのだそう。何も知らずにこのホテルを訪れ、この絵コンテを「発見」した黒澤ファンの中には、感動のあまり「これを見ることができただけで、熊本に来たかいがあった」と言う人まで・・・。確かに、そこには見る者の目をそらさない、一種異様な迫力とオーラが漂っているようです。こうした強烈な個性を持つ装飾品を引き立てているのは、その内装。このホテルでは壁、天井、カーペットも含め、すべてが「熊本城」をテーマに展開しているのです。
視覚・心理的効果も考慮
レセプションはカウンターではなく、アイランド型を採用しています。必要に応じてスタッフがスムーズに移動できる便利さはもちろんですが、いちばんの目的はゲストとのコミュニケーションを、より親密にすること。たとえばチェックインタイム。熊本ホテルキャッスルではチェックインの手続きの際、スタッフは正面ではなく、ゲストと並んで説明をするようにしています。横並びになることで威圧感は軽減され、また書類などの向きを変えずに確認することも可能という、いろいろな面で効果的なスタイルです。またレセプションにグリーンを配置しているのも、支配人の解説によれば「森の中にあるレセプションというイメージにして、お客様の心を和ませたい」という狙いがあるのだそうです。
400年の歴史が持つ感動を
客室はオーソドックスなシティホテルのムードを大切にし、年齢性別を問わずに心地よく落ち着いた時間が過ごせる空間です。やはり熊本城を一望できる部屋が人気で、大きな窓から眺めていると、築城400年を超える歴史の重みがじわじわと伝わってくるような気がします。ロビーからはじまり、多数の驚きと感動が待っている熊本ホテルキャッスル。再訪すればその驚きは安心感へと変化していく一方、また新たな発見と感動がある・・・だから、多くのゲストがこのホテルへと何度も足を運んでくるのでしょう。