あたり一面、桜の香りさえするようです
晩秋の頃
時にはこんなゲストも。
全ての葉が落葉した冬。静寂があたりを包みます
奥日光の豊かな自然に囲まれて
JR日光・東武日光駅から車で約1時間、中禅寺湖のほとりに広がるみずならの木立の中に中禅寺金谷ホテルはひっそりとたたずんでいます。創業は1940年の昭和初期。時代の変遷と共に起こったアメリカ軍による接収など紆余曲折を経て、1992年、歴史あるおもむきと伝統のスタイルはそのままに、より自然と共生できる形に全面リニューアルしました。以来、奥日光の豊かな自然と四季を満喫できる、大人のためのリゾートホテルとして、多くのゲストに愛され、今日に至っています。
部屋を指定するリピーターゲストも
中禅寺金谷ホテルを取り巻く環境はまさに大自然そのもの。周辺には目に付く建物が全くありませんから、ホテルの建物はさながら森の中にぽつんとある別荘のようです。全客室に備えられたベランダからは、運がよければサルや鹿、リスなどが散歩する姿を目撃できるかも!?自然との共生を目指す中禅寺金谷ホテルならではの光景でしょう。ゲストの多くは四季折々に変化するこの大自然を満喫するために訪れるとのこと。「面白いことにリピーターゲストは、ほとんどの方が部屋まで指定されます。ホテルのリピーターというよりも、まるで部屋のリピーターのよう」とフロントスタッフの鏑木一昭さんは語ります。何にそこまで心を惹かれて部屋まで指定するのか。「どの部屋からも豊かな自然をたっぷり満喫していただくことができますが、実は“ベランダに出ると目の前が桜の木”という部屋が、部屋を指定されるゲストの中では特に人気です。絵を描いたり、ぼんやりしたり、それぞれの時間を満喫していただいているようです」とのこと。風にあおられて花びらが散る様子を眺めるだけで、心は得もいえぬ感慨に浸れること間違いなし。それをベランダで独り占めできるのですから、1度味わったらやめられなさそうです。
四季折々に変化する自然をダイレクトに味わう
「四季折々の豊かな自然を肌で感じていただけることが、何よりのおもてなし」と語るように、自然を満喫できるのは桜の季節だけではありません。5月末から6月にかけては、新緑の緑の鮮やかさが、鮮烈な印象となって心に焼きつく季節でしょうし、夏には夏の濃い陰影を持つ緑が、爽やかな風となって脳裏に焼きつくことでしょう。秋の見ものはもちろん紅葉。赤、黄色、紅色に色づいた葉が光を受けて黄金色に輝く姿は、まさに自然の錦。ゲストの心をほっと和ませ、豊かな実りに感謝するような、贅沢な時間を過ごせることは間違いありません。全ての葉が落葉し、部屋から中禅寺湖が見えるようになった冬には、冬ならではの趣が味わえます。満天の星空に思いを馳せたり、しんと静かな中禅寺湖の水面をただ眺めているだけで、自然の恩恵に畏怖を感じると同時に心が洗われるような深い感慨を覚えるに違いありません。四季折々の自然がもたらす恵みを、のんびりゆっくり味わうのが1番です。
日光虹鱒のソテー・金谷風はランチでも可能
お食事はダイニングルーム「みずなら」で
メニューはゲストと作るもの
「百年ライスカレー」は最近の定番料理
ニジマスのソテーをおかわり!
「ニジマスのソテー・金谷風」は、伝統ある料理に定評がある中禅寺金谷ホテルの中でも特別なこだわりがある名物料理。この1皿を食べに宿泊するゲストもいるという、絶品中の絶品です。ソースの味付けにはしょうゆ、みりん、お酒のみと、極めて日本的でシンプルそのもの。フレンチと日本の程よいコラボレーションが自慢です。さらに「頭を落とさず1本まんまで調理することがソースに独特のコクと旨みを出す秘訣。味付けがシンプルだからこそ譲れないポイントです。余分なえぐみが出るのでソースの作り置きはしません。その都度作る手間があってこそ“金谷風”。これを外国からのゲストにお出しした時に『おかわり!』と言っていただいたのは本当に嬉しかった」と料理長の川原晴彦さんは笑います。さらに漁獲量が少ないために日光市内のレストランでもほとんど食べられないヒメマスを、中禅寺金谷ホテルではある程度の量を入荷できるようになりました。このヒメマスを使った1皿も隠れた人気料理。もちろん中禅寺金谷ホテルでも要注文のスペシャルメニューです。希少性の高さだけがセールスポイントではなく味も「臭みもなく、まろやかな食感と繊細な味。ぜひ食べていただきたい」と料理長のお墨付き。この1皿を味わうことだけが旅の目的であっても間違いではないはず。究極の味をぜひお試しください。
ホテルはゲストとの会話で作り上げるもの
川原さんは言います。「ホテルは、ゲストとスタッフが会話をして作り上げるもの。食事も一応のメニューはありますが、決して固定ではありません。ゲストの好みや希望を探りつつ、ニーズに合う料理を提供しています。全てのメニューを食べつくしているゲストもいらっしゃいますから、会話なしには成り立たないんです。こうしたやりとりを大切にすることが実は“金谷スタイル”。守り続けるべき伝統でありコアであると、私自身は思っています」。
もう1つの名物メニュー「百年ライスカレー」
名物はニジマスのソテーだけにとどまりません。数年前、姉妹ホテルの日光金谷ホテルの蔵を開けたところ、様々な食器や銀製品と共に料理レシピが出てきました。“金谷スタイル”そのものとも言えるこのレシピの1つを現代風にアレンジした「百年ライスカレー」は、最近の定番料理の1つ。スパイシーなのにまろやかでコクがあるお味は、年齢を問わず好評です。このカレーをパイで包んだ「百年カレーパイ」も人気の商品。都内の百貨店などでの催事では、1日何千個という単位で売れてしまうとか。宿泊時には要予約ですね。
木材をふんだんに使って、ロッジ風外観に
火を入れると自然にゲストが集まって…
サモワールのやわらかな音をぜひ
“空ぶろ”は空に手が届きそうな、そんな雰囲気
そこかしこにこだわりが
1992年に全面リニューアルした外観はカナディアンロッジ風。温かなぬくもりに溢れ、周辺の環境になじむ風合いが特徴です。正面玄関を入ると大谷石で作られた大きな暖炉がお迎えします。冬には実際に火を入れて使用しているこの暖炉はゲストにも大人気。冬のバータイムには暖炉の火を眺めつつ、お酒を傾けて。心の底から寛ぐのに一役買っています。ホテル内を散歩中、シュンシュンという、やかんでお湯を沸かすような優しい音に引かれて立ち止まるとそこにはロシア製のサモワールが。中禅寺金谷ホテルでは15時から夜半まで、セルフサービスでコーヒーや紅茶などを楽しめる宿泊ゲスト専用のラウンジを設けています。紅茶は知る人ぞ知る“ロンネフェルト社”のもの。なかなか手に入らない逸品です。豊かな自然に囲まれて紅茶でほっと一息。なんて贅沢なんでしょう…。
開放感の中、アートを楽しむ
客室から外に出て渡り廊下を歩くと露天風呂“空ぶろ(そらぶろ)”が。白濁した温泉を日光湯元から引き込んだ露天風呂は、同ホテル顧問を務める小山薫堂さんのネーミングの通り、大自然の真ん中で空を近くに感じることができる開放的な空間です。ちなみに同ホテルの水やお酒、スタッフの名刺などのデザインも小山氏によるもの。さりげないセンスのよさに一発でノックアウトされそうでした。この数年、中禅寺金谷ホテルでは様々な取り組みを進めています。アートスペースの設置もその1つ。2008年は奈良美智さん、2009年は吉田照美さんの作品展を常設し、旅先でアートを楽しむ喜びを提供しています。このスペース、ちょっとぼんやりするには絶好のポイント。景色やお風呂で寛ぎ、柔軟になった頭でアートの持つパワーを吸収してみるのはいかがでしょう。
スノーシューツアーやカヤックツアーなども
また豊かな自然を味わうのにただ部屋で眺めているだけではもったいない、という方には、スノーシューツアーやカヤックツアーなど、自然の中で遊ぶプランをご案内。3年ほど前からはじめた取り組みです。スノーシューツアーはスキーウェアを持参すれば手ぶらでOK。周辺の自然を知り尽くしたプロが同行し、ルートもその時に応じて決定するなどキメ細やかな対応が好評で、このツアーを目当てにしたリピートゲストが増えているとか。「女性一人やお子様でも気軽に参加できます。やってみたいけれど一人では…と思っていた方が、どんどんハマるようですね。部屋でのんびりするのもいいのですが、こうしたツアーで奥日光の自然を満喫するのもお勧めですよ。実際に私も行ってみたのですが本当に楽しい!開眼した感じ」とフロントスタッフの鏑木一昭さんは語ります。