間接照明のみのロビーはクラシックムード満点
デザイン、調度品、装飾、全てが見どころ
客室の床はテラコッタ。これもヨーロッパ風
2つあるプライベートチャペルでの挙式は大人気
閑静な場所にひっそりとたたずむ
神戸の一大歓楽街である東門街とトアロードに挟まれた静かな場所。その中に溶け込むようにホテルモントレ神戸は建っています。人目を引く装飾も看板もない、ひっそりとしたたたずまい。しかし、この外観こそが、ホテルモントレ神戸のあり方を象徴しているのです。
北イタリアのロマネスク様式を再現したという荘厳なエントランスは、まるでポルティコのよう。そこを抜けると目に飛び込んでくるのは美しい中庭。営業部宿泊課の藤澤隆一さんは「中世の修道院をイメージしていますが、南イタリアの古城のようだとおっしゃる方も」。そしてロビー。ちょっと年季の入ったソファや歴史を感じさせる調度品は、ヨーロッパのプチホテルに滞在したことのある人ならきっと、「そうそう!」と膝を打つことでしょう。
今なお失わない輝き
「モントレの第一号は東京・山王ですが、神戸出身のオーナーにとってここは本当の意味での“発祥の地”。それだけに愛着もひとしおなのです。」開業は1989年。これまでにないタイプのホテルができたと大騒ぎになり、見学に訪れる同業者は引きも切らず。もちろん「飛ぶように売れたそうです。ここで働きたいと憧れるホテルマンはたくさんいました。今でもそうだと思いますよ」と藤澤さん。
ホテルモントレ神戸が、オープン当初の輝きを今なお失わないのは、その徹底したメインテナンスと雰囲気作りへのこだわりゆえ。客室に向かうエレベータの前で藤澤さんが言います。「お気づきになりましたか? ここまでひとつも自動ドアがないんですよ」。そういえばエアコンの通風口も、館内の案内表示も見あたりません。「お客様のわかりづらいという声もありますが、ホテルのコンセプトや雰囲気を損なうものは、採用したくないという意向なのです」。実は先頃、客室のシリンダー錠をようやくタッチカード式のキーに変えたばかり。藤澤さんは笑います。
伝説はつくられる!?
今年で満20年を迎えるホテルモントレ神戸。「古い」「機能的でない」と感じるゲストもいるそうですが、居ながらにして海外気分を味わえるこんなホテルは稀少です。その「古さ」を楽しんでこそ滞在する価値があるというもの。ちなみに、一見歴史がありそうな建物も開業時にいちから造られています。ところが。藤澤さんによると「どこから広まったのか、お客様が館内で『この建物はその昔、フランス人が住んでいたお屋敷で…』なんて、とんでもない解説をしているところに出くわすことも。心の中では、ちゃうで~と突っ込んでおりますが、横から口を挟むわけにはまいりません。面白いけれどジレンマです」。ホテルモントレ神戸だからこその“伝説”。きっと、これからも大いに語り継がれていくのでしょう。
回廊から臨む中庭の風情も素晴らしい
つかず離れずのサービスもヨーロッパ式
荘厳な雰囲気の「ロビーチャーチ」は必見
隠れ家レストランとして知られる「サン・ミケーレ」
神戸を愛し、神戸に愛される
ホテルモントレ神戸のゲストは、週中はビジネス滞在、週末は観光客、日・月は地元の人々の休養にと、ほぼ明確に分かれるのだそうです。「その他にも宴会やカンファレンス、ワークショップ、ウエディングに関しては時期を問わずフル稼動という状態ですね」と宿泊課の藤澤さん。景気後退とともにホテル施設利用の減少、また邸宅式ウエディングがはやりの昨今、このホテルで絶え間なく挙式が行われ、宴会場が利用されている理由はどこにあるのでしょうか。
「まずは、何といっても神戸という土地柄でしょうか」。異国情緒のある教会で挙式したいという女性はまだ多く、一生に一度の大イベントとしてより華やかな方が好まれるという神戸気質。市内各ホテルもウエディング企画には特に力を入れていますが、ホテルモントレ神戸が常にトップクラスの人気を保ち続けているのは、決して大規模ではないにもかかわらず2つの個性的なチャペルを設けているためかもしれません。
個性的な2つのチャペル
ひとつはクラシックな雰囲気漂うロビーチャペル。新郎新婦は重厚な石造りの階段から登場し、アンティークライトに照らされてバージンロードを進みます。賛美歌や神父の説教、拍手の音が美しく反響するシンプルかつ厳かな空間。参列する誰もが感動するというこのチャペルは、晩婚化が進む昨今、落ち着いたセレモニースタイルを望む大人の女性に支持されているそうです。
一方、「見学に来た若いカップルが一目で決めることが多い」というのがチャペル フェリーチェ。対面式の参列席が特徴で、ライトアップされたバージンロードや個性的なデコレーションなどの高いデザイン性が神々しさを引き立てます。いずれにしろシックやエレガンスを粋と考える神戸っ子のハートをがっちり捕らえていることは確実。結婚式や披露宴に参列し、「私も絶対ここで!」と心に決め、その夢を実現させる女性も少なくないそうです。
驚異のマネジメント力
ところで、神戸には他にも特徴があります。「歓楽街で飲んでいて、帰宅するのが面倒になってホテルに泊まってしまう人が多いんです。昔に比べると減りましたが、それでもウォークインゲストのない日はありません」。こうした背景もあり、ホテルモントレ神戸の稼働率は常に95%以上。脅威といってもいい数字です。そんな「毎日ほとんど空室がない」状態を巧みに管理しているホテルモントレ神戸。藤澤さん曰く「最初はウソだと思っていたんですが、働いてみると本当だった。最初は緊張しましたが慣れましたね、恐ろしいことに」。神戸を愛し、神戸に愛されるホテルに「オフ」の文字はないようです。
ポルティコのようなエントランスを抜けると…
客室の床はテラコッタ。日本では珍しい仕様
少しずつ造りが異なるのも滞在の楽しみに
プライベート感たっぷりのメゾネットスイート
モントレスタッフ船出の場所
1軒1軒異なるテーマで全国展開しているホテルモントレ。そこには、それぞれの土地でそれぞれのお客様との関係を築き、しかもコンセプトを揺るがすことなく「モントレ魂」を守り続けているスタッフがいます。そんな彼らの船出の場所であり、また懐かしく帰ってくるところが、ここホテルモントレ神戸です。他府県で勤務する幹部クラススタッフの中には、ここで一からホテルビジネスを学んだという人も少なくなく、みな口をそろえて「いちばん思い入れがあるのはモントレ神戸」と言います。
気品漂う格調高い空間
こんなホテルがあるのか、と世間の度肝を抜いたホテルモントレ神戸は、気品漂う格調高い空間造りに全力を注いでいます。館内に置かれた家具や調度品は、オーナーがイタリアで収集した本物のアンティークがずらり。本来なら、気軽に座ったり手を触れたりするのもためらわれるほどの逸品が「現役」で活躍しています。「ソファの貼り替え用のファブリックも、すべてイタリアで見つけてきたもの。メインテナンスに際しては、アンティークの趣をなくさないようにお願いするのに苦労します」と宿泊課の藤澤さん。リノベーションされた寄せ木細工の廊下の見事なこと!また、廊下に置いてあるおそらく飼い葉桶のような木の箱。おそるおそる開けてみると掃除機が入っていました。単なる「飾り」にしないからこそ風合いに磨きがかかるのでしょうね。
「モダン・ミラノ」の粋をベースに
客室全7カテゴリー。デラックスコーナーツインを除き、床はみなテラコッタという珍しい仕様です。「日本のホテルではめったにありませんね。身近でないせいか冬は寒いのでは、とご心配なさる方もありますが、反対に温もりを感じるほどですよ」。内装は「モダン・ミラノ」。クラシックな雰囲気と洗練されたインテリアの美しい対比が印象的です。デコレーションは最小限。また客室によって構造が異なり、サロンスペースが分かれた続き部屋風になっているところも。まるでスイートのような贅沢な造りでゲストにも好評です。そんなストイックな感じが「修道院を思わせる」のかもしれませんね。
改装により誕生したデラックスコーナーツインは、よりシックなアーバンスタイルで人気ですが、ヨーロッパの邸宅に仮住まいするような感覚が楽しめるメゾネットスイートはやはり別格。サロンからカーペットが敷かれた階段を上るとベッドルームという造りは、プライベートな滞在には最高のシチュエーションといえそうです。