窓の外には中禅寺湖が
やわらかい感触のお湯で心もほどける
光がたっぷり入る個室料亭も日本ならではのしつらえ
週に1回いけかえる花
四季折々にたたずむ贅沢な空間
JR日光・東武日光駅から、十九折のいろは坂をバスで40分、中禅寺湖畔から数メートル上がった高台に日光の離宮・楓雅は位置しています。3000坪という広い敷地に客室は34部屋と極めて贅沢な空間は、さながら宮殿のようなたたずまい。四季折々に変わりゆく絶景の中、あくまで「日本ならでは」の客室とおもてなしにこだわる、一本気あふれる旅館です。
帰り際に「次回の予約を」と
「チェックアウト時に次の予約をされるゲストがびっくりするほど多いんです。このあたりで来るから、と。ですからほとんどの方がリピーターです」と語るのはフロントマネジャーの小泉さん。なんと楓雅では、年に数回、合計で20回以上も足を運ぶゲストや、月に3回というゲストもいるのだとか。「自分でもどこかに宿泊する時に、リップサービスとしてまた来ると言ったとしても、実際に予約をすることはなかなかありませんから。ご満足いただけたのかなと思うと本当に嬉しいですね。最近ではチェックアウトのときに『また来るよ』と言われると『いつ、いらっしゃいます?』なんて確認することも。そうやって次の日取りが決まってしまう方も実際にいるんです」。本当にリピーターが多いということを象徴する大浴場でのエピソードをひとつ。6月に来て、また9月にも、というゲストにお目にかかり、あれこれうかがったところ「眺望、おもてなし、お部屋、お食事。私はあちらこちらの旅館に行っていますが、これだけバランスのとれた旅館はないですね。今こうやってお風呂に入りながら、次はいつにしようかなんて考えているわ。心の贅沢ってこういうことよ」とのお言葉。心の底からうなずいてしまいました。
「純和室」にこだわるゲストへ
「最近は国内外問わず、純和室に泊まりたいと要望されるゲストが多い。畳敷きの部屋に泊まりたくなった、広い内風呂でゆったり湯船につかりたいなど理由は様々ですが、とにかく純和室に泊まりたい、と。楓雅は日本ならではの純和室とおもてなしにこだわっていますから、そういうご要望にはスタッフの張り切りも一段とアップしちゃうんですよ」。国外からのゲストには日本の客室の使い方、お風呂の入り方などについて解説した本を渡し、日本ならではのルールを存分に楽しんでもらえるように取りはからいます。浴衣を着たいというゲストには仲居が着付けることも。確かに露天風呂などの入り方をここでマスターすれば、全国各地どこへ行っても「日本のお風呂」を楽しめる。いいことづくしですね。「サービスと一言でくくれないような、手間ひまを惜しまないフレキシブルな対応が、実は日本ならではのおもてなしであり楓雅の持ち味。四季折々のこの景色の中、楓雅の“日本”をご堪能いただきたいです」。
四季折々の花でおもてなし
ラウンジより男体山を仰いで
さながら竜宮城のようなたたずまい
こだわりの品々をご賞味あれ
花も景色も料理も存分に
楓雅では、館内110カ所に飾られた花々がゲストを迎えます。まるで花が目に入らないエリアはないのではないかと思われるほど、あちらこちらに四季折々の花々。この全てを週1回のペースでいけかえるのが何よりのこだわりなのです。まずは部屋に入ってすぐの靴箱と床の間に。連泊するゲストの部屋は、外出時に仲居が手早く活け換えます。「わざわざアナウンスすることはありませんが気付いてもらえると嬉しい」とは客室担当の仲居さんの言葉。ロビーの大きな花瓶の前は、帰る前に写真を撮るゲストで大賑わいです。ちょうど取り替えるタイミングで部屋に戻ってきたゲストには「来た時と違う! 写真を撮っておけばよかった」と言われてしまうこともあるそうです。
絶好ポイントを独り占めするかのような景色
楓雅に宿泊する楽しみとして欠かせないのはその景観。ほぼ全ての客室の正面に光り輝く中禅寺湖の湖面と、霊峰・男体山、遠くには白根山に連なる山々を見ることができます。その荘厳な美しさは春夏秋冬いつ来ても、まさに絶景。目に心に日本の四季の美しさを優しく伝えます。「紅葉の季節も新緑の季節も、夏の盛りの緑の季節も、どの季節に来ていただいても楽しめるのが楓雅。季節を変えて何度でも、とおすすめしています。圧巻は冬。真っ白に化粧した山々と中禅寺湖のコントラストは言葉を失うぐらいです。私自身もお気に入り」とはマネジャーの小泉さん。画像を・・・とお願いすると「それはお越しのお楽しみに」。冬の季節に訪れてこそ楓雅の醍醐味が味わえるのかもしれません。
時には中禅寺湖産のヒメマスも。本格的な懐石料理に舌鼓
堪能すべきは景色だけではありません。日光ならではの特産品はもちろん、その時々の季節に合わせて日本各地から集められた一級の素材を使った食事も、楓雅に宿泊する理由。地元特産の栃木牛は箸で切れるほどの柔らかさで、舌の上で脂がさっと溶ける極上の一品。楓雅ではどの食事コースにも供される定番です。さらにいい伊勢海老が揚がれば、わざわざ長崎から仕入れるなど、そのこだわりは半端ではありません。近年、水揚げが減少している中禅寺湖の絶品ヒメマスも、楓雅では時々お膳に上ります。入手できるかどうかはゲストの運任せ。ぜひ堪能したいものです。素材は一級品のみ。出来合いのものは一切使わず、手作りにこだわり、手間ひまをかけているのですから、おいしくて当然。この料理を目当てにリピートするゲストも少なくありません。
到着後にはお抹茶を一服
次の間は一部屋一部屋違う仕様
ダイナミックな空間美をどうぞ
純和室であることに強いこだわりが
絶景と共に、抹茶を一服
漆塗りのエレベータの扉から左手側に進むと、靴を脱いで上がる畳敷きの廊下に面する楓雅。「外国からのゲストはこれだけでも大騒ぎ」。日本ならではの靴を脱ぐ文化と畳の感触を楽しんで、という趣向です。案内された部屋に入ると、まず仲居さんが点てた抹茶で一服。「外国の方にこれが本当の日本のお茶(green tea)ですと伝えると、目にする機会がないのか興味津々」。この抹茶、ゲストが景色に釘付けになっているときは再度点て直すそうです。窓の外の中禅寺湖を眺めながらの一服は、究極の贅沢品かもしれません。
「次の間」がある贅沢
デラックスルームにあたる「花の宮」には、贅沢な造りの象徴ともいえる次の間があるのが特徴。年配の方にとっては懐かしい空間かもしれません。広い客室の角に設けられたこの場所は、着替えをしたりお化粧をしたりする、いわゆる準備のための部屋。そのうちの2部屋には炉が切ってありますから、茶室として使うことも可能です。「同じ造りの客室は楓雅にはありません。景色の見え方も少しずつ違う。ですからよくご宿泊いただくゲストからは、この間と同じお部屋でとオーダーをいただくこともあります。予約の際にはぜひご相談くださいね」。
ダイナミックな空間使いで、ゲストの心を癒す
楓雅の空間の使い方は古の日本を思わせるダイナミックさが特徴。静寂の中でお湯を堪能できるように設けられた露天風呂は、贅沢な中にもほっと心を和むような空間。能舞台の間や個室料亭の間に行くための回廊はまるで平安時代の渡り廊下のよう。旅館の中に能舞台!? はい、あるんです。実際の能の会場としても使用できる立派な舞台が。「お琴や日舞の発表会など各種に使えますから、ご利用ください」とのこと。ちなみに貸切露天風呂「白糸」は数年前、テレビドラマの印象的なシーンに使われたとか……。主人公になりきってお湯につかるのも楽しみのひとつに加えておきましょう。和洋室の客室がもてはやされる中、純和室であることにこだわりつづけている楓雅。外国からのゲストだけでなく、日本人であっても洋室での生活が普通になっている今日だからこそ「畳が恋しい」こともあるはず。実際にゲストからそういう話を聞いた際、小泉さんは「そんな時にはぜひ楓雅にお越しくださいと言える旅館であること。そこに揺るぎない価値がある」と実感したそうです。日本ならではの美しいたたずまいやしつらえ、おもてなしを直球で伝えられる宿として、これからもそのこだわりはつづいていくのでしょう。