ロビーでもゆっくりくつろげる配慮を
快適な滞在とおいしい食事、がモットー
ずらりとケーキが並ぶカフェのショウケース
ミルキッシュジャムは「神戸セレクション」のひとつ
心をとらえる「ちょうどよさ」
街並みの中に溶け込むように、という表現がふさわしいホテルピエナ神戸。三ノ宮駅も新神戸駅も徒歩10分前後。タクシーならワンメーターとはいえ、やや不利なロケーションのような気がします。が、意外なことに影響は少ないのだそう。宿泊部宿泊課チーフの岡下なちさんは「反対にビジネスでご滞在のお客様などは日中を慌ただしく過ごされるので、こうした静かな場所に宿があるほうが嬉しいとおっしゃいます」と言います。「それに神戸は街歩きが楽しいところ。一度お歩きになると、次からあまり距離を感じずに来られたという方も多いですよ。大通りに面しているので夜の一人歩きも安心ですしね」。
隠れ家として愛されるホテル
オープンは1995年2月末。まさに阪神淡路震災の直後で、しばらくは避難所として開放していたそうです。それが今では平均稼働率90%という、知る人ぞ知る人気ホテルに成長。「最初に評判になったのはオリジナルウエディングです。ロビー全体を使って新郎新婦と一緒にアイデアを凝らして・・・。お手伝いする方も本当に楽しかったですね」。マーブルのフロアに石壁、高い天井のロビーはさぞかし場所映えがしたことでしょう。「それから記念日にディナー&ステイというお客様が増えていき、クチコミで観光やビジネスのご利用につながって。規模や立地がちょうどいいとでもいいましょうか、自分だけが知っている隠れ家ホテルとして愛してくださるお客様がほとんどなんですよ」。
日常の続きにある特別な場所
そしてミルキッシュジャムの大ヒット。もともと料理やスウィーツには定評のあったホテルピエナ神戸ですが、その名は一気に全国区になりました。神戸に来たら足を運ぶ価値のある場所──カフェに、レストランに、またケーキやジャムを買いに、終日たくさんの人がこのホテルのエントランスをくぐります。ショウケースにズラリと並んだ美しいケーキの数々。厨房から流れてくる甘い匂いと、スタッフの柔和な物腰。決して広くないロビーは、扉が閉まった瞬間に暖かく秘密めいたシェルターへと変身し、訪れる人を優しく包み込みます。ランチやディナー、インルームエステ付きのデイユースやナイトユースプラン、贅沢な個室ランチなどを用意しているのは、このホテルの居心地のよさとおいしさを、宿泊だけでなく気軽に日常の延長として、心ゆくまで堪能してほしいという願いからかもしれません。
「ここに勤めて5年になりますが、今でもロビーに立つと、ああいいな、素敵なホテルだなとしみじみ思います。このアットホームな感じ、小さいけれどせせこましくない感じ、すべてが好きなんです」という岡下さん。その言葉が、ホテルピエナ神戸の魅力のすべてを物語っているようです。
新作のイチゴとミルキッシュの2層ジャム
何を食べてもおいしいケーキはルームサービスも可
お箸もあるのでディナータイムでも気軽にどうぞ
朝食から本格的なスウィーツが何種類も楽しめます
厨房を守る三銃士
ホテルピエナ神戸といえばカフェ&レストラン、そんな評価を確立させたのは厨房を守る三銃士。レストラン「パトリー」料理長の板垣尚史さん、同じくパトリーのシェフ・ド・パティシエの河合稔明さん、そして菓子s(カシス)パトリー製菓長の田中哲人さんです。
ミルキッシュジャムで再生
伝説的なシェフから重責を引き継ぎ「味は変わらないのに酷評され、一時は本気で山にこもろうかと思いました」と当時を振り返るのは菓子sの田中さん。そんな時、雑誌取材がきっかけで、お土産というオリジナル商品の可能性に気がつきます。ミルキッシュジャムの誕生です。「最初は鳴かず飛ばずだったのに、テレビ番組で紹介されたとたん1日で2万個の注文が来て」。フロントの電話は鳴りっぱなし、サイトはダウン。あわてて注文を止めました。「半年かかってクリアしましたが心の中では、これで終わり、一時的なブームだろうと思っていました」。しかし販売を再開するや否や1万個のオーダーが入ります。「この時初めてプレッシャーが消えました。待っていた人がいた・・・心から嬉しかった。菓子sが生まれ変われたと実感できたんです」。
スウィーツ大国の神戸で生き残るためには個性が必要です。「幸いなことにジャムが売れるので、ケーキにも十分手をかけられる。でも最終的には専門店を出して、神戸といえばミルキッシュジャムというまでにしたい」という田中さん。おすすめのケーキはと聞くと「全部。だって選んだらかわいそうでしょう?」。そして最後にぽつり。「最悪の時にあきらめなくてよかった。苦しかったけど、握ったものを必死で離さなかったから今があるんだと思います」。
女性客を魅了するデザートブッフェ
一方、レストラン「パトリー」でデザートを担当するのが河合さん。「カフェのケーキと違って料理の最後に食べるものだから、常に全体のバランスを考えて作ります」。そんな河合さんの本領が発揮されるのが1日1組限定の個室ランチです。通常のコースですが、何と最後のデザートはブッフェ。しかも作り置きでなく、状況を見ながら河合さんがひとつひとつその場で仕上げていくという贅沢さ。ブッフェなので無制限ですし、マイナーチェンジも可能です。
「いろんな人がいて、いろんな人と触れ合ってアイデアが浮かんでくる」という河合さん。「この場を楽しんでもらえるなら、ホンネでは費用対効果なんかどうでもいいと思っている」というセリフ、実は田中さんも板垣さんも、表現こそ違えど同じことを言っていました。人に喜んでもらうことが好き。心からの笑顔でそう語る3人のナイト。うーん、ワガママを言って困らせてみたい!!
客室はフロアごとに基調色や内装が異なります
お土産に人気が高いオリジナルの時計は全10色
客室内でディナーやアフタヌーンティーもOK
レストラン「パトリー」は気取らない雰囲気
7色の中から好みの部屋を
ホテルピエナ神戸の客室は10階のスイートを除き、フロアごとに異なる7パターンもの内装が用意されています。宿泊部支配人付の山本朋子さんによると「5階と9階は明るさの異なる木目調で、ビジネスマンのご利用が多いですね。女性に人気なのは4階の淡いピンク。私は3階のアイボリーが好きなんです。温もりと優しさを感じます」。8階のミントブルー、7階の淡いパープル、6階のミントグリーンもパキッとした個性的な空間です。
アンティーク調のインテリアが素敵!
家具はすべてイタリア製。重厚な造りですが、部屋の広さに応じてデザインを変えているため圧迫感はありません。自慢はテラコッタの壁掛け時計で「イタリアの職人に作ってもらったものなんですよ。お客様のご希望で販売もしていますが、品物が届くまでは忍耐強く待ちましたね。さすがイタリアです」と笑う山本さん。「クローゼットもアンティーク調で素敵でしょう?鍵をつける必要なんかないかもしれませんが、これがあるだけでぐっと感じが変わりますよね」。機器や備品、アメニティも快適さを最優先した便利で嬉しいものばかり。どの部屋に滞在しても満足度は変わりませんが、リクエストがあるときは事前に伝えておくといいでしょう。
目指すは街中のオーベルジュ
近年は宿泊に特化し、ダイニングを持たないホテルが増えてきましたが、ホテルピエナ神戸は、この規模としては珍しくメインダイニング、カフェ、さらにルームサービスもしっかりそろっています。レストラン「パトリー」の板垣尚史料理長は「目指すは街の中のオーベルジュ」と言います。板垣さん、以前はピアニストとだったという、ちょっと変わった経歴の持ち主。しかも途中でスーパーに転職し、食材や物流の裏側も勉強したのだそうです。
「スーパーでの経験は、仕入れにはものすごく役に立っていますよ。その時々で、いちばんおいしいものを出したいですからね。おいしいものといっても人それぞれですが、僕はサービス、雰囲気、料理とトータルで感じてもらえるものだと思っているので、それを上手に演出したいですね。そのためにいろいろな工夫はするけど、基本はフレンチビストロのスタイル。あまり手を広げすぎて軸がぶれないように気をつけています」。
パトリーのディナーメニューはプリフィクスで、料理もボリュームも自分で選べるようにかなり自由度が高く、なおかつ実にお手頃。レストランもほっこりとした居心地のよい空間なので、一人でゆっくり食事を楽しむ女性も少なくありません。「いつも元気でストレスフリー」かつ「ケチケチするのが大嫌い!」な板垣さんが手がける料理。その明るい笑顔とともに、きっと強く心に残るはずです。