日本で最初のウェスティンを冠したホテル
徳川家康直筆の手紙
水の流れをイメージしたカーペット
ロビーにある南蛮屏風図(原画は神戸市立博物館蔵)
喧騒から離れたロケーションが売りもの
1993年、ウェスティン大阪は国内初の「ウェスティン」を冠するホテルとしてオープンしました。JR大阪駅から歩いて10分少々。地下鉄梅田駅がそばにあるわけではありません。ホテルに行くにはタクシーを利用するか、駅から出ている送迎バスを利用するか、あるいは歩くか。このロケーションに不便さを感じる人も少なくないはずです。ところが、「離れたところにあるからこそ、都会のオアシス的存在になれるのだ」と言う人々が増え、今では多くの固定客をもつようになりました。プライバシーを気にする著名人や長期滞在者にもひんぱんに利用されるホテルとなっています。
壁に飾られた信長や家康の直筆古文書
ロビーには大きな南蛮屏風図が飾られています。7階のエレベーターホールには「詠史絶句六曲屏風」と呼ばれる、戦国時代を生きた6人の武将を詠った屏風、さらに26階のエグゼクティブクラブラウンジに行くと、織田信長直筆の和歌と、徳川家康が関が原の戦いの1カ月前に書いたとされる直筆の手紙を自分の目で見ることも。貴重な歴史的美術や古文書が飾られているのは、ホテルのコンセプトを「安土桃山時代」としているからです。安土桃山時代は日本の文化が西洋の文化に触れた最初の時代。そして、このホテルは日本におけるウェスティンの第一号。つまり、このホテルは「西洋の文化をとりいれた最初のホテル」と見立てられているというわけです。そのコンセプトに沿って、和服を着てチャペルで結婚式を行う「和婚」式まで可能なのだとか。
コンセプトを反映したリノベーション
オープンしてから15年。ウェスティン ホテル大阪はリノベーションをスタートしました。「安土桃山時代」のコンセプトに沿って、30階にあるインペリアルスイートは「水と大地」を表現。水の流れと大地のうねりを表す二種類のカーペットが敷き詰められ、バカラのシャープなシャンデリラから流れ落ちる水が、エグゼクティブフロアを通過してロビーにいたる…というストーリーが作られています。深遠な芸術性を備えたホテル、それがウェスティン ホテル大阪。宿泊するだけではもったいない、そんな気がしてきます。
山のイメージを表す豪華スイートのベッド
織田信長直筆の和歌
有名シェフでいつも満杯な中国料理“故宮”
一年中泳げる室内温水プール
迅速さが際立つ特殊なサービス
ウェスティン ホテル大阪のロビーにでは、他のホテルでは見かけない、余分ともいえるスタッフの姿が目に入ります。みな「なにか役に立てることはないか」と目を光らせている様子。耳にはイヤホン、小さなマイクも装着しています。彼らはコマンドセンター(指令をだす部署)と連絡を取り合い、サービスを必要としているゲストがいると、すぐに駆けつける体勢を取っている・・・。こんなホテルは他にちょっと思い浮かびません。「このサービスをなんと呼んでいるのですか」とたずねると、「サービス・エキスプレスです」という答えが返ってきました。
「サービス・エキスプレス」とは、その字のごとく、サービスを迅速にするためのシステム。世界に先駆けてウェスティン・ホテルズ・アンド・リゾートが採用したものです。ゲストからの依頼をサービス・エキスプレスという部署で受け、彼らが担当部署に直接手配依頼をあげます。それにより、ゲストが電話オペレータと話をしてから担当部署に回されるという二度手間を省くようにしたのです。しかし、ウェスティン ホテル大阪のサービス・エキスプレスは、はるかにその上を行く内容でした。
バトラーサービスを上回るシステム
ウェスティン ホテル大阪のサービス・エキスプレス専属スタッフは、「41人います」とのこと。これはさらなる驚きです。たとえばニューヨークのセントレジス ホテルは、各階にバトラーをひとり待機させ、客室にいるゲストに迅速なサービスを提供することで有名になったホテルです。しかし、ここウェスティン ホテル大阪のシステムは、バトラーサービスとこそ呼んでいませんがそれ以上のもの。41人という大人数を使えば、バトラーを上回るサービスを提供することができるはずです。
幸せのハーモニー奏で隊
その中のひとつが「幸せのハーモニー奏で隊」。誕生日を迎えたゲストがホテル内にいると聞けば、サービス・エキスプレスのスタッフで結成している「奏で隊」がケーキを届け、歌ってお祝いをするのだそうです。こんな素晴らしいサービスシステムを開発したウェスティン ホテル大阪には、ただ感心するばかりです。
エグゼクティブ・フロアにある会議室
正方形に近いレイアウトのひろびろとした部屋
吹き抜けのカフェ
クラッシックな雰囲気のブルーバー
ゲストの情報をすばやく伝達するサービス
エグゼクティブ・フロアを予約して、ホテルにチェックイン。ロビーに入ると、「いらっしゃいませ」とスタッフの挨拶を受けます。エグゼクティブ・フロアに予約してあることを告げると、「チェックインはラウンジで行いますので26階へどうぞ」。そのまま26階のエグゼクティクラブブラウンジへ直行。エレベータを下りるときにはすでに連絡が届いていて、マネジャーの歓迎をうけます。この専用フロアにある会議室には、戦国時代の武将、家康と信長直筆の文献が飾られています。
チェックインを終え、ベルマンに付き添われながら部屋に入ると、正方形に近い形。ホテルの部屋といえば長方形が多数をしめる中、この形はとても新鮮に感じます。ベッドのはじから壁までの広いスペースが部屋の広さを引き立てています。バスルームのドアを開けると洗面台だけしか見えません。トイレとバスルームは、その脇のドアの奥。2枚のドアを設けることで、バスルーム内での音が部屋に漏れない造りになっているのです。
ロビーカフェと名物シェフの中国料理
部屋のレイアウトに満足しながらロビーのカフェに行くと、3階まで吹き抜けになっているガラス張りの構造。ガラス越しに木々の緑を眺めながらくつろぐことができます。どこか徒歩圏内で面白いところは? とコンシェルジェにたずねると、「隣のビルの地下に、昭和初期のレストランを摸倣して造られた街があります」とのこと。実際に足を運んで、その街並みに驚きました。すぐ近くにこんなテーマパークのような場所があるのなら、2~3日かけてゆっくりとホテルに滞在していたいという気持ちになります。夕食になると、館内の中国料理「故宮」は、すでに満席。なぜこんなに人気があるのかといえば、「シェフが毎週テレビ番組でている有名人」だからだそうです。ミシュランガイドでも星を獲得しました。
都会のオアシス
実際に宿泊をしてみると、ウエスティン大阪が「都会のオアシス」として、多くのファンをつかんでいる理由がわかりました。抜群のサービスと施設、人々を感心させる歴史的文献、そして、隣接しているテーマパークともよべる昭和初期のレストラン街。都会の喧騒から逃れて、ゆっくりしたい人にとってこれほど適したホテルはないのです。