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私が見たアメリカのホテル
アメリカの一流ホテルで日本人マネージャーとして10年間勤務した著者が、日々の仕事の中でふと目にしたシーンから、日米の文化的な違い、考え方の背景にあるものなどをつづります。  著者紹介はこちら>>
第12回
レベニューマネージャーの力

アメリカのホテルで誰が一番力を持っているか?それは総支配人に決まっている。だが、ときには、総支配人でも頭が上がらないマネージャーがいる。それがレベニューマネージャー。レベニューマネージャーの仕事は、朝から晩まで数字を睨みながら、今、いくらにしたら一番高い利益を得られるかという計算すること。
彼の計算や読みが間違えば利益は損なわれる。だから、この強いアメリカ資本主義の世界において、彼の役割はとても重大だ。組織図では、他の全てのダイレクター達は副総支配人にレポートをあげ、副総支配人が総支配人にレポートをあげるようになっているが、このレベニューマネージャーだけは総支配人に直接レポートをあげるようになっているところが多い。

彼は、ホテルが混むとなれば、足元を見るように料金を上げる。空くとなれば、料金を下げる。また、3泊ならば1泊300ドルだけど、4泊ならば1泊400ドルになるなどということも言ってくる。さらに、団体ともなれば、3泊ならとれないけど、4泊なら取れるなどという条件がでてきて、3泊しか泊まらない団体には、「最後の日は捨て部屋にしてもらえば。」などということまで平気な顔で言ってくる。とても営業マン泣かせのマネージャーだ。
総支配人の大切なゲストが来るときも、必ずレベニューマネージャーから料金をとらなくてはならない。総支配人とて、自分の権限で安い料金を出すことはできない。そして、レベニューマネージャーも気分で料金を出すことはできないから、彼が前もって用意した料金に従うしかない。彼が特別料金を出していなければ、総支配人も顔を潰すことになるかもしれないのだ。

以前、ワシントンDCにあった日系ホテルの営業マンが嘆いていたことがある。オーナーがらみのゲストが来るとなれば、有無を言わさずにフリー(無料)やデイスカウント料金を出すことを強要するという。しがらみを大切にする典型的な日本のビジネススタイルと言えるだろう。だが、アメリカ進出を果たした日系のホテルがことごとくアメリカから消えて行った大きな理由の一つはこうした甘い体制にあったと言えるのではないか。 アメリカの徹底した利益追求主義を日本も見習うべきだろう。さもなくば、彼らと勝負することは難しい。

バックナンバー
第1回 アメリカの一流ホテルのホスピタリティー
第2回 チップの誤った常識
第3回 ホテルの選び方
第4回 アメリカのホテルのセキュリテイー設備
第5回 アメリカのホテルの環境保護対策
第6回 歴史に根をもつ日米のサービス形態の違い
第7回 オーバーブックへの理解
第8回 ホテルはコーポレート・イメージの象徴
第9回 大雑把なアメリカのホテル運営
第10回 素晴らしきアメリカのホテルのノウハウ
第11回 セクハラ意識の薄い日本のホテル
第12回 レベニューマネージャーの力
著者:奥谷 啓介
1960年東京都生まれ。ウエステインスタンフォード&プラザシンガポール、ハイアットリージェンシーサイパン等勤務の後、1994年よりニューヨークのプラザホテルに就職。2005年プラザホテルの閉館に伴い退職。現在はニューヨークにてホテルコンサルタントとして活躍中。

【HP】奥谷 啓介オフィシャルサイトはこちら http://www.okutanikeisuke.com/
「世界最高のホテル プラザでの10年間」
ニューヨークの最高級ホテル「ザ・プラザ」に10年間勤務した日本人マネージャーが書いた、「フロントデスクの内側から見た日米比較文化論」。日米文化の差により生じる、日本人がアメリカで陥りやすいトラブル、恥ずかしい行いなどの例を挙げ、「なぜそれが起きるのか」「防ぐにはどうしたらよいか」をプロの立場から辛口のアドバイス。快適な海外旅行を楽しむための必読本です。
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