ホテルからほど近い六角堂にある“へそ石”
お土産選びに迷いに迷える錦市場も散歩圏内
ロビーウエディングも行われる広々と明るい雰囲気
京の街を眺めながらの入浴は格別(一部客室)
祭りの開始は京の中心から、を自負するホテル
夏。二十四節気でいえば小暑のころ、街はいつにも増して気ぜわしくなります。烏丸高辻東入ル。かつて御旅所が置かれていたこの地の役員により、神事の無事を祈る参拝「高橋町社参」が行われ、斎竹(いみたけ)が建てられる。葉付きの青竹に張られた注連縄(しめなわ)。それを長刀鉾稚児が太刀で切って、壮麗な山鉾巡行がスタートする。日本中から、いや世界から数多くの人が詰めかけ、京都の夏は一気にヒートアップ。そんな日本三大祭りのひとつ「祇園祭」の本格的なオープニングを飾る好運な地域に、ホテル日航プリンセス京都はあります。
「いやいや、エンディングの方でもね、還幸祭の神輿3基のうち2基がホテルの前を通るのですから」と自慢げなのは宿泊部部長の長野種直さん。祭りにはホテルの一角を提供しているといい、京の街の歴史と一体化している誇りを感じさせます。
動きやすい便利な立地
「しかも、ここは京都のほぼ中心です」と宿泊営業課の松井恵理さん。その根拠は、「六角堂さんのへそ石がすぐそばですから」。四条烏丸の交差点から同じくらいの距離を、北へ行けば六角堂。南へ行けばホテル日航プリンセス京都。つまり、「いろいろな見どころへも、お仕事先へも、動きやすい便利な立地なのです」。たしかにオフィス街やデパートなどのショッピング街も近く、散歩気分で六角堂や錦市場、足を延ばせば祇園へも。けれど、大通りから一本中に入っているせいか、ずいぶん静かです。「警察に申請しなければ大型バスが入って来られない場所なので、非常に落ち着いていますよ」。
水にも恵まれて“日本らしいウエルカム”を
土地の恵みは、意外なことに“水”にもあります。「茶の湯から友禅、酒づくり…と、京文化は水がベースです。このホテルの地下には下鴨神社や京都御所と同じ水脈が流れていて、約80%はこの地下水を使っています」とは代表取締役社長の田中健二さん。万が一のポンプ事故に備え20%は公共水道を使用していますが、やはり「水がいいね」と褒められることも多いとか。そのこともあり、ホテル日航プリンセス京都は、近代的なシティホテルなのに、お風呂がずいぶんゆったりめにつくられています。明るく広々としたロビーを通ってエレベーターを上がり、京の街を一望する開放的な客室へ。過ごしやすいインテリアに加え、このバスルームの広さは感激ものです(※一部を除く)。「お肌にやさしい軟水で、湯上がり後にもしっとり感が残り、湯冷めしにくい効果もあります。髪のパサつきもなくなるそうですよ。そしてなにより、心の底からリラックスしていただけると思います。日本らしいウエルカム。京都という国際都市で、私たちは、独自のスタイルを目指しています」
こだわり食材とワインのマリアージュに感激!
京都らしい目にも艶やかな舞妓膳はゼヒもの
落ち着いた雰囲気の中リラックスして本格中華を
ゆったり楽しめるカフェ&ダイニング「アンバーコート」
テナントに頼らず独自の味を
一般の方にはあまり知られていませんが、ホテルのレストランには2つのタイプがあります。ひとつはテナント。運営は基本的にそのレストランに任されます。もうひとつはホテルが自前での運営。カラーを強く打ち出せますが、当然ホテルにかかる負担も大…。
ところが、ホテル日航プリンセス京都は、なんとすべてのレストランを独自に運営しているとのこと。これだけでも、いかにチャレンジングなホテルかが想像できます。
古都のみやびに舌つづみ
ま新しい鉄板がコの字型に囲むいちばん新しい鉄板焼レストランの「豊園」は、上質な中にも明るく華やかな雰囲気。名前のいわれは、ホテルにほど近い場所にかつて豊臣秀吉の別邸があり、その邸内の井戸を“豊園水”と呼んだことから。“和と洋の融合”をテーマに、料理長自らが選んだ上質の牛肉や魚介類を提供しています。壁にはビルトイン式のワインセラーがあり、飲み頃の状態でオーダーを待っている。その数100種類以上。ソムリエの藤原さんをはじめ、スタッフ全員でワインの情報を共有し、“肉には赤、魚介には白”を越えた新しい提案を研究し続けているとのこと。
日本料理と天ぷら割烹の「嵯峨野」は、丹後地方や四国などから旬の食材を仕入れ、京都らしい四季の懐石を提供。よくある「ほんの一口だけ」の懐石でなく、しっかり味わえて満足できるボリュームがセールスポイントです。朝は京都らしい「朝がゆ定食」などのやさしい味わいから、昼は舞妓さんの化粧箱をヒントにした「舞妓膳」など。夜は本格的な正統懐石料理に舌つづみ…とシーンごとに表情を変える奥深いお店。天ぷら割烹のカウンターで各種のお酒を飲みながら今日の夜を過ごすのもオツなものです。
中華も洋もあでやかに
中国料理の「翡翠苑」は広東料理をベースに、約30品から選んで味わう香港スタイルの飲茶など、多彩な楽しみがあるお店。料理長は年に4回も自ら中国へ出かけるほど新しい味を研究に余念がありません。紹興酒も国家認定の黄酒博士が醸す逸品がラインナップ。店内に掛けられた高伯龍氏などの中国美術を眺めながらの食事も一興です。
さらにフレンチ・イタリアンテイストの地中海料理コースから気軽なティータイムまで楽しめるカフェ&ダイニングの「アンバーコート」、英国調のゆったりしたインテリアで、洋酒を中心に、こだわりにこだわりを重ねたダーレーの“ソルティドッグ”が絶品のメインバー「ダーレー」まで、あらゆるシーンに対応。案内してくださった宣伝企画課課長の懸樋則之さんが「どこよりも独自の価値提示がモットーですから」と胸を張るように、どれも魅力的なレストランです。
大きめサイズのベッドがうれしいツインルーム
デスクの広さもビジネス客には大きなポイント
ニッポンを象徴する折り鶴は紙も京都仕様
トリプルルーム。ちょっとしたレイアウトで旅が快適に
ドシロウトにしか超一流はつくれない
ここは、いわゆる最高級と称されるホテルや旅館、レストランが山ほどある京都。しかし、超一流と言われるもてなしに、なんとなく肩が凝った記憶はないでしょうか。
「最初、オーナーに社長を命じられたときは驚きました。なぜシロウトの私を?と」。
にこやかに話してくださったのは代表取締役社長の田中健二さん。オーナーとは京セラ創業者の稲盛和夫氏。じつは、ホテル日航プリンセス京都は、JALホテルズと技術援助契約を結んだ京セラグループのホテルなのです。
本当にリラックスできるホテルづくり
「そもそもは海外からのゲストを自前でもてなしたい…というのがあったようです。母体が京都を地場としていることもあるでしょう。しかし、オーナー自身が数多く海外に出かけ、その経験の中で“日本らしいウエルカム”を結実させたかったのではないでしょうか」。
その意味で、あえてホテル事業の経験がないメンバーで挑戦を始めたのが2004年。「本当にリラックスできるホテルづくりはドシロウトにしかできない!と稲盛は言うのです。ノウハウはすぐに形骸化してしまう。経験をアテにしていては新しい価値は生み出せない。一流を目指すけれど、“すでに一流のノウハウ”ではダメなのです」。
“細かな心配り”という日本らしさ
しかし、そうは言っても、具体的なものは何もない。まさに日々続く禅問答のようなものです。その中で、水とバスルームは、第一歩だったのかもしれません。夏暑く、冬寒い。そんな京都ではお風呂の位置づけは極めて重要です。「その延長線上のサービスということで、青竹踏みも全室に置きました(笑)」と宿泊営業課の松井恵理さん。そうそう。こういうのって、実際に泊まったときにあると嬉しいんですよね。
なるほど。“日本らしいウエルカム”は、“細かな心配り”という意味でもありそうです。たとえば客室内の内扉。外と中を隔てるのがドア一枚では心もとない。もう一枚の心配りがリラックスにつながります。そしてビジネス客には少し大きめのデスク。ノートパソコンを開いて資料を乗せて、さらにコーヒーや茶菓子を置くスペースもあるから、仕事もはかどりそう。
「うちではトリプルルームにも力を入れていて、場所柄、女性3人でのご利用も多いので、ご好評をいただいています。その中でもちょっとしたアイディアなのが、そのままベッドを3つ平行に並べるのではなく、2台と1台、ちょっと分けたところ。そのほうが話をしやすかったり、私イビキかくから少し離れていて助かったわ…とか(笑)」
“日本らしいウエルカム”とは、きっと答えがないもの。日々努力を続ける姿に拍手です。